第3章 第12話 交渉 4
斬華がいつから嫌われていたかというと、初めからである。
ヤンキークラスに委員長タイプが馴染めるわけもない。もちろんZ組にも龍華や奈々といった真面目タイプはいるが、その龍華が問題。グループに入るのことは叶わなかった。
もちろん俺とは普通に話してたけど、それで誰かに好かれるわけじゃない。根本的に、斬華とZ組は相性が悪いのだ。
それに加え、斬華の多額の借金。事実だけを述べれば、4月度イベンドでは斬華の借金8000万のせいで、俺と龍華が稼いだポイントが帳消しになってしまった。
もちろん斬華だけが悪いわけじゃない。他にもたくさん借金を抱えていた奴らはいたが、そこが問題じゃない。
仲間か、仲間じゃないか。Z組にとっては、それが全てだ。
「みんな話を聞いてっ!」
再び斬華が叫ぶが、効果はない。みんなわざとらしく友だちと談笑している。俺と龍華しか友だちがいない奈々と、V組から落ちてきた渡牙さんは静かだが、かといって斬華の味方というわけではない。ただ元が静かなだけだ。
「ごめん、話聞いてくれ!」
このままでは話が進まないので、斬華の横に立って俺が声を出す。全力の斬華のものより大きな俺の声はいともたやすくみんなに届く。
「蓮司! さっさとこっち来いよっ! 今日歓迎会だろっ?」
「それより先にだ。斬華、後頼む」
「ありが……」
「おい蓮司」
美季たちの方に戻ろうとすると、Z組の中でも一番ヤンキーらしいヤンキー。金本康太が立ち上がった。
「お前の話なら聞いてやる。だがそいつは駄目だ。俺らを馬鹿にしてる、翠川はな」
「俺に真面目な話なんてできるわけないだろ」
「じゃあ奈々にでも話して代わりに説明してもらえ」
「どうして私? 私はあくまで体育祭の話を聞きに来ただけよ。そこまでする義理はないわ」
「お前とは性格が合わねぇが、それでもクラスの仲間だ。だが翠川は違う。俺らを下に見てやがる」
「私も同じよ。あなたたちのことは馬鹿だと思っているし、正直見下しているわ」
「そうじゃなくてさ……あんだろ。ほら、今までの積み重ねとかさ」
「貢献度……ポイントの話を除けば、私より斬華さんの方が上よ」
「だからそうじゃないんだって! わかんだろっ!?」
「言いたいことはわかるわ。私は良くも悪くもあなたたちに干渉していない。話す時もあるけれど、しっかりとした距離感を持って接しているわ。でも斬華さんは違う。真面目に授業を受けろ、ちゃんと勉強しろ。色々命令してくる。単純にあなたは命令されるのが嫌なだけでしょう? 結果を出していない人に」
「……たぶんだけど、そういうことだ」
「言いたいことはわかるし、気持ちもわかる。私も斬華さんには迷惑を被っているから。正直能力不足だと思っているしね。でも多数に説明する力は私より斬華さんの方が上よ。今もほら、たくさんの目に見つめられて足が震えているわ」
長々と話してたけど、つまり奈々が説明するのは嫌だってことだよな……。かと言って俺に説明ができるわけがない。まぁでも多少ならいけるか……?
「えーと、A組が協力してくれるって話なんだけど……」
「A組!? 他のクラスのことが信用できんのか!? 敵なんだろっ!?」
「まぁそうなんだけど美季は大丈夫っていうか、信用できる。俺らを騙したりは……するな。うん、美季はそういうこと平然とやるよ」
「丸め込まれてどうすんの? てかこのままじゃ埒が明かないし、あたしから話してもいいけど」
「敵の言うことなんて聞くわけねぇだろっ!」
「……はいはい。そうですか」
Z組の反発を一身に浴び、美季が両腕を上げて降参する。こうなったら交渉もクソもないからな……。
「ごめん美季、この話なかったことに……」
「順序が間違っていたわ」
俺が顔を後ろに向けた時、隣の斬華の身体が、沈んだ。
「今までごめんなさい。私が悪かったです。だから私を仲間に入れてください」
斬華はZ組に対し、汚い地面に額をつけ、土下座していた。




