第2章 第22話 最後の2人
「第8位! 第3学年生徒会書記、狼煙玲花推薦! 杭座雅っ!」
杭座さんが8位……。残りは確か、4、5、7位の三つか……。
「……霊御さん。あなたにとって、私は不要ですか」
既に結果はわかっていたのか、杭座さんはたいした反応も見せず、真っ先に遠くから霊御さんに訊ねた。
「いいえ、いずれお友だちになりたいと思っていますよ。ですがあなたの潔癖さは不要です。朱に交わり赤くなったら帰ってきてください。その際には生徒会の席を用意すると誓いますよ」
「……そうですか」
何の話かはわからないが、杭座さんは小さくうなずき、それっきり壁に寄りかかって黙ってしまった。
「では続いて第4位! 第2学年生徒会書記、私! 穂火明日那推薦! 出田沙耶ちゃんですっ! おめでとーっ!」
すごい贔屓感満載で沙耶の当選が発表される。これで残りは5位と7位。俺と斉賀だけになった。
「やったな沙耶! イェーイっ!」
「う、うん……」
当選したのにも関わらず、沙耶の表情は暗い。いやいつも基本的に暗いんだけど、いつにも増して不安そうにしている。
「じゃあインタビューしましょうか! 見事推薦した沙耶ちゃんが当選した明日那ちゃんはどうですか!? うーんそうですねー……」
ステージの方で穂穂さんの一人芝居が始まった。残り2人……実質あと1人なんだからそのまま発表してくれればいいのに。
「さすがに緊張するなー。落ちたらあれだよな、俺の人気が死ぬほどなかったって話だよな。龍華たちは上位なんだし」
「……大丈夫だよ。蓮司は落ちない」
半分ふざけながら言ったのにそんな反応されたら困るなぁ……。
「ふふ、さすがの美季も動揺しますか。でも蓮司は普段通り。素晴らしいです」
「自分のならポーカーフェイスには自信あるんだけどね……」
「俺も普通にビビってるけどな。馬鹿だからどれだけやばいかわかってないだけだよ」
俺にでもわかるのは、負けたら借金1000万だってこと。とても返しきれない額だ。高校生活……というか人生が終わると言っても過言じゃない。
「ふざけんなよ……。なんでこんなことに……クソ……!」
A組と言えどやばさは同じらしく、斉賀は隅でぶつぶつ言って震えている。
「その点斉賀さんは無様ですね。少し深呼吸でもしてみては?」
「うっせぇなわかってんだよっ!」
わかりやすい八つ当たり。斉賀は霊御さんの呼びかけに、近くにあった段ボールを蹴ることで返事をした。もったいない……。段ボールには無限の可能性があるというのに。
「蓮司くん……もし落ちちゃってもポイントはわたしが払うから安心して?」
「落ちる前から落ちること言うなよ。でもありがとう、遠慮なくお世話になるぞ俺は。プライドないから」
龍華も落ち着かないのか、ソファーから立ち上がって俺の横に駆け寄ってきてくれた。
「霊御さんが2位になったことくらいしかイレギュラーはないんでしょ? なら大丈夫よ。外村くんの策は確実に効果的だから」
「斬華……」
落選どころか、9位という成績になって誰よりも落ち込んでいるであろう斬華までもが俺の側に来てくれた。
「ごめんな、ほんとは斬華も入れたかったんだけどポイントがさ」
「わかっているわよ。こちらこそごめんなさい。保守派なのに名乗り出なくて」
なんか始まる前から終わったような雰囲気が出てるな……。
「あれ? 俺いま慰められてる?」
「そう思えるなら上等だよ。逆死亡フラグってやつ。流れは悪いけどぶった切れるのが蓮司なんだから」
「それは褒めてる?」
「割とね」
まぁ褒めてくれてるならいいか!
「……ねぇ、斬華」
美季と話していると、唐突に龍華が斬華に声をかけていた。
「今、言うことじゃないと思うけど。言いたいから、言うね」
その表情は今までの龍華の中で最も真剣で。
「斬華の借金は生徒会役員の権力を使って無理してでも全部消す。その代わり、もうわたしに構わないで」
最も、怯えていた。
「……私は」
「それではいよいよ! 最後の生徒会役員を発表したいと思いますっ!」
穂火さんの声が、斬華のか細い声をかき消す。向かい合い、怯え合っていた2人の視線が自然と声の方を向く。
「第5位――」
俺が借金を負うことになるかどうかの分かれ道。
そのはずなのに、なぜだか俺は。
龍華と斬華は、もう二度と正面から話すことはないんだろうな、なんてことを思っていた。




