第2章 第38話 俺の頭脳戦
「さぁさぁ悪の手先! 拳銃なんて卑怯だぞ! お仲間の命が惜しかったら銃を捨てるんだっ!」
人質となった渡牙さんの頭に銃を突きつけ、そう指示を出す仮面女子、無堂虚さん。俺でもわかるくらいに矛盾している。
「……その生徒は関係ないはずだ。解放してやれ」
「何を言っている! この女は生徒会選挙を途中で抜け出した極悪人! 悪人を庇うなんてやはりお前も悪人だなっ!」
……話が通じていない。こんな奴が生徒会なら俺も生徒会入っていいだろ。なんで身内にこれがいて俺に喧嘩売ってきたんだあの3年生徒会長は。
「……チッ」
選択を迫られた大賀さんは、銃を捨てて手を上にあげる。ということは、あの仮面が持っている銃も本物なのだろう。
「捨てたぞ。そいつを解放しろ」
「はっ! 誰が悪の手先の言うことなど聞くものかっ! 悪人は全員このえだっ!?」
喋っている最中、無堂さんの仮面が割れ、身体が地面に倒れた。
「ぁ……ぁ……ぁ……」
倒れた衝撃で仮面が外れ、無堂さんの顔が露出する。……意外とかわいい。声と合わせて萌えキャラって感じだ。まぁその顔も、白目を剥いて痙攣してたら意味はないが。
「なにが……起きた……!?」
「あー俺がやりました」
別の敵の登場かと身構える大賀さんに、右足を見せる。俺の右足にはさっきまで履いていた革靴がない。俺が靴を無堂さんの顔めがけて飛ばしたのだ。にしてもさすが革靴。仮面越しで気絶させるとかどんだけの硬さだ。
「お前……自分が何をしたかわかってるのか……!?」
「無堂さんを倒して渡牙さんを助けました。俺も女子を傷つけたくなかったんですけど、まぁ銃なんて持ってたらしょうがないなって」
「そうじゃねぇだろっ!?」
大賀さんが詰め寄ってきて胸ぐらを掴んでくる。なんでこんな怒ってんだろう。俺いいことしたはずなんだけどな。
「衝撃で引き金を引いちまったらどうするつもりだった!?」
「えっ!? 銃ってそんな簡単に撃てるんですかっ!? 渡牙さんごめん! 知らなかったっ!」
「気絶してなかったらどうするつもりだった!?」
「靴もう片方あるし……」
「外したらどうするつもりだった!?」
「だからもう片方……」
「もしあの子に当たってたら! どうするつもりだった!?」
「そん時はごめんでいいでしょっ!? わざとじゃないんだからっ!」
あーもう色々めんどくさくなってきた……! なんで俺が怒られなきゃいけないんだよこんなにがんばってるのに。
風花先生に、黒峰さんに、大賀さんに、赤道さん。みんなとんでもない自分勝手だ。
じゃあ俺ももう、知らねぇっ!
「あんたらの都合に俺を巻き込むなっ! 俺は龍華のところに行きたいんだよっ!」
大賀さんを引き剥がし、叫ぶ。よしよし黒峰さんもチョコ食べさせられて正気に戻ったな、ちょうどいい。
「自分たちだけで勝手に納得しやがって! 俺にわかんない話をするなっ! するならちゃんと説明しろっ! 知らないんだよ去年の出来事とかっ! 雰囲気でわかると思うなよ俺がっ! このクソ馬鹿野郎どもっ!」
俺は美季や霊御さんじゃない。話の触りを聞いただけで予想とかなんてできないんだ。それなのに、それなのに……!
「だいたいなんなんだよ! この学校を変えろとかって! 俺は今でだいたい満足してるんだよっ! 龍華とごはん食べて、斬華と話して、奈々のドジ見て笑って、美季と遊んで、沙耶とゲームして! 俺はこの高校生活が! 割と楽しいっ!」
なのになんだこいつらは……! 制度とか難しいとこまで頭回しやがって……! 俺を巻き込むな。
「金と暴力!? いいじゃねぇかそれで! それが気に食わないのはあんたの事情だろ!? 完全に勉強だけとかになったら俺が詰むんだよっ! あんたの目的なんか知ったことかっ! あんたらが自分の事情、常識に俺を巻き込むようなら! こっちだって考えがあるっ!」
そして俺はもう片方の靴も脱ぎ、赤道さんを指さす。
「あんたをぶっ飛ばすっ! それでこの問題は全部解決のはずだっ!」
「なんだよ外村、ようやくヤる気になったか!?」
「うっせぇばーかっ! 俺はあんたと違って喧嘩なんてしたくねぇんで! 一方的に終わらせるっ!」
暴力なんて頭脳戦じゃない? 知るかそんなの。それはそっちの常識だろ。
めちゃくちゃだなんて思われても関係ない。俺だってお前らの言ってることいつも全くわかんないんだから。
だから、たまにはお前らも付き合えよ。馬鹿の常識に。
「見せてやるよこの場にいる馬鹿どもにっ! これが俺の頭脳戦だぁっ!」




