第2章 第36話 混沌
「風花先生……!」
俺を呼んだのは、1年Z組の担任、南風花先生。女子中学生と言っても通用するその幼い身体に似合わないスーツ姿で、額に汗を滲ませながら現れた。
「なんか毎日会ってるのにめちゃくちゃひさしぶりって感じがする!」
「外村くん、少し静かにしてようか」
風花先生がすごい馬鹿にするような目で見てくる。そうだったなこんな人だった。Z組の担任でありながらZ組をすごい見下しているのが風花先生だ。
「それで。その先生が何の御用ですか?」
「受け持ちの子が危険な目に遭っていたら担任が助ける。当たり前のことだよね?」
「嘘つけぇっ!」
だから黒峰さんにそう返事した先生に、思わず大声で叫んでしまった。
「外村くん、静かに」
「いやいやでもあんたそんな人じゃないでしょっ!? 馬鹿をすごい馬鹿にしてるじゃないですかっ!」
「馬鹿は馬鹿だから馬鹿にしてるよ?」
「馬鹿馬鹿言うなぁっ!」
「ほんと、馬鹿は……。先生個人としては、Z組を見下している。全く勉強ができない上に、勉強をしようともしてないからね。それはそれとして、教師は生徒を守るものなの」
「……ん? つまり先生はいい人……?」
「外村くんが先生を悪人だと思ってたことはよくわかったよ」
風花先生は心底俺を見下した後、黒峰さんの方を見る。
「ということだから。外村くんは預かるね」
「南先生、でしたっけ。確か新任の方でしたね? 残念ながら桂来学園はあなたの立派な教師論が通じる学校ではない。一教師より、生徒会の方が立場は上になります」
「知ってるよ。桂来学園出身だからね」
「そうだったんですかっ!?」
「なら尚更知ってるはずです。生徒会の権力を」
「そうだね2年生徒会長。3年間生徒会長を務めてたから、あなたより知ってるよ」
「そうだったんですかぁっ!?」
「だからといって。現在では関係のない話です。外村くんはこちらに必要な人材。我々2年生徒会が預かります」
……なんか。話がよくわかんねぇな……。
「とりあえず俺行っていいすかっ!?」
「そうだね先生と一緒に行こう」
「だから行かせないと言っていますよね?」
「おい何話してんだ! 銃! 早く撃たねぇとっ!」
こっちで話すのに夢中になっていたせいで、赤道さんのことを忘れてた。殴り合いをしに行っていた連座さんが帰ってきている。そして、赤道さんも走ってきて……!
「あす……ククク。ぶぁーっはっはっはっ!」
えっ!? なんか突然黒峰さんが高笑いし始めたんだけどっ!? これあれだ! 発作ってやつだ! しゃっべていたせいでチョコを食べられなかったから糖分不足になったんだっ!
「こんな時にかよ……。おい幻! チョコ食えっ!」
「だまれぇぇぇぇっ! 私に命令するなぁぁぁぁっ!」
「あははははっ! 永夢この幻ちゃんツボなんだよねっ! あははははははははっ!」
連座さんが慌てふためき、黒峰さんが叫び、永夢さんが笑っている。そして残りの2人は。
「……明日那。あれ、出せ」
「……だめ。あれはもう、絶対に……!」
「お守りなんかじゃねぇんだ。使わねぇと意味ねぇだろ。責任は俺がとる。……今度は、外さない」
「……辞める時は、一緒だよ」
穂火さんが大賀さんに、漆黒の拳銃を渡していた。
2人の雰囲気だけでわかる。
あの拳銃は、本物だ。




