女
「…………うっ」
どうやら、女が目を覚ましたようだ。
これなら会話が出来るだろう。
「こんにちは」
女はこちらを睨み付けるように見てくる。
「……………こんにちは。あなたが私の今日の相手かしら?」
声の調子は強く高圧的であった。
まあ、そんなことより言葉伝わるようだ。
「相手?」
「そうよ。また、私のご主人様相手をしろとでもいったのでしょう?」
「ご主人様って何だ?」
「ご主人様はご主人様でしょ。ま、そんなことはいいわ。さあ、始めましょう。場所はここでいいのかしら?野外っていうのは………………い、いえ何でもないわ。あなたは服を脱いでるようだし、準備できてる感じよね。ま、私は拘束されているんだけど……こういうのがお好みなのかしら?」
「まてまて、何を始めるんだ?」
「何って、ナニじゃないのかしら?言わせたいの?」
「ん?分からない。それとお前の言うご主人様っていうのはコイツのことか?」
さっき切り下ろした頭を持ち上げ、見せた。
「え?」
女言葉を失い。唖然としている。胃がねじれるように痛み、強烈な吐き気により胃の中身をぶちまける。
「どうした?違ったか?」
少年は女に向かって尋ねた。
女の吐しゃ物などは気にせずに。
「あ、合っているわよ。その憎い顔忘れるはずがないわ。聞くまでもないと思うけれど、それはあなたが殺ったの?」
女は少し怯えながら尋ねる。
「そうだ」
即答される。
「あなたは盗賊?私も殺すのかしら?」
女にとっては命に関わる重要なことであった。
どうしても聞いておかなければならない。
「盗賊?違うんじゃないか?それとお前はお前が俺に敵意を向けない限り殺さない」
「……そう」
女はふぅと胸を撫で下ろす。
「えっと聞いても良いかしら?」
女には知りたいことがあった。
「この黒髪で全裸の少年が何者なのか」だ。
少なくともこの少年のことを信じるのであれば、私は襲われはされないらしい。
「何だ?」
「貴方は何者かしら?」
「俺のことか?………………分からない。というより、俺はお前に俺のことを質問するつもりでいたからな」
「は、はぁ」
え?え!?な、何を言ってるのかしら?
自分のことが分からない。それを私に質問する?
はぁ!?知ってるわけないじゃない!
「で、お前は俺のこと知っているか?」
「え、本当に聞くの?もちろん知らないけれど…………」
「そうか。それでは去らばだ」
「え!?ちょ、ちょっと待って!」
「何だ?俺の知りたい情報は得られなかったから移動しようと思うのだが?」
「え!?私をこの拘束されたままで、残す気!?」
「ああ、そうだが。そのくらい自分でとけるだろう?」
「は、はぁ!?そんなにできるわけないじゃない!出来るならとっくのとうにやっているわよ!それができないから頼んでいるんじゃない!」
ちょ、ちょっと待ちなさいよ!出来るわけないじゃない!
女は内心で三度目の絶叫を上げる。
「そうなのか?まあ、でも俺が助ける利点は無いよな」
「………何が望みかしら?」
この少年にメリットを上げなくてはならないようね。
まあ、男なんだし体をあげれば済む話でしょうね。
「望み?それは俺のことを知っているかどうかだけど……知らないんだろ?」
「え!?それ以外にはないのかしら?ほ、ほら私の体とか」
「ん?何でお前の体を望むんだ?だから、俺の望みは俺のことを知っているかどうかだけだが」
「ほ、本当にそれだけかしら?」
「くどいな。それだけだ」
「え、ええ。なら私もあなたに協力するから助けてくれないかしら?」
「協力?助ける?どうやって?」
「どうやって?」なんて聞かれるとは思わなかったわよ!
か、考えるのよ!答えられなきゃ私はきっとここに本当に放置されるわ。
えっと、この少年の身なりから考えましょう。
身なりは…………裸ね。
何で裸なのよ!常識ないんじゃない!
ん?常識?本当に常識ないのでは?
も、もしそれなら!
「あなた、ひょっとして常識を知らないんじゃないかしら?」
「常識?確かに知らないな。それは何か問題になるのか?」
ビンゴ!それなら……
「なるわ。少なくとも私以外にあなたがそのままで話をしたら逃げられるか、自警団に連れて行かれるかのどちらかよ」
ま、裸で話しかけられたらそうなるわよね。
って言うか、そもそも一人一人に自分のこと知っているのか聞くのかしら?
いや、多分聞くわね。本当に常識なさそうだし。
「ん?逃げたら捕まえればいいし、自警団とやらも倒してしまえばいいんじゃないか?」
「た、確かにそうだけれど………でも、私を連れていけば倒すこともしなくて済むわよ」
倒すの!?
「…………そうか」
少年は手刀を振るう。
女は少し身構えたが、その手刀は女に当たらずその拘束具にあたる。
不思議なことに鉄製である拘束具は、綺麗にすっぱりと割れ壊れた。
女の顔は驚愕に染まる。
「あ、あなた本当に何者よ」
小さな声で女は呟く。




