表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と契りて 言はで思ふ心の理  作者: はまちゃん
おまけ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/42

数の女神様(終)

その眼差しには、何一つ後悔はなかった。


神殿は静まり返る。


長い沈黙のあと、ピタゴラスはゆっくりと玉座から立ち上がった。


「……セオドロス。」


「お前は変わったな。」


海斗は黙ってその言葉を受け止める。


「かつてのお前なら。」


「迷うことなく数学を選んでいただろう。」


「だが今は違う。」


「お前は真理より、一人の人間を選んだ。」


神殿中の視線が集まる。


ピタゴラスは静かに目を閉じた。


「それもまた、一つの真理か。」


教団の者たちがどよめく。


「教祖様!」


「なりません!」


しかし、ピタゴラスは手を上げるだけで、その声を制した。


「友愛数は、確かに美しい。」


「だが。」


「人の心を動かす美しさには敵わぬ。」


ゆっくりと二人を縛る縄がほどけていく。


アリスモスは信じられないように自分の手を見つめた。


「……え。」


「行くがよい。」


ピタゴラスは静かに告げる。


「もう二度と、この神殿へ戻るな。」


海斗は深く頭を下げた。


「ありがとうございます。」


アリスモスも涙を流しながら頭を下げる。


二人は手を取り合い、神殿をあとにした。


外へ出ると、そこには眩しい朝日が広がっていた。


アリスモスが小さく笑う。


「これから、どこへ行こうか。」


海斗も笑う。


「どこでもいい。」


「君と一緒なら。」


二人は丘の上へ歩いていく。


風に揺れる草原。


青い空。


その景色の中で、アリスモスは海斗の肩にもたれた。


「セオドロス。」


「うん?」


「今度こそ、一緒に生きよう。」


海斗は優しく頷く。


「ああ。」


「今度は、最後まで。」


その瞬間――


世界は白い光に包まれた。


……


海斗はゆっくりと目を覚ます。


病室の窓から、冬の朝日が差し込んでいる。


隣では玲が静かに眠っていた。


海斗はそっと玲の手を握る。


夢の中で救えた二人。


今度は現実で、この手を離さない。


そう心に誓いながら、海斗は穏やかに微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ