第2章 第23話 選挙決着
「第5位! 第3学年生徒会副会長、亀川龍也推薦! 斉賀怜生っ!」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
結果が発表された直後、斉賀がマイクを通した穂火さんにも負けないくらいの大声で雄叫びを上げた。
「そして第7位! 第2学年生徒会会計、永夢楠推薦! 外村蓮司っ!」
「負けたぁぁぁぁっ!」
ついに長いようで短かった生徒会選挙が終了した。
当選したのは龍華、霊御さん、美季、沙耶、斉賀。
落選したのは如月さん、俺、杭座さん、斬華、渡牙さん。
2年推薦2人と、3年推薦3人。見事な完敗だ。
「ごめん……ごめんね……蓮司くん……!」
結果が発表されると、龍華が俺に抱きついてきた。首筋に水滴が落ちる。そん、なレベルか……?
「いやいいって! 元々生徒会に興味なかったし、借金も龍華が何とかしてくれるんだろ? 永夢さんには悪いけど俺は別に……」
「そうじゃない……。そうじゃないの……!」
そうじゃないって……何が……?
「つまりこういうことです」
龍華に抱きつかれていると、ようやくソファーから立ち上がった霊御さんがゆっくりと俺の方へと歩いてきた。
「蓮司が落選したのは全て龍華のせいということですよ」
龍華の……せい……?
「いや違うだろ。俺の人気が死ぬほどなかったんだよ。同じ作戦をとった龍華たちは上位なんだから」
「いいえ。龍華たちにあって、蓮司にはないものがあったのですよ」
「胸……?」
「つまり、私の買収です」
俺のもとへと辿り着いた霊御さんが、龍華の肩に手を回して説明する。
「私は買収する際、私以外の投票数が同一になるよう調整しました。美季、沙耶、雅、斉賀さん、龍華、翠川さん、朔夜の票数は、私が買収した分は平等。後は個人のがんばり次第という形ですね」
「それと俺に何の関係があるんだよ」
「聞いてなかった? 霊御は、蓮司の分は買収していなかったんだよ」
美季のフォローを聞き、ようやく気づいた。霊御さんの俺と渡牙さんへの介入はなかったってことか。
「でも龍華が俺を入れるようしたって……」
「そうです。龍華が勝手に成功したと勘違いたのです」
龍華が俺を抱きしめる力が強くなる。本当に、失敗してしまったのか。
「酷い話ですよね。蓮司の策略は素晴らしいものだったというのに。蓮司の恩恵を受けるだけ受けて、自分は何もしない。どんな不義理でしょうか」
「だって……蓮司くんを入れたいって……!」
「だから評判を下げることしかしなかった、と。甘いですよ。重大な行為を他人に任すなど。……他人事のようにただ悔しそうな顔をしていますけど、美季と沙耶。蓮司が落選したのはあなた方の責任も大きい」
霊御さんの矛先が、美季と沙耶にも移行する。
「あなた方2人で2億ポイントですか。それだけあれば、普通に買収するだけで3人……いえ龍華も入れた4人を当選させることなど容易だったでしょうに」
「……蓮司の策が」
「いいえ、あなた方は楽な道を選んだだけです。自分たちが他人と交渉するのが嫌いだから蓮司の策に乗っただけ。第一美季は交渉が得意ですし、沙耶もメッセージ上なら饒舌でしょう? ただ少しめんどくさくて。少し嫌だなと思ってしまった。悪い面しか見れなかった。そのせいで、蓮司は落選したのです。もっと反省なさい」
「う……っさいなぁ……!」
反抗の意思を見せる美季だが、結局何も言えず押し黙ってしまった。
「それでは候補者の方々、ステージの方に出てきてくださいっ!」
「呼ばれましたね。荷物を持って行きましょう。この後は色々忙しいでしょうから」
穂火さんの声に従い、霊御さんは一人ステージ裏から出ていく。
「ほら、お前らもさっさと行けよ。俺ら負け組はちょっと遅れて行くから」
「ごめん……ごめんなさい……!」
涙を流す龍華を、美季と沙耶が連れて行く。当選者たちの中に俺が入っても迷惑だろう。少し斬華と話してから……。
「おらぁっ!」
「って」
行くかと思っていると、背中を誰かに思いっきり蹴られた。
「いってぇな……。なにすんだよ斉賀」
「あ? 生徒会役員様に口答えか?」
「口答えじゃねぇよ手の方が先出るからなぁ!」
「やめなさい外村くん」
わかりやすく調子に乗った斉賀を一発殴ろうとしたが、斬華に止められてしまう。
「なんで止めんだよ斬華。そんなに生徒会って偉いのか?」
「偉いわ。それに何より、暴力は駄目」
「俺が先蹴られたのに?」
「やられたらやり返すというのは馬鹿の発想よ。おとなしくしていなさい」
「だってよ。おとなしくぶん殴られてろ!」
「っせぇなさっさと行けよ!」
俺が反抗できないと思ったのか殴ってこようとした斉賀をステージの方に蹴り飛ばし、一息つく。
「……外村くん。生徒会はこの学校の最高権力よ。暴力なんて……」
「知らん。俺馬鹿だから普通にやり返す」
「この後が楽しみだなぁ外村! もうこの学校にいられると思うなよぉっ!」
「うっせぇザーコっ!」
向こうから叫んできた斉賀に言葉を返し、今度こそ一息つく。
渡牙さんはどこかに行ってしまったため、この場にいるのは俺、斬華、杭座さん、如月さん。全員、負け組だ。
「……ま、なんとかなるか」
負け組なんて今に始まった話じゃない。俺はずっと、底の底でいい。




