第2章 第35話 暴力
「おぉおぉ2年生徒会様全員お揃いで。リンチしなきゃならねぇほど俺が怖いか? なぁ?」
廊下に佇みながら、赤道さんが2年生徒会を煽ってくる。
「怖いんじゃない。全員。あなたに恨みがあるんですよ、赤道さん」
それに対し黒峰さんは、いたって冷静に言葉を返す。
「それに大事な後輩のピンチ。先輩が助けないわけにはいかないでしょう?」
「大事、ねぇ。利用しといて何言ってんだか。んなことより外村出せ。てめぇら雑魚なんざに興味はねぇ。これも一種のかわいがりってやつだよ」
「……明日那、超跳弾」
「了解」
穂火さんが鮮やかなピンク色の玩具のような二丁の拳銃に弾を込める。
「時間巡行」
次に銃を構え、両腕を大きく時計回りに回していく。
「銃撃」
そして黒峰さんの号令から一瞬のズレもなく、拳銃から二発の弾丸が発射される。いや……やはり普通の弾ではないようだ。廊下の壁にぶつかっては跳ね、ぶつかっては跳ねを繰り返している。本当にスーパーボールなんだ……。
でも速度は銃撃のそれと遜色ないと思う。当たればひとたまりもない。その銃撃を、穂火さんと黒峰さんは何度も繰り返す。
「針の筵」
結果赤道さんはスーパーボールの檻に閉じ込められ、身動きがとれなくなった。
「所詮ただの玩具だろっ!? 当たるってわかってりゃ我慢できねぇ痛みじゃねぇんだよっ!」
「永夢」
「はいは~い」
赤道さんが強引に突破してくる予兆を見せた瞬間黒峰さんは指示を出し、永夢さんはスマホを取り出した。
「1、4、5――」
黒峰さんが何語かわからない言葉をつぶやき、永夢さんがスマホを操作する。すると、
「――炸裂」
スーパーボールのいくつかが、破裂した。
「ちぃっ……がぁっ!?」
爆発自体はたいしたことはないが、無数に散らばる破片が赤道さんを襲う。それによりのけぞった身体に、スーパーボールの束が襲いかかる。
「連座」
「っしゃぁっ!」
赤道さんがうずくまったのを確認し、連座さんが駆けだしていく。手には何も持っていないが、靴は間違いなくスパイク。蹴られたら痛いじゃ……って速っ!? 俺ほどじゃないが、確実に赤道さんよりも上の走力だ。
「てか必殺技!? めちゃくちゃかっけぇっ! なんか世界観変わった!?」
「でしょ~? スーパーボールに少し火薬を仕込んでるんだよ~。で、永夢のスマホでバ~ン。技名言うとテンション上がるんだ~」
「おい気抜いてんじゃねぇ。連座が退いたら二陣行くぞ」
そう永夢さんを咎めた大賀さんは、黒峰さんの口にチョコを運んでいる。確か黒峰さん、頭良すぎるから糖分とってないと頭おかしくなるんだっけ。なんかこの人の役目だけは誰でもできそうだ。
「じゃあ俺必要なさそうなんで戻っていいすか? 龍華が心配だ」
「いや、もう少し残ってもらう。いざという時、君の運動能力が必要だ」
黒峰さんはそう言うけど……。
「それはあんたの都合だろ。あんたらとあいつの因縁なんざ知らないんだよ俺は。んなもんより俺は龍華の方が大事だ」
「だから話しておいた方がいいと言ったんだよ永夢」
黒峰さんがため息をつくが、この人が何を言おうと突っ走ればいいだけ。赤道さんの相手してるし俺に構ってる暇はないだろ。
「じゃ、そういうこ……」
「てめぇに選択肢はないんだよ」
足下で、スーパーボールが跳ねる。
「黙って明日那ちゃんの指示に従ってろタコスケ。ガキ一匹なんかよりこっちの方が大事に決まってんだろ」
穂火さんが、俺に銃口を向けている。
「だからさー……世界観変わりすぎなんだって」
頭が全てなんじゃなかったのかよ……。暴力アリならさぁ……。
「俺が無敵になっちまうだろうがぁっ!」
「外村くん、行くよ」
とりあえず怪我しない程度に穂火さんを殴ろうと思っていると。
誰かが俺に、声をかけた。




