第2章 第13話 メッセージ
〇蓮司
「蓮司くん、あーん」
「蓮司蓮司っ、こちらもどうぞ。あーんっ」
「ここはキャバクラか?」
5月も半分ほどが過ぎたある日。霊御さんに会議だと呼ばれて来てみたら、待っていたのは龍華と霊御さんだけ。しかも3人掛けのソファーに座らされ、2人に挟まれる形でフルーツを食べさせられている。なんだこのご褒美は。
「俺なんかした? 今章俺なんもやってないよ?」
「そんなことありませんよ。全ての思惑は蓮司を中心に回っています。良くも悪くも目立ちますから」
わかんないけど俺関係ない気がするぞ……。変に巻き込まれてるだけだと思う。
「ていうか龍華、なんでお前がここにいるんだよ! はっ、さては美季たちが裏切り者ってのは嘘だったのかっ!?」
「違うよ。今日はお遊び会。敵味方なんて忘れて一緒に楽しもうってことだよ」
「……?」
そう言い、龍華は俺の腕に胸を押しつけてきた。俺にその技は通じないって知ってるはずなのに。
「龍華、なにを……」
「はい、あーんっ」
訊ねようとした俺の口に、龍華が無理矢理さくらんぼを詰め込んでくる。腕から胸が離れた。
「おいしいっ!」
「でしょ? さすが高級品って感じだよねっ」
あれ? 俺なに言おうとしてたんだっけ。まぁいっか。
「ところで蓮司。どうして私のことは『霊御さん』なのですか? 龍華は下の名前なのに」
「いや別に理由はないけど……。あれだな、名前呼んでもいいくらい仲良くなったな、って思ったら名前呼ぶことにしてる」
「なるほど! ではこれからは私も桜花ですねっ!」
「あー……んー……。なんか霊御さん怖いんだよなー……」
本能的に近寄るのが怖いっていうか、この人に近づいたら死ぬ、って脳が言っているような気がする。
「えぇー……。私のことは名前呼びしてくれないんですかぁ……?」
「蓮司くん、名前で呼んであげたら?」
再び、腕に胸が。マジでどういうこと……?
「じゃあ桜花……いたっ」
「蓮司くんは本当に馬鹿だね。桜花ちゃんってZ組の子にもいたでしょ? 蓮司くんわからなくなっちゃうんじゃない?」
「いやいないたいっ! なんで叩くんだよっ!?」
「蓮司くんがお友だちの名前も忘れちゃう馬鹿だからだよ」
えぇ……? 本当にいなかったと思うけどな……。
「お友だち、ですか」
霊御さんがフフ、と笑い、紅茶を啜る。
「私、真剣に蓮司とお友だちになりたいと思っているんです。どうです? 私のチームに入りませんか? 私についてきてくれるなら、あなたを生徒会に入れてあげます」
「いや俺俺龍華たちのチームだし……」
「そうだよっ。蓮司くんはわたしの仲間だもんっ」
龍華は腕から胸を離し、
「桜花ちゃんや樹さんのチームには渡さない」
再びくっつけてきた。
「龍華……?」
「とにかく気をつけてね?」
俺の腕に胸を押しつけたまま、龍華は言う。
「桜花ちゃんは樹さんたちと組んでる。でも樹さんはわたしを桜花ちゃんの仲間ってことにしようとしてる。樹さんは蓮司くんを騙してるんだよ」
そして腕から胸が離れ、一言。
「わたしを信じて。わたしが蓮司くんを助けるから」
そう力強く、宣言した。
「あーーーーーーーーっ!」
そしてようやく俺も気づく。龍華の作戦に。
「龍華、お前……!」
「蓮司くん静かにしよ? 他人のおうちだよ?」
突然立ち上がった俺を龍華が咎めてくる。だがその表情にはどこか喜びの色が見える。やっぱりそういうことなのか。
「構いませんよ。防音設備は整っています」
俺の想像が当たってるなら、霊御さんにバレるわけにはいかない。
「あ、あはは。あはははは。そそそそうだ……」
「蓮司くん」
誤魔化し笑いをして座ると、龍華が胸を強く押しつけてくる。
「今日はもうバイバイの時間だけど、これからはわたしが助けてあげるね。困ったらすぐわたしに連絡して? わたしの指示に従ってくれるなら、必ず助けられるから」
……なるほど。わかったよ、龍華。
「霊御さん、俺龍華とがんばるよ。絶対に負けないからな」
「そうですか……残念です。ではお互いがんばりましょう」
霊御さんに挨拶し、部屋を出る。さて、ここからは俺ががんばる番だ。龍華のためにも、必ず負けるわけにはいかない。




