交互社交数
「久しぶり……だな。」
海斗は静かに夜空を見上げた。
あの夢を見なくなってから、もう十二年が経っていた。
玲との出会い。
共に数式を考えた日々。
そして、最後に交わした約束。
そのすべてが、今でも海斗の心の中で生き続けている。
大学では若くして准教授となり、整数論の研究者として忙しい毎日を送っていた。
それでも、ときどき思う。
「玲なら、なんて言うだろう。」
机の上には、新しい計算結果が表示されている。
海斗は画面を見つめ、小さく呟いた。
「そうだ……。」
「交互社交数って、あるのかな。」
交互完全数。
結婚数。
そこまで見つかったなら、その先もあるはずだ。
海斗は新しいプログラムを書き始める。
画面に数字が次々と流れていく。
数分後。
一つの結果が表示された。
1862172
↓
1937988
↓
1960452
↓
1970748
↓
1862172
海斗は息をのんだ。
「……あった。」
四つの数が、お互いを巡り続けている。
二人ではない。
四人で、一つの輪を作っている。
海斗は静かに笑った。
「玲。」
「また一つ、新しい世界が見つかったよ。」
そのとき、ふと視線の先にある遺影が目に入った。
いつもと変わらないはずの彼女の遺影が、今日はいつもと違って、少し微笑みを浮かべていたような気がする。
まるで、今の言葉を聞いていたみたいに。
「すごいよ、まだ私との約束も数も続けてくれてるんだ!」
「海斗君、大好き!」
玲の声が、胸の奥で確かに響いた。
「あぁ、俺も愛しているよ」
窓から差し込む夕日が研究室を赤く染める。
机の隅には、今も大切に飾られた一輪のタモトユリ。
海斗はノートを開き、そのページの一番上に、新しい名前を書いた。
交互社交数。
その文字の横には、小さく一言だけ添えられていた。
──君と見つけた数学の、その続きを。




