第1章 第36話 新しい敵
「負けたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
5000万ポイントを賭けたジジ抜き。勝ったババ抜きと同じ要領でやれていたはずだ。それなのに、なぜだ! めちゃくちゃ普通に負けたんだけど!?
「ふぅ……ふぅ……」
俺に勝ったはずの美季は、安心したからかテーブルにもたれかかり、涙を流して震えている。パンツ丸出しなことを忘れているのかすごい前屈みだ。ここで後ろに回ったら不自然だろうか。
「ほんと蓮司くんって馬鹿だよね~」
悔しさと欲望で頭がぐちゃぐちゃになっていると、ディーラーを務めていた永夢さんがニヤニヤしながら語りかけてくる。
「さっき蓮司くんが勝てたのは美季ちゃんの裏をかけたから。それさえわかってれば美季ちゃんは負けないよ~。せっかく途中までアツかったのに……残念だったね~」
「くっ……くぞぉぉぉぉ……!」
ま、まだだ! まだ5000万ポイント残ってる!
「美季! もう一度だっ! じゃんけん! じゃんけんで勝負しよう! これならルールわかるからっ!」
「やめなさい馬鹿」
唯一ルールがわかっているじゃんけんで勝負に出ようとすると、いつの間にかステージに上がっていた斬華に肩を叩かれた。
「なんでだよ! 俺が勝てないと8000万! 借金が残るんだぞ!?」
「わかってるわよ。でもそれは私の失態。黙って受け入れるわ」
そう答えた斬華の表情は、どういうわけかすっきりしている。
「それにあなたが無様な姿を晒してくれたおかげで、自分がどれだけ馬鹿なことをしていたかに気づけたし。勉強代だと思って諦めるわ」
「斬華……。……ん?」
斬華の言葉を聞いた直後、スマホが震える。見てみると、イベント終了の通知を知らせるメールだった。そこには最終的な順位が書かれており、
「よかったな、美季。A組は1位だ」
「うん……うん……!」
Z組は見るまでもなく最下位だろう。また最低でも1ヶ月野宿ってわけだ。
「まぁ落ちるわけじゃないしな。だからあんまり気にするなよ」
「……うん。ありがとう」
さて、長いようで短い一戦は終わった。後は帰ってみんなにごめんなさいを……。
「少しお時間よろしいでしょうか」
もうお開き。そんな空気が漂っている賭場の中で、ただ1人。いまだその瞳に熱い火を秘めた少女がステージの上に上がってきた。
綺麗な子だ。鋭い刃を思わせる美しい銀の髪を腰まで垂らした刀身のような子。小柄だが雰囲気がそれを感じさせない。とても。とても、恐ろしい。なぜだかわからないが、全身から発せられる迫力がそう感じさせる。
「霊御……!」
さっきまで安心したようにうずくまっていた美季が、目を見開き後ずさる。この子がさっき言ってた霊御……。人の名前だったんだ。
「なんで、ここに……!」
「大変見事な戦いでした、蓮司」
怯える美季の横を通り抜けた霊御さんは、俺の手をとりうっとりした顔で見上げてくる。
「え、っと……?」
「ああ失礼。私、お友だちになりたい方には下の名前を呼ぶことにしていますの。はじめまして、1年A組の霊御桜花と申します」
1年……A組……。つまり、美季と同格ってことだ。普通の奴じゃない。
何か、考えてるはずだ。何か、普通じゃないことを……!
「蓮司、ぜひ私とお友だちになってくださる?」
「……はい?」




