第1章 第21話 選択肢
「ちょっ……ちょっと待ってください! ポイントの借用と生徒会選挙の推薦は蓮司くんにしてくれるんじゃ……!」
「もちろんそのつもりだったよ~。でも蓮司くんシラケてるし、先にお話くれたのは美季ちゃんだったし~。ま、しょうがないよね~」
俺が駄目だった際の保険。それが1年A組の樹美季さんってことか……。
「あたしも詳しくはわからないけど、悪いねお二人さん。生徒会に入るのはあたしだよ」
スキップするように部屋を駆け、樹さんが俺の横に腰かける。脚まで組んでずいぶん偉そうだ。
「君が何を考えてるかわかるよ。どうすればその権利を自分のものにできるかって思ってるでしょ」
「いや正面に座ればパンツ見えるかなって思ってた」
「ごめんなさい……こういう人なんです」
「あはは! やっぱ蓮司くん単体だとアツイなーっ」
褒められてるのか貶されてるのかわからないが……とにかく。
「まだ永夢さんがあんたにポイントを貸すって言ったわけじゃないだろ」
「いやいや。君たちZ組でしょ? クラス蔑視がしたいわけじゃないけどさ、さすがに相手にならないんじゃない?」
「蓮司くんの言う通りだよ~。永夢が持っている権利を誰に渡すかはまだ決めてない。どっちにあげるかはメリット次第かな~」
余裕そうに笑う樹さんの表情に陰りが見えた。だがそれも一瞬。口のアメの棒を手に取り、あくまでも余裕を隠さずに言う。
「メリットか……。とりあえずこれを見てください」
なぜかまたアメを咥え、樹さんが見せたのはスマホの画面。
「へぇ……」
「俺にも見せて!」
「いいよ、どうぞ」
画面を見た永夢さんが感嘆の声を上げたので見せてもらうと、
「100万ポイントっ!?」
画面に映っていたポイント残高は、きっかり100万ポイントを表示していた。
「ってことは……あのテストが満点だったってこと……!?」
「はは、違う違う。あのテスト難しくてね、40万そこそこしかとれなかった。なんで、倍にしてみた。ギャンブルで」
ギャンブル……。つまり、永夢さんの賭場で……。たった1日で、50万以上の勝ち……!?
「イカサマだ! イカサマしたんだっ!」
「しないって。永夢さんに気に入られるためにやったんだから」
いやでもイカサマなしでそんだけ勝つって……。どんな賭け方すればそうなるんだ……!?
「あたしね、ギャンブルが好きなんです。だからあなたに推薦してほしいんですよ。それに3年生徒会とは、性格的に仲良くできなそうだし。まぁとりあえず、ここら辺があたしを取るメリットですかね」
生徒会のことはよくわからないが、とにかく。イカサマをしたにしろしなかったにしろ、これだけのポイントを1日で手に入れたんだ。優秀なことに間違いはない。だが、
「う~ん、なし」
永夢さんは悩む様子すらほとんどなく、樹さんに出資することを拒んだ。
「……理由を聞いても?」
「理由は5つ。1.美季ちゃんはシラケる。2.蓮司くんがアツイ。3.3年生徒会との火種を作りたくない。4.エリートが嫌い。5.ギャンブル好きにロクな奴はいない」
「はは、確かに」
理由を聞いた樹さんが楽しそうにくつくつと笑う。
「でもどうします? Z組の彼を選ぶメリットこそないんじゃないですか?」
「俺ギャンブルとかしないですよ?」
「くっくっ。こういうのだよっ。こういうセンスが永夢にはほしいんだよ!」
何がおもしろかったのかわからないが、永夢さんはやけに楽しそうに脚をブンブンさせて笑う。パンツ見えないかな……。
「じゃあ彼で決まりですか」
「それはどうかな~。この契約書に納得してないみたいだし」
「龍華、受けよう」
「ええっ!? さっき言ったよね、だめな理由!」
確かに聞いたよ。理解はできなかったけど。でも確かなのは、
「今落ちている5000万ポイントを逃すことが一番馬鹿なんじゃないか?」
確か5000万がいきなり手に入るのがまずいんだったか。でもそんなのは、いずれ誰かが行うことだ。5000万じゃなくても、先輩から借りればいいと思う人は近い内に出てくるだろう。どうやらA組はもうとっくに気づいているみたいだし。
「だったらさ、腹を括るしかないんじゃないか? 怖くてももう、やるしかない」
「で、でも……」
「悪いけどこの契約書は破棄させてもらうよ~」
まだ悩んでいる龍華を尻目に、永夢さんはテーブルの上の契約書をビリビリに破いていた。
「それはつまり……樹さんに決めたってことですか?」
「ううん。やっぱり永夢は蓮司くんがほしい。でもこのままなら美季ちゃんの方にベットしたいんだよね~」
そう言いながら永夢さんはタブレットをペンで操作し、さっきまでの契約書に新たな一文が載ったデータを見せてきた。
「翠川龍華は外村蓮司に干渉しないこと。これを約束してくれるなら5000万はあげたっていい」
あげるって……貸すんじゃなく、くれるってこと……!? 実質的な、5000万円を……!?
「さぁ、蓮司くん。君は友情と利益。どっちをとる?」




