第1章 第39話 じゃんけん
「ふふ。お互い負けるつもりはない、ですか。不思議ですね。どちらかは必ず負けるというのに」
俺からの宣戦布告を受け、霊御さんは興味を失ったかのように美季から離れ、俺へと詰め寄ってくる。
「あなたのその自信の根拠、とても興味があります。種目は蓮司が選んでください。ただし運動や運が大きく絡むものはだめです。私は自分が勝てると確信したものしかやらない主義なので」
「いや、種目はじゃんけんだ。ただし最初に手を宣言するってやつ。これなら運は絡まないだろ?」
最初に出す手を宣言し、変更しても変更しなくてもオーケーな変則じゃんけん。たぶん誰でもやったことがあるはずだ。何より俺ですらルールを理解できているゲームをA組の人がわからないはずがない。
「ふふ。相手の性格や動作を見て出す手を考察する勝負ですか。蓮司がどんな手を出すか、非常に興味があります。ぜひお相手させてください」
心底楽しそうに笑い、霊御さんは手持ち無沙汰にしている永夢さんを見た。
「楠2年会計。ここは賭場です。何かしら賭けなければなりませんよね?」
「桜花ちゃん、永夢の下の名前呼ばないでくれる? 嫌いなんだよね」
「ふふ、怒られてしまいました。楠2年会計とお友だちになるのはまだ先になりそうです」
怒られたと言いながらも、自分のルールを崩そうとしない霊御さん。自己中というか、自分が一番偉いと本気で思ってそうだ。
「ではお互い勝った時の報酬を決めておきましょうか」
「いやいいよ。こんな俺が必ず勝つ勝負で何か決めるなんてかわいそうだ。いいでしょ? 永夢さん」
「いいよ~。所詮はこっちに1ポイントも入らない勝負だし~」
そういえばさっきからずっと会場側にポイントが入ってなかったな。まぁステージは出し物という認識なのだろう。そこ自体で儲けを出すつもりはないようだ。
「だってさ。俺はパーを出す」
「では私もパーを出しましょう。あら、あいこですね。どうしましょうか」
自分の出す手を宣言し、霊御さんは一層楽しそうにくつくつと笑う。
「悩んでしまいますね。そのままチョキ? 裏をかいてグー? あえてのパーでしょうか。ふふ、あなたの頭の中が気になります」
頭の中って言われてもなぁ……。こっちは特に何も考えてないんだけど。
「ふふ。美季のことが気になりますか? これで完全に屈服できたつもりはありませんが、着実に牙は抜いたつもりです。私のお友だちになるのも時間の問題です」
「いや、普通に下着姿の女子がいたら視線持ってかれるだろ」
「あら、そうですか。魅力的な身体をしていますものね。こちらとしては勝負している時くらい、私のことだけを見ていただきたいものです。仮に私が下着姿になれば私だけを見てくださるのでしょうか」
「えっ!? いいのっ!?」
「そう食いつかれると困ってしまいますね。私も乙女。他人に肌は見られたくないものです」
「期待させやがってクソがっ!」
「ふふふ。ではそろそろいきましょうか」
今の会話で何か収穫があったのかはわからないが、霊御さんが控えめに腕を上げる。
「おう。俺はいつでも大丈夫だ」
「そうですか。では」
お互い構え、始める。
「「最初はグー、じゃんけん――」」




