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偏差値20の頭脳戦~頭が全ての学校で誰よりも馬鹿なはずなのに、なぜか無双してモテてしまう~  作者: 松竹梅竹松
第1章 クラス替えゲーム

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第1章 第26話 幕開け

「俺たちがポイントを盗もうとしたなんていう証拠でもあんのかよ!?」

「そうだよ! 送金履歴、着金履歴、全部残るんだぞ!? そんな馬鹿な真似するかよ!」



 変装のつもりなのだろう。帽子とマスク姿のJ組の2人が俺に倒されながら叫ぶ。だがその苦し紛れの絶叫は、1週間前に龍華から聞かされたものだ。よく覚えてないけど。



「別に履歴が残っても問題ないんだよ。受け取ったのが君たち2人だけじゃなければ」



 龍華のその一言に、2人の身体がビクッと震える。



「たとえば君たち2人を含めた不特定の50人に蓮司くんのスマホから送金したとする。そうすれば容疑者が絞り込まれずに100万ポイントを手に入れられる。50分の1でも充分過ぎるほどに大金だよね」

「でも返金しろってなったら……」

「現物に変えちゃえばいい。実際なら宝石とかだろうけど、ここなら食料品とかかな。返品の効かないものなら確実に手に入れられる。善意の寄付だと思いましたとか適当な理由をつければ問題なし。簡単だよね」



 反論すら想定内の龍華がつらつらと言葉を繋げていく。だがそれでもこいつらは諦めない。



「でも俺たちは盗んでない! 俺たちは無実だっ!」

「そう。君たちの罪状は、深夜に男2人で女性が寝ているテントに侵入したことだよ」



 ここで初めに戻る。見方を変えれば、金を盗むことよりも罪が重い気がする。



「たまたまわたしが警報を設置していたから無傷で済んだものの、もしなにも用意していなかったら言葉に表せないほどのひどい目に遭っていたかもしれない。これは大事件だよ」



 ポイントの盗難自体は未遂だが、テントへの侵入はどう足掻いても事実。自分たちが置かれている状況に気づいた2人の身体が小刻みに震え始めた。



「さぁ、ここで本題。わたしは君たちを学校に突き出すことができる。そうすれば君たちは性犯罪者として扱われ、慰謝料を払うことになるだろうね。下手したら停学……いや、退学になるかもしれない」

「まっ……待ってくれ……!」


「でもわたしもできれば穏便に済ませたいんだ。そこで提案。1人150万ポイント支払ってくれたら学校には黙っててあげる」

「ひゃっ……150万っ!?」



 到底支払えない高額の提示に、2人の身体が今までで一番大きく揺れる。



「そ……そんな大金払えるわけないだろ!?」

「借金制度がある。それに安い買い物だと思うよ? たったの150万ポイントで性犯罪者の汚名を着なくてもよくなるんだから」

「ちょっと……待ちなさい……!」



 龍華と2人の会話に、外から女性の声が入り込んでくる。



「あんた……なんのつもり……!?」



 ついさっきまで寝ていたのか瞼が開いていない斬華が人混みを押しのけて近づいてきた。



「ポイントほしさに犯罪者を見逃す……? ありえないわ……!」

「なんでわたしが怒られてるのかなぁ? 被害者はわたしだよ? それに示談は法的に認められている権利だと思うけど」


「それ以前にあんた……! この状況仕組んだでしょ……!?」

「仮にそうだったとしても、痴漢冤罪みたいな嘘じゃない。事実を現実的に処理しているだけだよ」


「だとしたら150万は高過ぎよ……!」

「わからないかなぁ。150万。2人合わせれば300万ポイントを、クラスのみんなに配れるんだよ?」



 龍華と斬華の戦いは、クラス対斬華へと変わる。「クラスのみんなに配る」。その一言で深夜だというのに歓声が沸き起こった。



「わたしは300万ポイントをクラスみんなで分配しようと思うの。1人20万ポイント。みんな今の生活苦しいでしょ? こんなに協力してくれてるんだもん。お礼をしなきゃ嘘だよ」

「なに言ってんの……? こんな簡単に大金を手に入れちゃったらみんな勉強しなくなっちゃうでしょ……!?」


「桂来学園は頭が全て。勉強じゃなくて、頭脳なんだよ。賢くて、効率的な稼ぎ方でしょ?」

「大前提として私たちは高校生よ……! 勉強が本分! それ以外は……」

「斬華さんよぉ……。何もしてないんだから黙ってろよ」



 声が大きくなる斬華を、クラスメイトの低い声が制す。



「何も……してない……?」

「だってそうだろ? 勉強しろしろ言うだけで何もしてくれない。でも龍華は俺たちのために自分を囮にしてくれたんだ。俺たちは龍華の味方だぜ?」



 1人の反撃をきっかけに、クラスメイトたちの非難の声が斬華に降り注ぐ。「いい加減にしろ」、「邪魔すんな」。そういった、声が。



「私は……みんなのためになるように……!」

「わたしが、みんなのためになるようにしてるんだよ?」



 さっきまで小さかった斬華の瞳が大きく開かれる。その姿を細くなった龍華の瞳が捉える。



「ノブレス・オブリージュ、だっけ? ごめんね、斬華。全然興味ないけどわたしの方が向いてるみたい」



 その一言で何も言えなくなった斬華は、ふらふらと自分のテントに戻っていく。



 その後諦めるしかないJ組の2人は龍華に150万ポイントずつ支払い、その300万ポイントを15分ほどかけて15人に分配していく。この場にいない斬華と奈々の分は保留だが、これでZ組全員が20万ポイント以上を所持するプチお金持ちクラスとなった。



 だがこの時の俺は知らなかった。これが大事件の幕開けになることを。



 金を持った人間の本性を。

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