第2章 第6話 2年派会議
「ロン! メンタンピンドラドラ……」
俺は一体何を見させられているのだろう。
「ねぇ美季さん、何やってんの?」
「麻雀」
「いやそれはわかるんだけど、なんでわざわざ俺を賭場に連れてきてそんなよくわかんないゲームやってんだって話だよ」
「これを機に蓮司も覚えなよ。案外簡単だよ?」
「舐めんなババ抜きのルールだってもう忘れたわ」
「それは……ごめん、どうしようもない」
「まぁまぁ~。のんびりいこうよ~」
美季と戦っている永夢さんが呑気な声を出す。ちなみに2人の他にも2人対戦しており、どちらも永夢さんの配下っぽい。
「出田さんはやんないの?」
近くの席に座り、わざとらしくふてくされた顔をしている出田さんに訊ねる。このおとなしそうでやること激しい女の子も、俺と同じく美季に呼ばれた口だ。
「まぁ……こんなアナログゲームに割く容量は一つもないので……」
「数ヶ月で誰もやらなくなるデジタルゲームより何十年何百年の歴史を持つアナログゲームの方が高尚だと思うけど?」
「出たよ老害理論……」
「あ? ちょっとあんたそこ座んなよ。麻雀の楽しさ教えてあげるから」
同じクラス同士の美季と出田さんがギャーギャー言い合う。真逆っぽいけど関係性は良好のようだ。
「で、マジでなんなの? 俺スパイ活動で忙しいんだけど……」
「あれ本気だったんだ……。まぁいいや、2人を呼んだのはこれから作戦会議をするため。2年側だって確信できるのあんたらだけだから」
「永夢たち席外そうか~? どうせアドバイスできないし~」
「いえ、表情見たいんで残っててください」
「ん~。まぁそれくらいならいいかな~」
美季の目的は永夢さんの目の前で作戦を話し、得意の噓発見器能力で情報を手に入れることらしい。規約で直接アドバイスをもらうことはできないのでこういう手段しかとれないのだろう。
「とりあえずはあたしたちの仲間を見つけ出すことを目的にしようか。そして3年側の2人を見つけ出し、泳がせて誤情報を向こうに伝えさせる。ここまでで何かある?」
「それはいいけど見つける方法がないだろ?」
「そだねー……。あたしもまだ3人にしか絞れてない」
「もう絞れてるんだ……こわー……」
出田さんが吐くような素振りを見せる。なるほど、ここでも嘘発見器か……。
「あとこっち側は龍斬華と……如月さんと渡牙さんか」
「で、あの双子と如月さんの内2人がクロ。これは確実。本命は龍華さんと如月さんかな」
龍華はそんなことしない! って言いたいけど……しそうだよなぁ。
「でも龍華は俺の味方だって言ってたぞ?」
「そうだね。あの嘘で塗り固めた子が言ってたね。悪いけどあたしは仲良くないし信用してないよ。10人の中で一番ね」
まぁそう言われても仕方ないよな……あの調子だと。
「でも翠川龍華さん……だっけ。あの演説を聞く限り完全に革新派だと思いますけど……」
「そうなんだよねー。演説だと龍華さん。信条だと斬華さん。性格だと如月さんがシロっぽい。だからこそまだ絞り込めないんだよ」
確かに腹黒龍華ちゃんはまだしも、あの真面目な斬華や明るい如月さんが裏切っているとは思えない。
「そういえば渡牙さんは?」
「あの子はノーマークでいいよ。如月さんに付き従ってるだけっぽいし、たとえクロだったとしてもその内気づける。それにあんなやる気のない子を3年が選ぶわけがない」
はーん……。色々考えてるんだなぁ……。
「じゃあ後は絞り込むための具体策……ですか」
「そうだね。でもま、とりあえずは泳がせながら探るって方針でいいと思う。絞り込められたらこっちの勝ちは確実だから」
「ああ、2年派の方が多いんだっけ?」
「それもあるけど、こっちの方が金がある。ギャンブル好きのあたしと対戦ゲーで稼げる沙耶がA組の稼ぎ頭だからね」
金……? なんで金があれば勝てるんだ……? や、まさか……。
「買収……?」
「その通り。このイベントは基本的に全員がペナルティでポイントが減るゲーム。順位や推薦者はわからなくても、当選者5人全問正解の100万は確実に確保しておきたいって人も多いはず。特にこっちには永夢さん確定の蓮司がいる。つまり5人ちゃんと揃えられたらあたしたちの勝ちは揺るがない」
あー……わっかんねぇなぁ……。
「つまり?」
「このまま放置する」
「結局何にもなしか……」
「何も考えないで何もしないのと、考えて何もしないのじゃ大違いだよ。まぁとりあえず、蓮司はスパイ活動に勤しんで」
「いそしむ……?」
「がんばれ蓮司! 応援してるっ!」
「おう! がんばるっ!」
とは言ったものの。
「龍華か斬華が……俺を裏切ってる……」
その確実な事実に、どうしても気持ちが暗くなってしまうのだった。




