第1章 第24話 価値観の相違
「ちょっとあんたこれどうなってんのっ!?」
予想通りというか当然というか。広場に戻ると、すごい顔した斬華が俺に詰め寄って来た。
「5000万ポイントってどうすれば……!」
「あーと……なんていうか……」
どうしよう。斬華だけなら教えてもいいが、この場には他のクラスメイト、それ以外にも他クラスの奴らが大量に押し寄せてきてる。全てはこの5000万ポイントをどうやって手にしたかを聞くために。
理屈はわからないが、先輩から借りたと教えてはいけないらしい。でもそれ以外で5000万もの大金を集められるわけがないんだよな。うーん……うーん……。
「蓮司くんはギャンブルで5000万ポイント当てたんだよね?」
困っていると龍華が横から助け舟を出してくれた。なるほど、ギャンブルならワンチャンあるかもしれない。
「スマホで学校内地図の画面出してみて。A組棟の近く……そう。この建物の地下が賭場になってるんだ。ここで蓮司くんは元手数ポイントから一気に5000万まで増やしたの。結構簡単だったよね?」
「そ、そう! めっちゃ簡単だった! マジおすすめっ!」
やけに詳しい龍華の説明に乗っかる。ていうかそんな大嘘ついていいのか……? わかんないけどもう少しボカした方がいい気もする。でもまぁ龍華が言ってんだからいいのだろう。
「まったく……龍華がいながら何やってんのよギャンブルなんて……」
賭場のことを聞きほとんどの人が帰る中、残った斬華が心底呆れた様子でため息をつく。
「ごめんおねぇちゃん……。でも蓮司くんすごいんだよ……?」
「結果なんてどうでもいいのよ。たまたま上手くいったからいいものの、もし大負けしてたらどうするつもりだったの?」
「それは……ごめん……」
「はぁ……。いい? 今回は運がよかっただけ。ギャンブルなんて馬鹿を通り越してクズの遊びよ。調子に乗ってまたやったりしないこと」
……なんかやってもないことについて怒られるの、嫌な気分だなぁ。テストでたまたまいい点をとってしまいカンニングを疑われた時のようだ。こっちはしっかり鉛筆転がして答えたのに。
「とりあえずその5000万ポイントは私に預けなさい。個人のポイントはアプリで確認できるし、勝手に使ったりしないから」
「えー普通に嫌なんだけど」
「あんた馬鹿なんだから無駄遣いしちゃうでしょ? 私が管理してあげる」
斬華は知らないが、これは預かった金。元より無駄遣いという選択肢はない。だからそれでもいいのだが、せっかくのお金持ち! っていう快感を手放したくないなぁ。
「おねぇちゃん、そのポイントは蓮司くんのものじゃないの」
ここで再び龍華の助け舟。でも少ないとはいえ、近くにまだ他クラスの生徒が残っている。ここでその話をするのはまずいんじゃないのか?
「実は賭場にいた先輩数人から少し元手を借りてるんだ。試験終了後に分配することになってるから、あんまり信頼が揺らぐようなことしたくないの」
と思ったら半分くらい嘘だった。でも聞いたことがある。上手い嘘のつきかたは、何割か真実を混ぜることだって。その割合は忘れたけどな。
「他人の金でギャンブル……。馬鹿だけじゃなくてクズだったのね」
「蓮司くんは悪くないの! わたしがお願いして……」
「じゃあ龍華もクズよ。まったく。パパに合わせる顔がないわ」
よほどギャンブルが嫌いなのだろう。斬華はとことん嫌悪感を露わにし、ぶつぶつとつぶやきながら俺たちから離れていった。
「ごちゃごちゃうるさいなぁ……。こんな嘘にも気づけないくせに」
嫌悪感を出しているのは龍華も同じ。離れた斬華には気づかれないよう小さくつぶやき、地面をぐにぐにと踏みつける。
「ごめんね。蓮司くんまで怒られちゃったね」
「別にいいよ、怒られるのは慣れてる。とりあえず俺はギャンブルで大勝ちした、ってことにしとけばいいんだな?」
「蓮司くんにしては察しがよくて助かるよ」
さっしってなんだ? マンガか?
「そうそう。それと罠、仕掛けておこうか」
株が上がった気がしたので黙っていると、龍華が口角をわずかに上げて耳打ちしてきた。
「斬華は気づいてないだろうけど、ポイントは盗もうと思えば盗めるんだよ」
「え? でもポイント残高は全員見れるんだからそんなことできないだろ。たぶん送金履歴とかも残ってるだろうし」
「ふふふ。犯罪者の常套手段、ってやつがあってね。まぁ言う通りにしてよ。上手くいけば、Z組みんなが得をする。個人的にはみんな幸せっていうのは嫌いだけど、斬華から専売特許を奪えるんだもん。少しくらい我慢しないとね」
ニヤニヤしながら心底楽しそうに語る龍華を、俺が止めることなんてできなかった。




