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10. ランチカフェ「サロン・シュリー」






 本格的な昼の営業を開始するにあたり、名称を決定した。


 ランチカフェ「サロン・シュリー/ラサール商会居住区西店」。


 それにともない、「アザミ亭」と呼ばれていた朝は、正式名称をモーニングカフェ「アザミ亭」とすることになった。


 店名にシュリーの名前を入れるのは抵抗されたが、最初に私の店をアザミ亭と呼びはじめたのは彼女である。しっかりとその責任を負って欲しい。

 昼間にやりたいと言ったシュリーも店長だ。クルミパン付きでくれてやった。


 クルミパンやラスクなどの販売は、完全に昼に移行。

 そのかわり、これまで飲み物の提供は氷水だけだったが、昼と一緒のドリンクメニューの提供をはじめた。


 モーニングセットの、トースト、ゆで卵、カップスープは変わらず。

 そこにドリンク類を追加注文するかは、客次第となった。

 営業時間もかわらず、朝4時〜朝8時まで。



 ランチカフェ「サロン・シュリー」は、バゲットサンド、サラダ、飲み物のセットメニューで固定した。

 営業は朝9時30分〜昼14時まで。

 ラストオーダーは13時20分。




  ─ランチメニュー──────────


  ○ランチセット○

   バゲットサンド、サラダ、飲み物


  〈バゲットサンド〉

   卵たっぷりサンド

   3種ハムサンド

   期間限定フルーツサンド

   数量限定ツナサンド


  〈飲み物〉

   紅茶、アイスティー

   季節のジュース、牛乳



  〈テイクアウト〉テラス

   クルミパン、フルーツアイスティー


  〈販売品〉サロンの一角

   紅茶の茶葉、オレンジピール

   ラスク、ナッツ類

   マイボトル

   マイバッグ

   ランチボックス


  ─────────────────




 テイクアウト品として、クルミパンは屋根のあるテラスで売るのに変更。コチラの販売は新たにバイトを雇った。バイト代とランチセットのまかない付き。

 営業は朝8時〜昼13時まで。


 ラサール商会の新人研修などに使われていて、その日配置される2名の人選はアチラに任せてある。


 クルミパンはテラス、庭園のベンチで食べても、持ち帰ってもいいスタイルにした。

 テイクアウト品に氷を使ったフルーツアイスティーがくわわったことで、販売品にマイボトルなどを追加。


 土産売り場の食品はサロン内で食べることは出来ないが、こちらも持ち帰りの他、テイクアウト品と扱いは同じだ。

 それと、ラサール商会系列に受注した、紅茶などのカフェ関係の商品を揃えた。

 場所はサロン会計の真横カウンター席。


 その時間だけ椅子を取り払って、既存のテーブルを使い、商品のやり取りをしやすくした。

 テーブル上にサンプル品を飾っておいて、在庫を手渡し、お金を受け取る。

 営業時間はサロンと変わらず。


 14時には屋敷の敷地内を閉める運びとなり、従業員達は手の空いた者から食事や、ミーティング。週に2回ほど勉強会をしているらしい。


 8時以降の9時までには屋敷へ出勤して、16時には終業。

 食事や試食をつまみながら私と情報交換などもするから、店長補佐のジャック曰く、「ゆるいなー」である。売り切れるのがはやいと、ミネルヴァ以外の新人従業員は早めに帰すこともザラだ。

 週に1度、店を閉めて休みがある。


 バゲットなどのパン作りは私が担当。

 具材、サラダの準備は私もするが、新人魔法使いミネルヴァと、念のため店長のシュリーと店長補佐のジャックにも一応教えた。


 ──とは言っても、卵サンド用の卵フィリングと、フルーツサンド用のクリームチーズくらいである。魔法を使えば楽だが、人力でも作れないこともない。

 あとは仕入れた具材を切るか千切るかだけだ。


 販売用の食品に関してはほぼ私が作っているが、段階的にミネルヴァの修行に合わせて教えている。


 昼に唯一火を使う紅茶のお湯は、彼女と従業員に任せた。厨房ならヤカンを使って沸かすことも出来る。

 氷は朝に私が生成するか、地下室に貯蔵してあるものを使っている。


 簡単な調理の補助は誰でも出来るように指導してある。


 長テーブルの横並び提供スタイルは健在で、マヨネーズ付きのサラダが盛られた皿に、客が選択したバゲットサンドを乗せ、横に移動してドリンクを注文。

 客が持つお盆の上にセット品が完成する頃には、ゴールの会計場所にたどり着く。


 選択メニュー式だが、価格は1000エィで固定。計算も大変じゃない。





「────どうやってそんなに売ったんだ?」


「私がミネルヴァさんにお願いしました」


「先輩が鉄板をわたくしに作らせましたでしょう。クルミパンなら、最初から作れなくても、温めるくらい出来るようになったんですの」



 新人魔法使いのミネルヴァは、結界魔法をのぞき、複数の魔法を同時に操るのは苦手。


 なので、私のように空中で材料を混ぜ、生地を浮かせてパンを焼くのは難しかった。


 複合魔法の修行から、単一魔法の制御中心の方向性に切り替えたところである。


 それでも課題はのこり、火魔法の適正があまりないため、燃やしたり、温度を上げられるだけ上げはしても、冷ますことを知らない。


 なので調理道具を使えと教えた。

 クルミパンを焦がさないよう、パン生地を鉄板の上に乗せて、オーブンに入れ、オーブン全体を温めろと。


 普通に手でクルミパンを作らせてから、料理の感覚を教えさせ、パンが焼ける原理を説明した。難しければ手動と道具を使わせる。

 魔法を使った方が美味しくはやいか、道具や手を用いた方がいいか。天秤にかけさせた。


 魔法使いとしては邪道だが、この店の料理人としてなら効率がいい。


 なんだったら、鍛冶屋に見学に行かせ、魔法で鉄板を作らせることからはじめさせた。

 なんせ、構造や特性を理解させるには、ミネルヴァに実際に造らせるのがはやい。

 自分の魔力で作ったものは、自分の魔力を通しやすく、扱いやすく、感覚が繋がり、愛用すれば魔法を使いやすくしてくれる。


 いちから順番に魔法でクルミパンを作れはしなくても、作り置きしていたクルミパンを焦がさず温められることは出来たと。


 一度上がった温度を下げられはしなくとも、上昇する温度を止めて維持出来るようになったのか。


 それくらいなら人力でも出来はするけれど、魔法を使うことに意味がある。できることを増やしていけば、次の何かに繋がるからだ。



「わたくしが『温かいクルミパン並べますわよー!』って、ベルを鳴らして叫びますと、面白いくらい皆様席を立ちますのよ」


「今だけ温かいクルミパンがあるって知ったサロンのお客様が、それで外に出ます。10時、11時、12時、12時半。大体その時間に」


 昼は朝に比べて客が多い。

 次の客のために席を開けて欲しいと直接言うより、角もたたない。



 回転率が上がれば、待つ客も少なくなり、それだけバゲットサンドが売れる。



「考えたな」


「ミネルヴァさんは人気者ですから」


「まぁ、シュリー店長ほどじゃありませんわよ。試供品の小さなグラスをお外に持って出ますと、流行りに敏感な方々は我先にと出ますわ。アレはいいものですわねー」


「試供品?」


「次のシーズンのアイスティーのブレンドです」



 店で出す紅茶は、シュリーに任せている。

 ラサール商会から仕入れ、試作品を作って客にどうか意見を求めているらしい。


 ジャックもよく紅茶を飲んでいるが、あれもシュリーがブレンドしている茶葉をチェックして学んでいると聞いたことがある。


 飲み物を増やしたいと提案された時は手間が増えると思っていた。

 けれど、売り上げという数字の上で、確かな結果を残していた。



 私と違いシュリーは根っからの商人。

 物の価値を、売り方を、よく知っていた。


 




-おまけ小話-


〈少し前〉

ジャック「これが学園で使われている教材です」

アザミ「うむ。……なるほど」


ジャック「まさか全部読むんですか?」

アザミ「ああ、そのつもりだが。この著者の参考文献を先に読みたいが。──なんだ、用意がいいな」


ジャック「他に必要なら言ってくださ───」

アザミ「ではミネルヴァが他に読んだ本があれば、可能な限りそろえて欲しい」


ジャンル「わかりました。手配しておきます」

(魔法使いに魔法使いが教えるって、こんなに大変なんだなー)



〈現在〉

アザミ「まずは手で作るところからだ。もう一度パンをコネながら小麦の性質について教える」

ミネルヴァ「わかりましたわ」


アザミ「手で作るか魔法を使うのがいいかは、自分で決めなさい。明日は鍛冶屋に見学に行くから、そのつもりで」

ミネルヴァ「はい。先輩」



ジャック「……………………」

(本棚5個分埋めて、結局はこれか。本当オォォニ大変ダナ)


 

※7月3日の更新は4時00分予定です。


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