第3章 第2話 二人三脚 ルール
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「蓮司、静かに」
思わず声を上げてしまうと、霊御から注意されてしまった。でもこれはしょうがない。否が応でもテンションが上がる!
「体育祭っ! スポーツっ! 俺の一人勝ちだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ルールさえ。ルールさえ複雑じゃなければ、俺は確実に勝てる。
どうやら生徒会役員でもポイントに介入はできないらしく、俺は生徒会選挙での落選から1000万の借金を負ってしまった。上手くいけば完済! どころか斬華の1億の借金もどうにかできるかもしれない。
「体育祭って言っても桂来学園だよ~? 頭が全てなのは変わらない。桂来学園にいる限り全てが蓮司くんの苦手分野だってことは忘れないでね~?」
永夢さんから厳しい言葉が飛んでくるが、それこそ頭が全てって言っても体育祭だろう。運動が絡む限り俺の不利にはなりようがない。
「それで!? ルールはっ!?」
「落ち着け。今説明する。狼煙」
「はっ!」
十文字さんが狼煙さんに命令し、6月度イベント、体育祭の説明が始まる。
「まず体育祭は10日間の開催となります。3日ずつ各学年が競技に望み、最終日にクラス対抗リレー、そして結果発表となります」
「ながっ!」
10日間って……。文化祭でもそんな長くないぞ。実際には3日、4日だとしても、長すぎる。
「種目は学年ごとに1つ。つまり1つの競技で3日間、クラス単位での戦いとなります。霊御さん、上級生の種目は既に決まっているので1年生分を決めてください」
「わかりました」
狼煙さんが差し出したくじ引きを霊御さんが引き、
「二人三脚、ですね」
1年生が行う種目が決まった。
「無堂、1年生は二人三脚。2年生は綱引き。3年生は玉入れだ。学校側への連絡を」
「ラジャー!」
無堂さんがスマホをいじり、学校へと連絡をする。綱引きの方がよかったな……。二人三脚……申し訳ないが、誰と組んでもハンデを抱えることになる。逆に言えば誰かを生かすこともできるが、単純にあんまり好きじゃない。あれ難しいんだよな……。
「3日間二人三脚ですか。大変そうですね。A組は3人なので1人余ってしまいますし」
「二人三脚と言っても2人チームか3人チームを選ぶことができます。そして1年A組は人が少なすぎるため、特例として生徒会役員の5人で戦ってもらいます」
「桜花様っ! やったぁっ!」
「よかったですね、翠川」
……龍華が本当に幸せそうに、霊御に抱きつく。これで……龍華は。完全な敵。
「二人三脚の説明を続けます。と言っても基本的にはシンプル。二人三脚形式での騎馬戦だと思ってください」
「二人三脚で騎馬戦?」
「2人を繋ぐ紐を取り合うということです。ちょうど現物があるのでこれを見てください」
狼煙さんがホワイトボードの裏にある様々な物品が入った段ボールの中に手を入れ、下の方から紐……というか、ベルトを取り出した。だが気になるのは、中央に取り付けられた何かの液晶。機械なのか……?
「紐としてこれを使用します。2人チームには1つ。3人チームには2つ配られます。そしてこれを競技が行われる3日の間、ずっと装着していただきます」
「ずっと!?」
「長さは調整できますし、緩くすればあまり負担にはならないでしょう。ですが外してしまうと失格になるので注意してください」
いや負担だろ……。俺は気にしないけど、女子とか大変なんじゃないか……?
「夜間は危険なため、競技時間は朝8時から夜8時まで。そしてこの液晶部分にスマートフォンを近づけると、触れられたベルトが自然と外れます。これで脱落。3日間を生き抜いた者が勝者になります」
えーとつまり……。ベルトを外されないよう気をつけながら相手のベルトを外すということか……? よくわからないな……。
「そしてここからが最も大事なポイント。そう、ポイントです。自身のベルトに自由にポイントを賭けていただきます。相手のベルトを外すと、そのポイントが移譲されます。このクラス総合ポイントの数でクラス順位が決まります」
「クラス順位さえ気にしなければポイントは低い方が有利ってことね」
よくわからないが、美季が言うのならそうなのだろう。だが狼煙さんは、フルフルと首を横に振っていた。
「いいえ。これだけのルールならみんな賭けるポイントが少なくなってしまうでしょう。なので最終的に生き残ったチームは、自分が賭けたポイント数が2倍になって返ってきます」
「2倍っ!?」
全く話は理解できていないが、2倍はたぶんすごいはずだ。美季もニヤッとしたし、相当いい条件なのだろう。
「つまり1億賭けて1000万とったらポイントが2億1000万になる……。ガン逃げ有利じゃん。ずっと部屋閉じこもっとこ」
「それを防止するため、1日1度学内に秘密裏に設置された26のチェックポイントにスマートフォンをかざしていただきます」
「なるほどねー……きっつ」
条件が変わったようだ。美季の表情が曇る。
「以上が二人三脚のルールです。まとめると、
1.3日間、2人もしくは3人のチームを組み、ベルトで繋がる。
2.相手のベルトを外し、ポイントを手に入れることができる。
3.生き残れば自分が賭けたポイントが2倍になる。
4.一日一度、チェックポイントに行く必要がある。
5.過度な暴力行為は禁止。
となります。1年生のみなさん、理解できましたか?」
「蓮司理解できた?」
「なんで俺個人に訊くんだよ」
だが美季の考えは間違っていない。俺はほとんど二人三脚のルールを理解できていない。でもいつもと同じだ。
「大丈夫だよ。後で龍華に教えてもら……」
そう、だ。
龍華は、俺の敵。
「いや知らんわ。龍華、ルール教えてくれ。全然わからなかった」
会議終わり、俺は龍華に頼み込む。
「俺にできないことは龍華がやる。龍華にできないことは俺がやる。それが約束だったはずだよな、龍華」
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