第2章 第10話 2人の女王
〇雅
「……っていう感じ。言われた通り蓮司くんと樹さんたちを分断しといたよ」
龍華さん、斬華さん、如月さんが私たちに成果を告げる。と言っても実際に話したのは龍華さんだけ。後の2人は気まずそうな顔で椅子に座っていただけだ。
「ありがとうございます。2人では戦えない。これで美季と沙耶はリタイアですね」
今日は暫定保守派6人での会議。いつものように霊御さんの部屋に集まったが、前までとは空気が違っている。
「どうだろ。油断はできないと思うけどな」
「ええ当然です。気を引き締めていきましょう」
人が集まる機会が増えたということで、霊御さんが用意した豪華な装飾のついた3人掛けのソファー。そこに座っている霊御さんと龍華さんが場を仕切っていた。
Z組のゴミが生意気な……とはもう言えない。翠川龍華という人間は間違いなくA組にいるべき人材だ。
「ま、断然こっちが有利だし。そこまで張り切らなくていいと思うよ」
偉そうに脚を組んで座っている龍華さんがテーブルに置いてあるフルーツバスケットからチェリーを一つもぎり、口に咥える。
「これで蓮司くんも実質リタイア。渡牙さんも駄目だろうし、わたしたちは勝ち確だね」
そもそも初めのクラス分けは不合理だった。いや、高校という場では学力によるクラス分けは正しいのだろう。あくまでも普通の高校では、だ。
桂来学園は普通ではない。頭が全てと謳っているが、どう考えても学力よりも頭脳。覚える力より、考える力が必要だ。
そしてその分野において翠川龍華という人間は。確実に、私や斉賀さんより上だ。
「んーっ、あまーいっ」
「ふふ。お口に合ったようでよかったです」
「桜花ちゃんも食べる?」
「ええ、いただきましょうか、龍華」
2人並び、会話する姿は悔しいが様になっている。すっかりお互い名前呼びになっているし。
前に霊御さんは言っていた。自分はリーダーで、龍華さんは参謀タイプだと。
美季さんが敵に回った今。霊御さんはほぼ間違いなく、龍華さんを横に置こうとしている。だとしたら私が座る席は。果たして残っているのだろうか。
「ではそろそろ決めましょうか。私たちのチーム、5人を」
霊御さんの言葉に、明らかに空気がピりつく。外す枠は間違いなく斬華さんだ。姉妹で仲が悪そうだし、2年生の推薦を受けている可能性も高い。
でも、確実ではない。霊御さんと龍華さん以外は。誰が外されてもおかしくない。
「どうだろ。まだ早いんじゃないかな」
誰も何も言えなくなっていると、口の仲でさくらんぼを転がしながら平然と龍華さんが口を挟む。
「今1人追い出したら、蓮司くんにこの話言っちゃうかも。そうなったら樹さんも生き返るし、何より蓮司くんの一発が怖い。ここは生かさず殺さず、飼い殺しにした方がいいと思うよ。直前まで誰を外すか明かさない。わたしと霊御さんで全部決めて実行するのがいいんじゃないかな」
……すっかり側近気分だ。でも何も言えない。ここで口答えをしたら、その人が外されかねないから。
「それにわたし的には蓮司くんに生徒会に入ってほしいんだよね。せっかく集まってるのに一言もしゃべらない斬華みたいな子より、必ず何かをしてくれる蓮司くんの方がほしい。桜花ちゃんもそうでしょ?」
「そうですね。蓮司は私の生徒会にほしいです」
「でしょ? でも今のままじゃ蓮司くんは絶対に当選しない。わたしが何とかしない限りはね」
「そうですねぇ……困りました」
これで……残り2人。いや、この流れだと樹さんと出田さんも入れることになりかねない。龍華さんと役割が被っている樹さんはともかく、機械に強い出田さんは確実にほしい人材のはずだ。
……残り1枠。その中に入れなければ、私は1000万ポイントのペナルティを負った上であの汚いZ組に落とされることになる。それだけは避けなければならない。
でも、口を挟めない。この2人の間には、入っていけない。
「ですが蓮司を仲間に引き入れるといっても一筋縄ではいかないでしょう」
「そこは安心してよ。わたしならあの馬鹿の手綱を握れる」
龍華さんが小さな口からペロッと舌を出す。
「わたしが上手く、蓮司くんを調教してあげるよ」
その綺麗なピンク色の舌の上には、結ばれたチェリーの茎が乗っていた。




