第2章 第14話 博打
「外村くん、この後私の部屋に来ない?」
「モテ期来たっ!?」
選挙当日まで残り10日ほどになったある日の放課後。突然奈々がそう誘ってきた。女の子に部屋に誘われ、断る男などいない。奈々が暮らしているZ組付近にある小さなホテルの一室に訪れると、
「待ってたよ、蓮司」
「くっそがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ビジネスホテルのような部屋に、美季と出田さんが待ち構えていた。
「いやまだ可能性はある……。4ぴ……」
「今日は選挙の話をしにきたよ」
そうですよね。わかってましたよはい。
「蓮司はあたしたちを敵だと思ってるだろうけど、それは龍華さんの策略。その証拠として沙耶がハッキングした監視カメラの映像があるんだけど……」
「何やってんだよ……。そんなんしなくていいって。美季と沙耶が味方ってことくらいわかってる」
「あれ意外。割と証拠集めがんばったんだけどな」
「がんばったのはさやだよ……。美季ちゃんなにもやってないじゃないですか……」
沙耶がげっそりした顔を見せる。俺にはわからないが、ハッキングはそれくらい大変なんだろう。
「あんたのそれ徹夜ゲームのせいでしょ。あたしが悪いみたいに言うな」
どうやらたいした労力ではないようだ。そんな簡単にハッキングできるんだ……。
「凧さんも悪かったね。こんな簡単に行くなら手借りなくてよかった」
「構わないわ。戦局を教えてくれるのでしょう? こちらのメリットはかなり大きいわ」
どうやら美季は選挙の情報を渡すことを条件に奈々を味方に引き込んだようだ。まぁ俺を呼び出せるZ組で隠し事ができるのは龍斬華を除けば奈々くらい。当然の判断か。
「それでね、蓮司。これ絶対内緒にしておいてほしいんだけど、今敵が内部分裂してるんだよね」
「内部分裂?」
「敵っていうかあたしら3人以外かな。霊御、龍華さんチームと、雅、斉賀くん、斬華さん、如月さん、渡牙さんのチーム。監視カメラで捉えたから間違いないと思う」
「なんか難しいことになってんなー」
なんで選挙活動でこんな複雑なことになってるんだ。もっと素直に行けばいいのに。
「雅たちに正面切って霊御に喧嘩売る度胸はないだろうから、十中八九秘密での犯行。まぁあの5人がどれだけがんばったところで霊御に勝てるはずはないだろうけど……この場合あたしらが危ない」
「さやたち選挙活動してないもんね……。だいぶ出遅れてます……」
「だからあたしら3人は、とりあえず雅たちに勝たなきゃいけない。でも正直厳しいんだよね。霊御たちは雅たちの分も票を集めるだろうし、何よりあたしと沙耶は単純に友だちが少ない。こういう人気勝負は苦手なんだよね」
「だから外村くん……どうにかできますか……?」
どうにか、ねぇ……。
「策はある。でもこれが正しいのかどうかわかんない。だから俺こそお前ら頼りなんだよ」
龍華と話をしてから、少し考えていた。初めに思いついたこの策を、なぜみんなやろうと思わないのかを。
「あたしは蓮司に負けた。常識外れな発想で、裏をかかれた。だからこそ言える。あいつら頭がいい連中を食えるのは、蓮司しかいない。細かいところはあたしたちが決める。だから話してみて」
そう言われ、話す。俺の常識外れ……というか、常識を知らないだけの俺の浅い考えを。
「なるほどね……やっぱ常識外れだ……」
「うーん……。こ、れ……微妙だね……」
「選挙の定石を大きく外れているわ。何より票が読めない。選挙でこれはいただけないんじゃない?」
俺の話を聞き終えた3人が揃って苦い顔をする。やっぱりだめか……。
「……いや、上手くいけばいける。あたしらが上位独占。霊御も降ろせるかもしれない」
そんな中、俺に負けたことがある美季だけがその瞳に強い熱を灯していた。
「……本気? こんなの最低でも2億ポイントは必要よ。あなたたち2人で何とかできるの?」
「それに美季ちゃん! これ賭けの要素が強すぎるよっ! 危険ですっ!」
奈々と沙耶は否定的なようだ。それでも沙耶のその一言が、美季を突き動かした。
「賭けでしょ……? あたしの得意分野じゃん……。尚更いけるって……!」
「美季ちゃん悪いとこ出てるよぉっ!」
「うっさい! 博打打ちが博打から逃げてどうすんのっ!? 間違いなく5、6割は勝てるっ! じゃあもう一点張りするしかないでしょっ!」
「さやも巻き込んでること忘れないでぇっ」
結局話はまとまらず、一致せず。
それでも生徒会選挙は、始まった。
第1章と第2章の間にキャラ紹介を挟みました! 1人1人のステータスなんかも載っているのでぜひ確認してみてください!
あと評価やブクマ……なにとぞお願いします! お待ちしていますっ!




