第3章 第5話 桂来学園のルール
桂来ツインタワーからZ組までの距離は、電動自転車で約30分。俺なら15分前後といったところだが、どうしてだろう。帰る気が起きない。
霊御にやられて身体が痛いから……違うな。そんなものよりも、遥かに。胸が痛い。
龍華に拒絶された。それはまぁ、いい。どれだけ仲がいい友だちでも疎遠になる時期はあるだろう。ましてや俺と龍華は出会ってまだ2ヶ月。親友の定義はわからないが、さすがにそこまでは行ってないと思う。知らないけどさ。
でもZ組に帰っても龍華がいなくて。これからしばらく龍華と会えないと思うと。それなりに辛い。
どうせ俺のことだ。しばらくしたら普通に帰ることになるだろうが、今は少し、休憩したい。
黄昏る、って言うんだったか。本当に珍しくそんな気分に陥っていると、後ろですごい勢いの車が急ブレーキをかける音がした。
当然だが高校である桂来学園内にはほとんど車は走っていない。一応ちゃんとした車道はあるが、使うのはバスやトラック。先生の車程度。こんな急ブレーキをかける人などいない。何か問題が起こったのかと後ろを見てみると、
「すっご……」
思わず声に出してしまうほどにかっこいい車が俺のちょうど真後ろに止まっていた。
なんかすごい鮮やかな赤の、オープンカー。俺に車の価値なんかわからないが、たぶんめちゃくちゃ高いのだろう。しかも左ハンドルだ。外車がそうなんだよな……? 全然知らないけど。一体誰が……。
「蓮司く~ん、送っちゃうぜ~?」
「永夢さんっ!?」
運転席には真っ黒のサングラスをかけた永夢さんが、それでもわかるドヤ顔で座っていた。
「え、なんで車……高校生いいんでしたっけ!?」
「知ってた~? 永夢たち高校生とは言ってるけど年齢は言ってないんだよ~。だからもう成年してるかも~」
「たしかに! 高校生って未成年だけじゃないですもんね!」
「それに私有地だから法律には引っかからないんだよね~」
「へー……。いや、でも……」
「ちなみに他の車の出入りがあるような道路だと普通にアウト~」
「じゃあ駄目じゃんっ! 俺でもわかりますよっ!?」
「それが桂来学園ではオッケーなんだな~。オッケーっていうか怒られないだけなんだけど~ほんとに頭が全てなんだよ~。それ以外はなにしてもよし~。いい学校だよね~」
「いやどうなんだろう……」
「馬鹿のくせにそういうのは気にするんだね~」
そう言いながら永夢さんは右手に持った煙が出る白い棒を吸って……。
「いやそれは完全にアウトだろっ!」
「だからいいんだって~。それにギャンブラーには欠かせないでしょ~こういうの。や~自分で言うのもなんだけどかっくい~」
「永夢さん童顔だから似合ってないっすよ」
「そんなこと言う悪い子は送ってあげないぞ~?」
って言われてもな……。
「俺自転車なんで……」
「気にしちゃだめだよ~そんなこと。ほら~永夢、蓮司くんが生徒会選挙に落ちたせいでZ組行きになっちゃったからさ~。帰り道くらい付き合ってもバチ当たらないと思うよ~?」
「そう言われると弱い!」
「ふふ~。じゃ~助手席おいでよ~」
「なら……遠慮なく……」
車道に回り、助手席のドアを開いて今さらながら気づいた。
「よぉ、外村」
「すんませんしたっ!」
つい最近ひどいことを言ってしまった大賀さんが助手席に座っていることに。




