第2章 第8話 リーダーの資質
「3人……」
やってきた翠川斬華、龍華、如月朔夜さんを見て私はつぶやく。
霊御さんが保守派を7人の中から3人にまで絞り込めたのは素直にすごい。でもこれで向こうが抱えている問題と同じになった。5人にまで絞り込めない内は、選挙活動ができない。
それにこの絞り込みが合っているのかも気がかりだ。外村さんは置いておいて、樹さん、出田さん、渡牙さんの3人は本当に革新派確定なのだろうか。
いや、そもそも。霊御さんと斉賀さんは私の味方なのか?
何も……何も信用できない……。
「……霊御さん、私たちを呼んだのは……」
「蓮司くん、樹さん、出田さんの3人は賭場に行ったよ?」
斬華さんの言葉を遮るように、龍華さんが外村さんが座っていた席に座りながら言う。
「わたしなら蓮司くんからどんな情報も絞り出せるし、蓮司くんの言語能力に一番適合力が高いのもわたし。使えると思わない? 霊御さん」
「なに急に言い出したのー?」
「わかりませんか? 朔夜。龍華は私に自分の価値を示してくれているのですよ」
そう言われても斬華さんや如月さんはあまりピンとこない顔をしている。それは私も斉賀さんも同じだ。霊御さんと龍華さんが何をしているのか理解できない。それを見た霊御さんは、いつもと同じ薄い笑みを浮かべて言う。
「私、雅、斉賀くんで保守派は過半数の3人揃っています。つまり残り2人は革新派でも構わない。なので、こちらのチームに入りたいのなら示してほしいのです。自分がどれだけ私に貢献できるのかを」
……そういうことか。でもそれはあまりにもリスキーでは……?
「……りんりん……渡牙鎖は確実に2年側。そして推薦人は2年生徒会長の黒峰さんだよ」
霊御さんの言葉に、如月さんが躊躇いながらもそう答える。
「それはどこ情報ですか?」
「それは……言えない」
「そうですか。では翠川さんはどうです?」
霊御さんに促された斬華さんは、静かにジャケットのポケットに手を入れる。
「……あんたたち、馬鹿じゃないの?」
そして取り出したのは、録音状態のスマートフォン。
「誰があなたたちの仲間になるって言った? これで裏切り者がわかった。樹さんたちに聞かせれば終わりよ」
……やっぱりそうなるか。保守派は2人。1人は確実にあちら側。もしその1人がスパイとして来ているのなら、自然こうなる。1人1人別の時間に呼び出していればこんなことにはならなかった。やはり霊御さんは……。
「どうぞご勝手に。ではあなたは革新派ということでよろしいのですね?」
「…………」
訊かれ、押し黙ってしまう斬華さん。
「そもそもが下策ですよ、翠川さん。別にあなたが裏切り者の正体を教えたところでいずれは美季にばれるもの。それにあなたが革新派なら、もう少し取り入り、情報を引き出すべきだった。逸りましたね」
……霊御さんの言っていることがようやくわかった。
勝つ確率が低くとも、勝負に行く。それはつまり、こういうことだ。
人が増えれば思考も増える。したがってこのようにボロも出やすくなる。たとえ斬華さんが名乗り出なくても、時間をかけて誰がこちら側か調べればいいだけ。元々3人に絞り込めていた以上やることは変わらないし、時間の短縮にもなる。
そして単純に全員こちらの仲間になりたいのなら、競い合わせることでより多くの情報を引き出すことができる。何から何まで霊御さんの思い通りだ。
スパイを引き入れる可能性があった。それでもこの作戦を実行した。成功すれば、一気に誰が保守派かわかるようになるから。
それができる、霊御さんは……。
「……ごめんなさい、冗談よ」
「そうですか。では歓迎しましょう」
結局斬華さんは録音データを消し、こちらに取り入ることにしたようだ。でも今の行動の余波は大きい。ほぼ間違いなく、革新派は斬華さんで決定だ。
「ですが参ってしまいましたね。3人ともこちらに入りたいとなると、人数が超過してしまいます」
わざとらしく困ったような顔をし、霊御さんは言う。
「そこであなた方に忠誠の証として、あることをお願いしたいのです。聞き入れてくださいますね?」
霊御さんの瞳が、妖しく輝いた。




