第2章 第30話 調教
「赤道3年庶務ではないですが、私も身体は頭だと思っています」
霊御さんが言う。
「身体と脳が万全だからこその健全。そのどちらかが崩れれば、もう片方も引きずられるように堕ちてしまう」
誰に言うでもなく、ただ話し続ける。
「だからどれだけ心が強くても、身体の方を堕とされたらどうしようもないのです」
そして霊御さんは、龍華さんの耳に口を寄せ、囁くように言った。
「ねぇ龍華。いまとっても気持ちいいですよね?」
「ぁ……あぁぁぁぁ……」
霊御さんが龍華さんにやったこと。それはたった一つ。舌を指で弄るだけ。
それだけで龍華さんは、完全に堕ちてしまっていた。
「舌という部位は人体の中で最も敏感な場所と言っても過言ではありません。味覚に触覚。触れるだけでそれが何か判断することができる。とても繊細で、普段意識していない部位。責めるならここがいい」
初めの内は龍華さんも落ち着いていた。四つん這いで舌を出し、睨みつける姿は執念を感じた。
だがものの数分で腕は身体を支えられなくなり、おしりだけが上がった状態に。強い瞳はとろんと融け、口を閉じられないことで涎をダラダラと垂れ流していた。
「やはり舌はいいですね。見ていて楽しいですし、犬のように涎を垂らす姿は非常に滑稽。心を壊すには最適ですし、何より開発してしまえば常に刺激が襲う。とても素晴らしいです」
「ぁう……。ぅあ……」
「そして経験則ですが、龍華のようなプライドの高い人間は決まって身体への快楽に弱い。ふふ、SはMとはよく言ったものです」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
涙目になりピクピクと痙攣する龍華さん。でも私には、龍華さんよりもその近くにいながら何もできない彼女の方がよほど悲惨に見える。
「んんんんっ! んんんんんんんんっ!」
如月さんに後ろから口と身体を抑えられている斬華さん。彼女の大きな抵抗は10cm近く高い如月さんの前では無力に等しい。何よりもその涙が見ていられない。とても、かわいそうだ。
「さて。龍華が堕ちるのも時間の問題でしょうし、蓮司の方を解決しておきますか」
龍華さんの舌を弄りながら、霊御さんは後ろを向き。
「雅、美季と沙耶を止めてきなさい」
私にそう、命令した。
「……言ったはずです。私はあなたに服従しているわけではない。そんな……」
「へぇ。この状況を見て逆らえるのですね」
「…………」
「私はかわいい系もきれい系も、どちらもいけますよ?」
私が何とかしなければならない。なんて驕った想いだったのだろう。
ずっと。最初から最後まで、私にできることなど何もない。ただ周りに流されるだけで。何も、できない。
悔しい。悔しいけれど、どうしようもない。だって何もできないのだから。
正しさも間違いも、そこには何もない。選べるほど、強くない。
だからもう、仕方がない。
「樹さん、出田さん。ごめんなさい」
ホールの放送室に入った私は、樹さんと出田さんと対峙した。




