新しい定理
夕方。
研究室には海斗一人だけが残っていた。
机の上には何枚もの計算用紙が広がっている。
「……そういうことか。」
海斗はペンを置いた。
交互友愛数。
その条件を何度も書き直し、式を並べ替える。
すると、一つの式が浮かび上がった。
「これは……。」
海斗は勢いよく新しい紙を取り出す。
「交互約数和を A(n)、真の交互約数和を T(n) とすると……。」
式を書き進める。
偶数では
A(n)=T(n)+n
あとは友愛数の条件を代入するだけだった。
T(a)=b,T(b)=a
なら
A(a)=a+b,A(b)=a+b.
逆も同じように成り立つ。
海斗は最後の一行を書き終える。
「証明できた……。」
それは複雑な証明ではなかった。
だが、交互友愛数を特徴づける、美しい同値定理だった。
海斗は思わず笑みを浮かべる。
「玲ちゃんに見せたら、きっと喜ぶな。」
翌日。
昼休み。
いつものように玲が図書館へやって来る。
「海斗君!」
「玲ちゃん、ちょうどよかった。」
海斗はノートを開いた。
「昨日、新しい定理が証明できた。」
「また!?」
玲は目を丸くする。
「交互友愛数にはね。」
海斗は紙に二つの式を書く。
T(a)=b,T(b)=a
そして、その下にもう一つ。
A(a)=A(b)=a+b
玲は首をかしげた。
「つまり?」
海斗は笑う。
「交互友愛数なら、交互約数和は二つとも同じ値になる。」
「しかも、その値は二つの数を足したものなんだ。」
玲はしばらく考え込み、やがて「あっ!」と声を上げた。
「つまり、お互いに支え合うだけじゃなくて、二人で一つの答えになるってこと?」
海斗は一瞬驚き、それから優しく笑った。
「数学的には少し違うけど……。」
「その考え方、嫌いじゃない。」
玲は嬉しそうに笑った。
「やっぱり数学って、きれいだね。」
海斗は静かにうなずく。
「……ああ。」
その何気ない昼休みが、また一つ新しい定理を生み出した。




