第2章 第18話 裏切り裏切り
「ではここで惜しくも落選となってしまった推薦者の方に話を聞いてみましょう。まずは我らが2年生徒会長、黒峰さん。率直に今の感想をお聞かせください」
表が本物のテレビ番組のようにインターバルを挟んでいる中、裏では裏切りを宣言した斉賀くんの説明が続いていた。
「裏切ったってどういうこと……?」
美季から代わり、当事者の如月さんが訊ねる。
「簡単なことさ。あぁまず桜花ちゃん。俺、君ら2人とは別に動いてたんだ。ごめんな」
「構いませんよ」
美季と霊御さんとでずいぶん態度が違う。たぶん、生徒会に入れるかどうかの違い。斉賀くんの主観でしかないが、ここまでの自信を見せられるとある程度の信憑性が出てくる。
「で、なんだっけ? あぁ裏切りの話か。つってもたいしたことはない。ただ俺は、買収の時にお前らの名前を出さなかっただけだよ。俺だけ入れてくれたら後はどうでもいいってな。人数が少なければ買収に必要なポイントも減る。これなら美季に頼らずとも充分足りるし、何よりお前らとの差を開くことができる。単純だけど、中々いいアイデアだろ?」
俺には何の話をしているのかはわからない。それでもこいつが、それなりのクズだってことだけはわかった。
「でもそっちは杭座さんと一緒に行動するって……」
「雅は俺のことを嫌ってるからなぁ。一緒に行動しようとはしなかったよ。つまりやりたい放題ってわけだ」
「……ごめんなさい。まさか、こんなことになるとは……」
杭座さんが悔しそうに歯ぎしりしながらも、深く深く頭を下げる。こんなに素直に謝られたら何も言えず、如月さんもまた歯を食いしばることしかできなくなってしまった。まぁ俺は関係ないが。
「むかつくなぁ、お前。斬華、お前も被害に遭ったんだろ? 俺が一発ぶん殴っとこうか?」
「……やめなさい。暴力は最低よ」
「そうそう。それに外村くん、俺はあんたと喧嘩するつもりはないんだ」
斉賀の口調がまた変わる。如月さんたちに向けられた侮辱するようなものではなく、霊御さんへの媚びるような口調に。
「知らないだろうけど、あんたは当選確実なんだよ。桜花ちゃんに気に入られてるからな」
「えっ!? そうなのっ!?」
「さぁ、どうでしょう」
思わず霊御さんを見ると、いつもと同じ薄笑いを浮かべこちらに視線を向けていた。どっちかわかんねぇなクソ。
「桜花ちゃんが生徒会に入れたいのは、外村くん、龍華ちゃん、沙耶ちゃんの3人。そこに俺を入れた5人が生徒会で決まりだ」
「……霊御さんの策が必ず成功するってわけでもないだろ」
「いいや、するね。桜花ちゃんはそういうことが、できる人間だ。この学年……いや、この学校の王が霊御桜花なんだよっ!」
すごい自信……。まぁ雰囲気は強キャラだしな。雰囲気だけだけど。
「でも俺、霊御さんに一度勝ったぞ? 無敵ってわけじゃない」
「そりゃ誤差はあるさ。でも今回はその限りじゃない。朔夜が6位になった時点でそれは確定したんだ」
斉賀が腕を大きく広げ、説明を続ける。
「俺たち雑魚組5人の内、人気投票で最強なのは朔夜だ。俺は一部の女子から嫌われてるし、雅と斬華は固すぎて人がついてこない。渡牙は論外だ。だが今回、俺は確定で朔夜の上に行ってる。だから5位か4位……順位はどうでもいいさ。残りの席は4つで、桜花ちゃんが推すのも自分含めて4人。これはもう、決まりだろ!」
「……ちょっと、あたしのこと忘れてんじゃない? 全然うれしくないけど、霊御はあたしのことも気に入ってる。外れるのはあんただよ」
「いつまで強者ぶってんだぁ? 美季。お前の役割は龍華ちゃんに代わられてる。お前はもう不用品なんだよぉっ!」
「っ……!」
わざとらしく煽りながら、斉賀は美季に迫っていく。言い返せないことはないだろうが、男に近寄られたことで美季は顔を背ける。
「つかさ、裏切りが悪いってんなら俺より責められるべき奴がいたよなぁ」
美季を言い負かしたと勘違いしたのか、斉賀は明らかに調子に乗って如月さんへと顔を向けた。
「俺はただ裏切っただけ。でも朔夜、お前は違うよなぁ?」
「ま、って……。やめてよ……!」
「……朔夜……?」
動揺を隠せない如月さんと、それに違和感を覚えた渡牙さん。そんな2人に容赦なく、斉賀は言い放つ。
「朔夜! お前は渡牙を裏切ったよなぁ!?」




