26話 2人の絆。2人の夢?
遅くなってすいません。
「全く。出て行くとまで言いだすとはな。」
ランス達が部屋から出たのを確認し、私はルーンにこう言葉をかけた。
「そうするのが一番だと思ったんです。」
ルーンはポツリとそれだけ言う。
「あの2人には違ったみたいだな、それに私が出て行くのを許すと思ってたのか?」
「……。」
ルーンからの返答はない。きっとその辺りの事は考えてなかったのだろう。これじゃ、ランスの言う通り馬鹿で不器用な奴だな。内心で笑いつつ次の言葉をかける。
「10年前も同じ事言って出て行こうとしてたよな。」
私のかけた言葉が意外な物だったのか、ルーンは少し驚いていた。
「……そうですね。あの時も同じように思ってました。エリスさんにとって私は邪魔物でしかないと。」
消え入りそうな声で言っている。出来れば思い出したくない。でも絶対に忘れる事のない出来事。ただルーンは一つだけ勘違いをしている。
「お前を邪魔なんて思った事は一度もないよ。」
「嘘です。私が居なければカシウスはあんな事にはならなかったんです!!」
「あれはお前だけの責任じゃねーって言ったよな?カシウスが決めて、私達全員が納得した、だから全員の責任なんだって。」
「それでも私が止める事だって出来たかもしれないんです。あの時カシウスの心を読めてさえいれば、別の道だってあったんです。私が……私が。ころし」
ルーンがその言葉を言い終わる前に抱きしめて、言葉を制しする。そのまま頭を撫で、語りかける。
「違う。違うよ。ルーン。カシウスはまだ生きてる。少し前に決めただろ?救う道を探そうって。あの時はあれしか方法が無かった。お前が心を読んだ所で何も変わりはしなかったよ。」
ルーンの頭を優しく撫でながら続ける。
「私はな。ルーンが居てくれたから、頑張ってこれたんだよ。10年前の事も、その前の事だって。ずっと側にいて、私を支えてくれた。そんな大切な存在を邪魔だとは思わないし、出て行くのを黙って見過ごす訳がないだろ?血は繋がってないけど、私とルーンは家族だろ?だからこれからも私の側に居てくれ。」
ルーンは泣いていて言葉は出てこなかった。ただ何度も何度も頷くだけだった。
暫くそうしているとルーンが落ち着いたのか言葉をかけてくる。
「ありがとうお姉ちゃん。」
短い一言だったが、私にとっては嬉しい言葉だ。
「明日からはお前も元に戻れよ!そうじゃないとランスに馬鹿にされて、ユキに失望されるぞ。」
いつまでもしんみりしてるのは性に合わないので、いつも通りに戻す。
「それは嫌ですね。ランス君に馬鹿にされたらやり返しますけど、ユキちゃんに失望されるのは辛いですしね。あの子達の望みでもある訳ですから、私もお姉さんモードに戻ります!!」
ルーンもいつもの調子で返してくれる。
「まっ、私から見りゃお姉さんの要素はゼロだけどな!」
「それは酷いですよ!立派なお姉さんなのに。」
「はいはい。まっ、明日からも頼むな!」
「はい。こちらこそお願いします。」
詰まった思いや、割り切れない心は誰にでもある。過去の傷は消して治らないし、治してはいけない。その中でどう生きて行くかが、重要なのだと思う。過去の道は暗くとも、未来の道は明るい可能性があるのだから、希望を捨てずに前を向いて歩いて行こう。
『その先にカシウスを助ける道があるはずだから。』
これは確実に夢だろう。
俺は猛吹雪が吹き荒れる雪原の中に立っていた。隣には雪がいる。夢だと分かっていても雪が隣に居てくれるのは嬉しい事だ。
「これって夢?」
そんな事を考えていると雪が声をかけてきた。
「間違いなく夢だろうけど。同じ夢見てるのかな?」
前に何度か聞いた事はある。隣同士で寝ると同じ夢を見ることがあると。信じてはいなかったが、実際なってみると違和感なんてない。
「そんな事あるの?」
雪には信じられない事だったのか、少し驚いている。
「あるらしいよ。俺も初めてだけどさ。」
「不思議だね。」
「うん。不思議だ。」
そんなこんな喋りながら辺りを見回す。猛吹雪のせいで先の視界など、無いような物だが、不思議と一本の大きな木だけが見えていた。
「あそこに行ってみようか?」
雪にそう告げる。
「うん。」
雪は相変わらず驚いた顔しながら返事をしてくる。正直に言う。メチャクチャ可愛い。
逸れても困るので、雪の手をとり、2人で猛吹雪の中を進んでいく、寒さはないし、猛吹雪だからと言って、歩きずらい訳でもない。
暫く歩くと大きな木の近くまでこれた。なぜか木の周辺は丸い透明なドームに囲まれていて、中は吹雪になっていないのが見てとれる。
雪と恐る恐るドームの中に入る。
中に入ると何故か大きな木の近くまできていた。白い立派な大木に氷の結晶で出来た花が満開に咲いていた。舞い落ちる花びらは綺麗でとても幻想的だった。
「きれい。」
雪がポツリと言っていた。
「うん。凄く綺麗だね。こんな夢一緒に見れて良かったよ!」
「私も、ランスと見れて良かった。」
なーんて、カップルっぽい会話をしていると、今まで見えていなかった、在るものが見えてくる。
これまでの幻想的な風景を打ち壊す訳でもなく、そこに佇む1匹の大きな獣が。
毛の色は美しい銀色でそこそこの長さがある、体型は犬っぽいが、頭にはとても澄んだ氷で出来た鹿のような角がある。
怖くはない。そう感じられないだけかも知れないが、それほどまでにこの獣は美しく、荘厳で神々しい。言葉も出ない。雪と手を繋いだまま圧倒されていると、その獣が喋り始めた。
「まだ来るべき時ではない筈だが、それに2人とな。」
「喋った!!」
「ランス黙って!」
獣が喋った事にビックリしてしまい、ついつい言ってしまう。雪もマズイと思ったのか、すかさず止めに入る。
「フッ。喋る獣など沢山いるわ。」
鼻で笑われてしまった。それも意外だったので、また言ってしまう。
「鼻で笑った!!」
「ランス。」
雪が俺を呼ぶ声が悲しそうだった。だってしょうがないじゃん!!意外なんだもの!
「とりあえず落ち着け。お前らはどうやって来た?」
今度は諭されてしまった。これはフリだと思い、言葉を出そうとしたが、雪に手で塞がれてしまう。
「分かりません。寝ていた筈なんですが、起きたらここに居ました。」
雪は結構警戒しているのか、とても丁寧に対応している。獣の感って奴なのかな?
「そうか。ならばこれは夢だ。我は何もしない。そう警戒するでない。」
獣は事なさげに言ってるが、これが夢で無ければ困るのだ、夢だと分かっているからふざけていられる。現実だったらとっくに逃げていただろう。
「それにしても綺麗な角だね!」
獣から夢宣言も出たので、ふざけるのをやめて普通に話す。
「そうであろう。我の自慢のツノだからな。」
獣も誇らしげだ。
「頂戴!」
「何をだ?」
「ツノ!!」
「駄目だ。」
「えー、部屋に飾りたい!」
「エリスに怒られるよ。部屋狭くなるし。」
雪もどうでも良くなったのか、会話に入ってきた。
獣 「何にせよ駄目だ。」
ラ「何で?また生えるでしょ?」
ユ「あんな大きいの部屋に入らない!」
ラ「確かに。小さく出来ない?」
獣「我の話しを聞いていたか?」
ユ「小さく出来るなら私も欲しい。」
ラ「おっ、雪も乗ってきたね!」
ユ「うん。綺麗だし。小さく出来る?」
獣「駄目だと言ってるだろ!」
ラ「んー、頑固だなぁ。」
ユ「あっ。」
ラ「どうしたの?」
ユ「夢だから持って帰れない。」
ラ「あっ。どうにかなんない?」
獣「いや、そこの問題ではないからな。」
ラ「ケチー!!」
完全に夢だからと調子に乗ってる会話だった。しかしこの獣は結構ノリがいいな!もう少し遊んでみよう。
ラ「獣自体は小さくなれないの?」
獣「なれない事はないが、何故だ?」
ラ「雪は動物とか飼ってみたい?」
ユ「うーん。あんまりかな。私も動物だし。」
ラ「雪は違うよ。俺はちょっと飼ってみたいんだよね。」
獣「おい、何の話しをしている?」
ユ「ランスが飼いたいなら私は反対しないよ。」
ラ「よっしゃー!じゃ、小さくなって!」
獣「いや待て。我は飼われないぞ。」
ラ「いいじゃん。夢なんだし!小さくなってよ!!」
困った事になった。夢などと嘘をついたばかりに。本来なら繋がりが足らずにまだこれる段階ではないのに何故か来た。それも2人でだ。こんな事は今までなかった。我にもどうゆう事か理解が出来ん。それにこの2人は我の話しを聞かない。このまま滞在させても何が起こるか分からないので、早急に帰ってもらうしかない。それには多少なりとも何かを与えなければならない。『刻印』はまだ早すぎる。我は意を決して、力の大部分を本体に残し、2人が望むサイズの獣に分裂する。
獣「これでよいか?」
ラ「んー、ツノがないけど?」
獣「普段は邪魔であろう?」
ラ「まぁ、確かにね。それ以外は完璧だ!」
ユ「可愛い。」
雪はよっぽどツボに入ったのか、目を輝かせている。これも中々珍しい光景なので、俺徳だ。ここ最近は俺のせいで悩ませてしまったから、夢だとしてもこんな表情をしてくれるのは嬉しい。
ラ「ってかこの夢いつ覚めんの?」
獣「お主らが満足したら覚める。」
ラ「俺は結構満足だけど雪わ?」
ユ「抱きついていい?」
獣「構わぬ。」
ラ「えっ?抱きつくの?」
ユ「うん。毛並みいいから。」
ラ「雪の毛並みも負けてないよ。」
ユ「自分のだと分かんない。」
獣「早くせんか。」
ラ「そっか。お前ってオス?」
獣「そうだが?」
ラ「何か悔しい。まぁ、いいや俺も抱きつくわ!」
少しのジェラシーを感じつつ、雪と2人で獣に抱きつく。その毛並みはとても柔らかく、繊細で一本一本まで手が込まれているような滑らかな毛並みだった。1度触ったら中々手放したくなくなるような。
ここで俺と雪は目を覚ます。向き合って寝ていたのか、雪と目が合う。
「いい夢だったね。」
あの感触がまだ手に残ってる。
「うん。また見たいね。」
ランスが私の尻尾を触りたがる気持ちが分かった。手に残る感触を味わないながら、そう思う。
「おい、ランス、ユキ。いつまで寝てんだ?もう時間過ぎてるぞ!!」
エリスがドアを開けて入ってくる。
「ごっ、ごめん!すぐ準備するから。」
そう言って起き上がろうとすると俺と雪の間に銀色の毛をした獣がいる事に気づく。
「お前らいつ犬なんて買ったんだ?」
エリスの問いかけに俺と雪は目を丸くして、互いを見ることしか出来なかった。
カシウスはエリスの弟です。
とりあえず登場させましたが、カシウスと獣の根幹に繋がる話しはまだ先の予定です。
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なるべく投稿頻度も増やしたいと思っております。




