第1章 第25話 深夜の確保劇
桂来学園での生活も1週間が過ぎた。
初めての高校生活。初めての共同生活。初めての野宿。初めての青空教室……だっけ?
初めて尽くしの毎日だったが、意外にも。めちゃくちゃ楽しく過ごせていた。
元々ガラの悪い奴が苦手ってわけでもない。全員と友人関係と呼べるまでになったし、仲良くなれれば共同生活はかなりアリ。毎日友だちの家に泊まっているという感覚だ。
だが当然と言うか、野宿は身体的にきつい。野外教室というのもいまだに慣れない。まぁ元々授業なんてまともに受けてないし、雨が降ればボッロボロの教室に行けるのでそこまで悲観的ってわけでもない。
初めにできた友だちは相変わらずだ。おとなしめの龍華は少し窮屈そうだが俺や奈々とは話すし、その奈々も俺と龍華とそれなりに話す。この3人は簡単なグループのようになっていた。
斬華は……しんどそう。毎日毎日クラスメイトを勉強に誘ってはウザがられる日々。かく言う俺も逃げているので何にも言えないが、少しかわいそうだ。
それでも新しい日々は徐々に日常へと変わっていき、事件は突如起こった。
「……来たか」
ある日の深夜。テントで横になっていると、突然警報が鳴り響いた。場所はすぐ近く。傍のテントの中からだ。
テントを出ると、明かり一つない広場に2人の人影が見えた。わかりづらいが、間違いなく逃げている。龍華が言った通りだ。
「待てやおらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「外村蓮司」と書かれているドアプレートがかかっているテントの横を通り抜け、2人を追いかける。距離は多少あるが、頭が終わっている代わりに運動能力にはそれなりの自信がある俺。広場にいる内に2人に追いつき、
「確保ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
タックルをすることで2人を捕まえた。
「であえであえ~~~~っ! 曲者じゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「んだとゴラァァァァっ!」
「ぶっ潰してやるっ!」
さすがは夜行性のヤンキー共。叫ぶとすごい形相をしてテントから出てきてくれた。そんな中、健康的なことに目を擦りながらふらふらと歩いてくる1人の少女。
「あとはわたしに任せて……」
翠川龍華が逃走者に語りかける。
「2人は……J組の人たちだよね」
逃走者の顔をよく見ると、いつぞや俺たちに絡んできたイキリ陰キャ共だった。侵入者……J組。ここまで予想通りだと少しおもしろい。
「女子のテントに忍び込むなんて最低だよ。しかも逃げるなんて……よくそんなことができたね」
「知らねぇよ! 俺たちは外村のテントを少し覗いただけだって!」
「でも事実、わたしのテントに入ってきたよね? カメラ置いてあるから顔ばっちり映ってると思うよ」
2人からしてみれば、間違いなく俺のテントに入ったつもりだったんだろう。中に入ってみたら龍華が寝ていたからびっくりしたはずだ。
これこそが龍華の策略。龍華のテントに俺の名前が書かれたドアプレートをかけ、騙すというものだ。俺のポイントを盗もうとした奴を。
「さて、蓮司くんの5000万ポイントが狙いだったと思うけど……」
「ちょっと待ってくれよ! そんな足がつくことするわけねぇだろっ!?」
J組の言う通りだ。さすがに送金履歴が残るだろうし、盗難は難しいんじゃないだろうか。
「あはは。そんな理論が通じたら詐欺はもっと横行してるよ」
薄く笑い、龍華はギミックの説明を始めた。




