18話 修行始まります
ここから第2章です。
「おい、起きろ。」
遠くから声が聞こえる
「起きろって言ってんだろ!」
「イテッ。」
何が起きたか分からず目を覚ます。辺りを見回すと誰かが立っていた。しかし俺は完全に目覚めた訳ではない。まだ頭がボォーっとしている。
「お前なんでソファーで寝てんだ?」
「朝はご飯がいい。」そう言ってまたソファーに横になる。
ゴツ!!あまりの痛さに今度は完全に目が覚めた。
今度はちゃんと辺りを見回す。エリスが立っていた。それに少し怒っていた。
俺は誤魔化すように言う。
「おはようエリス!」なるべく元気よく。
「あぁ、おはようランス。お前さっきの話し聞いてたか?」
さっきの話し?ソファーの事だろうか?
「うん、聞いてたよ。部屋にベッド1つしかないから、雪に譲った。」
多分これで合ってるだろうと思い答えた。
「何だ?2人で寝れば良かっただろ?」
どうやら合ってたらしい。
「無茶言わないでよ、緊張して寝れないよ。」結構狭いベッドだから、2人だとくっついて寝ないと駄目だ。だが、健全な男子高校生がそんな状態で寝れる訳がない!
「へたれ。」酷い言われようだ。だが事実でもある。それでもちゃんと反論はする。
「しょうがないだろ、経験もないし、それに雪にそうゆう事するの嫌なんだよ。」もちろんしたい気持ちはある。手を出しても雪は何も言ってこないだろう。だからこそ無理にはしたくない。
「成る程な。なら私が経験させてやろうか?」
自分の身体をアピールしながら言ってくる。多分俺をからかっているのだろう。こう言えば狼狽えると。だがその手には乗らない。
「じゃ、お願いしようかな!」どうだ、これならエリスがうろたえ……る筈だった。
「分かった。」エリスはそう言っておもむろに脱ぎ出した。結局俺が狼狽える。
「じょ、冗談だよ。俺が悪かったから、服着てよ。」必死にお願いする。悪くはないが、今後の事も考えると無理だ。それに俺の中ではエリスとルーンは保護者ポジションだ。そんなルートには入りたくない。
「チッ、ヘタレが。」また酷い言われようだ。だが納得して服を着てくれた。昨日の事も考えると少し安易な返答だったと思う。まさか本気だとは思わなかったが。エリスは冗談なんて言わないのかも知れない。
そんなアホなやり取りをしてると雪が起きて下に降りてくる。
「おはようランス、エリス。」エリスの服が乱れていた事に首を傾げていたが、普通に挨拶してくれた。
「おはよう雪。ゆっくり眠れた?」何となくエリスとのやり取りがバレるのは嫌だったので、すぐに挨拶を返した。
「眠れたよ。起きたらランスが居なくて驚いたけど、随分早起きだね。」
どうやら雪の中では一緒に寝た事になってるらしい。
「流石にあのベッドで2人は狭いから、俺はソファーで寝たんだ。」
エリスから、ヘタレだからと言葉が飛んできたが、本当の事なので否定はしない。無視はするが。
「言ってくれれば、私は床で寝たのに。」
ヘタレに少し反応していたが、雪も無視していた。
「それが嫌だから、俺がソファーで寝たんだよ。床よりは寝やすいしね!」俺は笑顔で言った。やっぱり床で寝るつもりはあったらしい。早急にベッドを買ってほしい気持ちになる。すると、ルーンも起きてきて、ナイスな提案をしてくれた。
「ならユキちゃんは私の部屋で寝ます?ランス君のベッドより大きいですし。」
本当にナイスだルーン!頼りになる。心の中で褒める。
「代わりに私がランス君と一緒の部屋で寝ますから!」
本当に台無しだよルーン。さっきの気持ちを返してくれ。
「それはダメ!」雪が少し大きめの声で反論する。俺は驚いていたが、2人は笑っていた。
「まぁ、ベッドは大きいのに替えてやるからら、安心しろ。」もう一つ買うんじゃなくて、大きいのに替えるんだ。
「小さいのでもいいから、もう一つ買ってよ!」相変わらず紐生活なくせに図々しい奴だな俺わ。
「それはダメです!!面白くありません!」ルーンが力強く反対する。
「寝る時まで面白さ求めないでよ!」
「ランス君はそんなにユキちゃんと寝るのが嫌なんですか?」
クッ、ズルイ言い方だな。
「ランスが嫌ならやっぱり私は床で寝る。」
少し落ち込んだ感じで言ってくる。
ズルイ、ズルイよルーン。こうなる事が分かってからかってるんだ。
「いや、嫌じゃないよ!エリス大きいベッドお願いします。」結局はいつもの通り俺の負けだ。悪魔め、魔女め、ママめ、心の中でせめてもの反抗をする。もちろんこの後ポカポカ殴られる羽目になるのだが。
早朝からこんな馬鹿なやり取りをしている人は滅多に居ないだろう。時間を見るともうそろそろ5時になろうとしていた。
「とりあえず動きやすい格好に着替えて外に来い。顔洗って歯も磨けよ。」エリスママの一言で解散となり、各自で準備する。先に雪に着替えてもらい、俺はその間に顔を洗う。着替え終わったら交代して、俺が着替えに行く。同じ部屋は嬉しいが、何かと不便だなぁと思いつつ2人とも準備が終わったので、外に出る。
「よし、最初はこの庭を1時間走れ。」
広さで言うと学校の校庭ぐらいの広さだ。一周の距離もそこそこある。
俺と雪は返事をして走り始める。向こうの世界より、少し身体能力が上がってるのか、スイスイ走れた。逆に雪は元々の環境もあり、運動不足なのか、凄く大変そうに走っていた。
「ユキ、ランスに追いつこうとしなくていい、最初はゆっくりでもいいから、自分のペースで走れ。」さすがエリス。的確な指示だ。雪も了解したのか、限界なのかペースを落とす。
「ランス、お前は限界までペースを上げろ。1時間後に倒れてなきゃ、後でまた走らせるからな!」さすがエリス!俺には厳しすぎる。もう一度走るのも嫌なので、ペースを上げる。
ーー1時間後ーー
「ゼッ、ハァーハァーハァー。」俺と雪は倒れ込んでいた。
「ユキはもう少し休め。ランスお前は筋トレだ!腕立て100、腹筋200、スクワット200これを一時間で出来るだけやれ。」
全くどの勇者だよ、筋トレの概念持ち込んだの!特に腕立てはキツイよ。そこら辺も分かって半分なのかも知れないが、半分でもキツイ。
「わっ、わたしもやる。」雪は苦しそうにエリスに言っていた。
「ユキ。少しずつでいい。お前はランスと違って身体が出来ていない。無理すると壊れるぞ。」最もな事を言っている。向こうの世界で爺ちゃんに鍛えられていた俺なら多少の無茶なら大丈夫だ。でも雪は違う。
「一緒に戦うって決めたから。」
苦しそうにしながらも言っている。俺は無茶と分かりながらも雪の決意が嬉しくやらせてあげようと思った。
「エリス。やらせてあげようよ。」
だから俺も進言する。
でもエリスは違かった。
「なら尚更休め。無理する事が一緒に戦う事じゃない。お前が無理して怪我したら、悲しむのはランスだぞ。」
諭すように言っていた。
「お前も主人なら、無理させんな。何でも受け入れんな。私達が居なくなったら判断を下すのはお前なんだぞ。優しいのはいい事だが、厳しさも持て。」
俺はハッとした。いつまでもエリス達に甘えて居られる訳ではない。俺の判断が雪の生死を分ける事だってあるかも知れない。いずれは2人だけになるのだから。俺がしっかりしなければ駄目なのだ。
「エリスごめん。」何度目か分からない謝罪をする。これからも間違える事はあるだろう、でもこの修行中に少しでも多くエリスの考え方を学ぼう。そう思った。
「雪、ここはエリスの言う通り休もう。まだ時間はあるから、ゆっくり一緒に強くなって行こうよ。」
俺はそれだけ言って筋トレに戻る。
雪も分かってくれたのか、エリスから許可が出るまで休んでいた。
筋トレが終わると俺も雪も限界近くまで来ていた。自分で立つのもやっとなぐらい。そんな俺達を見かねたのか、2人共担いで家の中に入れてくれる。家の中に入るといい匂いがしてきて、2人してお腹がなる。
「お腹がなるって事は元気な証拠ですね。」
そう言ってルーンが朝食を用意してくれる。パンに目玉焼き、ベーコン、スープがある。まさに朝食って感じだ。腹ペコだったのであっという間に食べ終わる。食べ終わると少しまったりしてからルーンの修行になる。エリスはその間出掛けるらしく、家を出て行った。
まずは部屋の中で魔法について教えてくれる。魔法は体内の魔力を消費して使う物で、魔力量には個人差があるらしい。ちなみにある程度は鍛錬などで増えるが、爆発的に増える事はないらしい。
次に魔術だが、これは術式を書き起こして発動する物で、魔力が低い人でも大きい魔法を打てるしい。ただ、強力な魔法程、術式は難解で大きくなるのだとか。多分俺には無理だ。
続けて属性を教えてくれる。
火、炎、水、氷、風、雷、土、聖、魔。
大まかに分けるとこれだけらしい。大体の人は3つぐらい使えて、賢者とか魔女だと6つぐらい使えるのだとか、1つの俺ってダメ過ぎない?
その他にも合わせて使ったり、応用して使ったりもするらしい。ちなみに魔術も術式が分かっていても特性がないと使えない。
癒しの魔法は誰でも使えるが、程度はその人の特性と力量によって変わる。ルーンはかなり凄かったけど、ヒーラーでは無いらしいからな。
「ルーンはヒーラーじゃないんでしょ?何が得意なの?」
気になるので聞いてみる。
「私は少し特殊ですから、でも何でも使えますよ。」
ビックリだ。全部使える人なんて居るんだ。ルーンの強さを実際には知らないが、相当な実力者なのだろう。エリスと一緒にいるぐらいだしな。
「流石だね。そんな人に教えて貰えるなんて、幸せだね!」雪に向けて言う。朝の事があったからか、少し元気はないが返事はしてくれた。
「では、外に出て少し使って見ましょう!」
ルーンは元気良く言いながら、外に向かう。
外に出るとルーンが土魔法で作った的のような物を用意してくる。
「とりあえず最初は自分の魔力量を知る事と、出来る魔法を使えるようになる事ですね。」
そう言ってルーンは一枚の紙を渡してくれる。
「その紙に魔力を込めて下さい。」
そう言われ、俺と雪は魔力を込める。
特に反応はない。失敗かなと思っていたが、ルーンには何かが見えるらしく、分かったように言ってきた。
「ランス君はクソですね。」
1つだけだからですか?クソって酷くないですか?
「ユキちゃんは魔法の才能がありますね。」
雪は結構良かったらしく、ルーンはご満悦だ。
「とりあえずランス君は魔力が無くなるまで、あの的に魔法を当て続けて下さい。形は何でもいいので。」適当だ。どうせ氷しか使えませんよーだ。クソですよーだ。
「いいですかランス君。1つだけでも極めれば最強になれますよ。だから頑張って下さい!」単純な俺はその言葉でやる気をだし、修行に励むのだった。ルーンにチョロいと思われてる事も知らずに。
「さてユキちゃんは魔法使った事ありますか?」
「……。ない。」
私は少し朝の事を引きずっていた。エリスが言う事も分かるが、早く強くなりたい。
「ユキちゃんは4つ特性があります。水、風、雷、魔。ですね。魔は少し特殊なので後にして、最初は水からやってみましょう。」
ルーンはそう言って魔法の使い方を説明してくれる。
「まずはユキちゃんの中で水をイメージします。それを手から放出する感じで使って見ましょう。」
水のイメージか。思い出したくない事が頭を過る。目隠しされ、桶にたまった水にむりやり顔を突っ込まれた事や、チョロチョロ出るあれを顔にかけられた事。裸にされ、冷水を全身に何度も何度もかけれた事。水に対しては悪いイメージしかない。ルーンもそれが分かってるから、克服して欲しいのだろう。お風呂の時も凄く優しくしてくれた。私は知らずに青い顔をしていたのか、ルーンが抱きしめてくれる。
「ごめんなさい。分かってはいるの。でも克服してほしいんです。水はランス君の氷と相性がいいんです。きっとユキちゃんの為にもなります。」
ルーンは本当に優しい。私の気持ちを的確に突いてくる。でも私は結局水の魔法は使えなかった。変わりに風と雷は大丈夫だったが。
ルーンの修行が終わり、エリスも帰ってきた。皆で昼食をとり、少しまったりする。ルーンと雪は何かあったのか、修行中に抱き合っていた。理由は後で教えてくれるらしいが、顔色が良くないので、凄く気になっていた。
「ユキには実戦の訓練はまだ早いから、最初の予定通りルーンに文字を教えてもらえ、後家事もな。」
「私もランスと訓練する。文字は夜でもいいでしょ?」
エリスの提案に雪は反対した、少し焦ってるのかも知れない。
「ユキ、エリスの言う通りにして。」
「でも。」
「お願い。怪我した雪は見たくないから。」
納得してない顔だったが、了承はしてくれたらしい。午後はエリスとの実戦訓練なので、俺は先に外に出る。
「ユキ。家事も大事な仲間の仕事だ。あいつにちゃんとした飯食わせたいだろ?それにな男を掴むには胃袋からだ!」
エリスはそれだけ言うと外に言ってしまった。言ってる意味が分からない。結局私は今日一日足手まといだった。このままじゃダメなのに強くなるって決めたのに。
そう考えてるとルーンが肩に手を置いてくる。
「誰も1日では強くなれませんよ。強くなるまでは忍耐が必要なんです。それにランス君が家事を出来るとは思えません、そうゆう部分を支えてあげるのも強さですよ。」
「分かった。」
2人の言ってる事は分かる。でも早く強くなりたい。家事で彼が喜ぶとは思えない。
そんな私の事をルーンは悲しい表情で見つめていた。
俺は先に出て準備体操をしていた。正直に言えばエリスとの実戦訓練は楽しみだ。ウキウキしてるとエリスが出てくる。
「とりあえずどんな形でもいいから、私に一発当ててみろ。私は素手でやるけど、遠慮はするなよ。」
エリスはそう言いながら手をポキポキさせてる。遠慮なんてとんでもない。あのリーダーの男より強いのだ、全力で行く意外に選択肢はない。
俺は一息ついてエリスを見る。相対しただけで凄いオーラなのが分かる。
負けた形ではあるが、リーダーの男に使った戦法で行く事にする。一発入れるだけなら、あの男にも入ったのだから。
そう決めて、俺はエリスの顔目掛け氷の粒を放ちつつ、エリスに向かって走る。エリスは両手でそれを防ぎ、前方が見えない状況になる。適切な距離で槍にかえ全力の突きの放つ。この前は斧だったが、今度は素手だ。リーチもこちらに分がある。
「ハッッッ!」!?しかし全力で放った槍はアッサリ掴まれ、お返しに腹パンをくらい吹っ飛ぶ。
おかしいくらい吹っ飛ぶ。今までに無いくらい吹っ飛ぶ。地面に着く頃には俺は気絶していた。
「おい、起きろ。そんなに強く殴ってねぇだろ?」
目を覚ますとエリスが膝枕してくれていた。
「いやいや、俺大分飛んだよ?」
「お前が軽いから悪い。後な相手の視界奪ったからって油断し過ぎだ。攻撃は一回で終わるな。2段3段構えで行け。考えて考えて行動しろ、特に対人戦はな。」
そうか、確かに俺はこれで大丈夫だろうと思っていた、同じ事を繰り返して出来るまでやればいいと。エリスの動きから学べる物もある、半年もあれば必ず強くなれる。俺はそう確信し、エリスに挑む。何度も何度も吹っ飛ばされ気絶しながら。
結局一発も入れられなかった。パターンは色々試してみたが、エリスには通用しなかった。
「よし、今日は終わりだ。家に入るぞ。」
「はい!!」
元気良く返事し、2人で家に入る。
中に入ると俺がボロボロだったか雪が心配そうに出迎えてくれた。エプロン姿で。ルーン様ありがとう。
「大丈夫?」
「うん、大分やられたけど、強くなれそうだよ。」
「そう、良かったね。」
雪は少し悲しそうな顔をしながら、キッチンに戻っていった。
俺はその後風呂に入り、晩御飯になる。
今日はルーンが作ってくれたらしく、エリスに負けず劣らず美味しそうだ。
「いただきます!」
皆で声をかけご飯を食べる。味も美味しく、疲れた体にはとてもありがたかった。特にピーマンの肉詰めのような物が美味しかった。
「この野菜に肉が詰まってるの美味しいね!」
俺はルーンに言う。
「良かったですね。ユキちゃん。」
ん?雪が作ったの?そう思い雪を見ると、少し顔を赤くし、モジモジしている。可愛い。
「美味しかったなら良かった。」
モゴモゴとそれだけ言い黙ってしまった。
「うん、また作ってね!」俺は満面の笑みで雪に言った。
食べ終わると相変わらずのまったりした時間になり、各々好きな事をしている。
エリスは掃除。
ルーンは読書。
俺はソファーでグダグダ。
雪は文字の勉強をしていた。
「どう?文字覚えるの大変?」
「大変だけど、ルーンが分かりやすく教えてくれるから。」
「さすがルーン大先生!」
「褒めても何も出ませんよ。」
「えー、何か頂戴よ!」
「なら、私の掃除を手伝える権利をやるよ!」
「すいません。何も要らないです。」
「もう遅いですよ。ランス君。」
「えっ?」
結局エリスの掃除を手伝わされた。理不尽だ。掃除が終わるともう寝ろと言われたので、部屋に戻る。部屋に入るとベッドが大きくなっていて驚いた。いつの間に交換したんだろう。
「これなら2人でも大丈夫だね。」
雪が少し嬉しそうに言っている。そう言う問題じゃないんだけどね。
「まぁ、いいや、布団に入ろう。」
俺は雪に背を向けて寝る。大きくなったとは言え、距離が近いのは変わらないドキドキするのだ。
俺は寝れないまま、少し時間が経つと雪が俺の背中にくっ付いてくる。寝てると思ってるんだろうか?
「ランスごめんね。足手まといで。」
そう呟いていた。たった1日で出来るようになる事など、ほとんどないのに。
俺は雪の方に向き直り、頭を撫でる。ついでに耳も。
「雪、エリスの言ってる事は正しいよ。時間はいっぱいあるから、あまり焦らないで。
「でも早く強くならなきゃ。役に立たなきゃ。私は必要なくなる。」
きっと自分で戦うと言った事が重荷になっているのだろう。今までは無かった事だから、それに奴隷の性分が合わさってごちゃ混ぜになってるんだと思う。自分の意思で決めた事を遂行出来ない。遂行出来ない奴隷なんて必要ない。表面上は救えたかもしれない。でも完全に救うにはそれこそ時間がかかるのだ。
「雪大丈夫だから。あの2人を信じてれば必ず強くなれるから。それに俺には雪が必要なのは分かるでしょ?戦う事が全てじゃないから。他の事で役に立ってる事いっぱいあるから。だから大丈夫だよ。」
俺はそう言って雪の頭を撫で続ける。納得したのかは分からないが返事は無かった。
雪は頭を撫でられると眠くなるのか、暫く撫でてると寝てしまった。
俺も眠りにつく事にする。明日からも大変なのだから。
この時の俺は分かって居なかった。初めての優しさを貰った雪の気持ちと、それに繋がる恐怖を。




