第2章 第34話 別の戦い
〇蓮司
「永夢さんおっそい! もっと早く走って!」
「そう言われても~……。これでも全力全開だよ~……」
永夢さんの指示に従い、赤道さんから逃げる選択をした俺は、ただひたすらにホールの廊下を走っていた。
「待てやごらぁぁぁぁっ!」
後ろには赤道さんがまだ追ってきている。距離は充分あるが、隣を走る永夢さんがあまりにも遅すぎる。男女の差っていうか、純粋に足が遅い。
「永夢さんごめんなさい!」
「うわっ」
このままでは追いつかれてしまう。馬鹿でもわかる状況の中、俺は永夢さんをお姫様抱っこし走ることに決めた。
「お~。蓮司くんかっくい~」
「でしょ!? あと俺ただの馬鹿じゃないから重くても重いって言わないいたい! なんで叩くのっ!?」
「蓮司くんが馬鹿だからだよ~」
「大丈夫だって俺わかってますから! 永夢さんおっぱい大きいから体重も重くだからいたいって!」
「だから蓮司くんが馬鹿だからだって~」
それにしてもまずいな……。さすがに永夢さんを抱えてたらスピードが落ちる。ていうかそれ以前に革靴! 動きづらすぎるんだよな!
でも文句を言っても仕方ない。永夢さんを置いていく選択肢がない以上、距離を詰められたとしても走るしかないんだ。
「ていうか今さらですけど……すんません。俺落選しました。永夢さんにも迷惑かけて……」
「ん~? いやいいって~。永夢クラスとかあんま気にしないし~1000万程度のペナルティなんてそこまで痛くないし~。それに蓮司くんも生徒会入れたし~、永夢的には充分勝ちかな~」
「え? 俺確か8位か……7位だったと思うけど」
「特別生徒会役員だよ~。斉賀くんが落ちたから男子は0人。だから蓮司くんは特別生徒会役員として、一応生徒会の仲間入りってわけ~」
「マジ!? よっしゃぁっ!」
「でも普通に1000万のペナルティは負うし、生徒会特権は得られない。ただのパシリだから蓮司くんにメリットないよ~?」
「最悪じゃんっ! 終わったっ!」
「まぁまぁ~。でもそのおかげで、永夢たちは助かったんだよ~?」
「それってどういう……あ!」
ホールの出口が見えてきた。後は一直線。でもかなり、赤道さんが近い……!
「……ん? なんか人いません? 2人! 出口に立ってる!」
「蓮司くん目いいね~。誰いる~?」
「えーとあのフリフリ衣装は……穂火さんと、2年の生徒会長の人!」
「ふんふん。じゃあ永夢たちの勝ち……」
「追いついたぁっ!」
赤道さんの歓喜の声がすぐ後ろからし、直後。
「がっ!?」
悲鳴が聞こえ、声が離れた。
「え!? どしたのっ!?」
「撃ったんだよ~、銃をね~」
「銃!? えっ!? どっから!? 誰が!?」
「明日那ちゃんだよ~。入学式の時の二丁拳銃持ってるでしょ~?」
「いや直線上に俺いるんすけど……!」
「だって撃ったのスーパーボールだもん。壁にぶつかれば跳ねる。それで角度を変えて狙撃したんだよ~」
「それ運ゲーで当たらなかったってだけ!?」
「ちがうちがう~。隣に幻ちゃんいるんでしょ~? うちの生徒会長めちゃくちゃ頭いいから計算で軌道を割り出せるんだよ~」
「俺たち走ってましたけど!?」
「それができるから、頭いいって言ったんでしょ~?」
頭いいって次元超えてるだろ……。ていうか、
「っしゃぁっ!」
ついに出口を通り抜け、ホールの外に出れた。赤道さんはまだ廊下にいる。完全に逃げ切った!
「よくがんばったね、外村くん」
永夢さんを下ろして一息つくと、黒峰さんがこちらを見ずに優しい声音でそう声をかけてきた。
「そして、ありがとう」
「いやこっちこそっていうか……。俺もあの人に迷惑してたんで助かりました」
「……永夢、話してないんだ」
「話すようなことでもないでしょ~?」
「どうだろうね。私はそうは思わないけど、とにかく外村くん。君が生徒会に入り、その上で生徒会に襲われたことが好条件だったんだ。普通の生徒相手なら生徒会は何でもできるけど、同じ生徒会相手なら話が変わってくる。これなら私たちは、生徒会の後輩を守るという名目で、復讐ができる」
……復讐? その意味を聞く前に、5人が俺の前に並んだ。
「悪いね、1年。迷惑かけちまって」
第2学年生徒会庶務、連座太朗。
「永夢的にはそんな興味ないんだけどさ~。みんなのため、ってやつだよね~」
第2学年生徒会会計、永夢楠。
「そう言わないでよ永夢ちゃん。……あなただって、無関係じゃないでしょ?」
第2学年生徒会書記、穂火明日那。
「うるせぇぞてめぇら。俺たちの目的は一つだろうが。ようやく……ようやくだ」
第2学年生徒会副会長、大賀蹴人。
「その通りだ。ようやく緋彩の仇が討てる」
第2学年生徒会会長、黒峰幻。
第2学年生徒会役員全員が集まっていた。




