表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
76/88

第七十六話:親子三代、全員勇者!? 作者都合すぎる定番作品のような世界観に絶句

「誰って? 俺の『おばあちゃん』だよ」


ユーマのその一言で、ティアラは固まってしまう。


「「「「え……っ!」」」」


周囲にいた皆も、同様に驚愕した。


「ん、どうしたティアラ!? つーか、お前らも……」


「こ、こんなに物凄い魔力を持った人が……、ユーマのおばあちゃんなの?」


「そうだけど?」と頷くユーマ。


バッシュが絶句し。シルフィが息を飲み。ミラとカガミは、ユーマとアンを交互に見比べた。

だが四天王たちの驚きは、ティアラの驚きとは、また別の意味合いがあった。


「アン様が、不憫でならぬ……」


バッシュが無念そうに唇を噛む。


「おい! 不憫とか、意味が分かんねーよ。どういう意味だよ」


ユーマが訝し気に尋ねる。


「…………」


ミラは言葉も出ない様子だ。


「……全然……似て、ない」


カガミは、アンの顔を見入る。


「いえいえ。そんなことは……似ていま」


シルフィは途中まで言いかけて、諦めた。

本当に、全く似ていなかったのだ……。


それどころか魔族は年齢の進み方が人間よりも遥かに遅い。二人が並んでも、決して祖母と孫には見えなかった。


「あーっ! テメェーら。ッんだよ! 何が気に入らないんだよ!?」


たまらず、ユーマが吠える。

そんな中、クロムは感慨にふけっていた。


「ということは……アンの、孫……か」


クロムの口から、掠れた声が漏れた。


数ヶ月間、屋敷で共に飯を食い、口喧嘩を繰り返してきた少年の顔を、まるで初めて見るように見つめる。


「……すなわち、こやつが息子……」


クロムの視線が、チート勇者へと移る。


「アン様が、不憫でならぬ……」


またもバッシュが、先程と全く同じ言葉を吐いた。


「ちょ、ちょっと待ってよ!? その反応……。みんな知ってるみたいだけど、アンさんって、そもそも一体何者なの?」


「……私の妹だ」


クロムが、静かにそう告げた。


「え!?」


ティアラの顔が、みるみる変わっていく。


「……じゃあ、ユーマって」


「ああ、そうだ」


クロムが低い声で頷いた。


「……」


どうやら天界の女神でさえも、アンの存在自体は把握してる様子だったが、ユーマとの関係までは知らなかったみたいだ。


しばらく黙っていた咲が、ここで核心に触れる言葉を吐いた。


「あれ? クロムさんと『おばあちゃん』が兄妹きょうだい…………ってことは! ユーマさんは」


「大甥だな」


「…………」


少し間があった。


「……うわ、最悪」


ユーマが実に残念そうに呟く。


「最悪とはなんだ! 最悪とは!」


ユーマを睨みつけるクロム。


祖母が魔族であり、しかも元魔王クロムの妹。

ユーマから見ると、クロムが大伯父で、ゼノンが大叔父。

しかし、そんなことを知っても、ユーマは驚きはしても大して気にもとめていない様子だ。


「さて。私の紹介は、もう終わりましたか?」


この大騒ぎの中心にいることも、どこ吹く風で片眉を上げるアン。


「兄さんもゼノンも。久しぶりに見るけど、何も変わってないのね」


微笑んだあと、アンは床に突っ伏したままのチート勇者に、冷ややかな視線を向けた。


「そうそう……、この子が二十年前に、初めて異世界こっちへ来た理由も、大した理由じゃなかったのよ」


その瞬間、皆が一斉に耳を傾けた。

それはこれまでずっと、チート勇者転移の「謎」の部分だったからだ。


二度目(今回)の転移は、ゼノンが言うには「ゲート」なるものを通って来たとのことだが、最初に異世界に転移した経路は一切明かされていない。そこには、それ相応の理由があるはずだと皆は考えていた。


「──恥ずかしい話ね、この子(チート勇者)は定職にもつかずに、いつまでもプラプラしていたから、私も堪忍袋の緒が切れちゃって『一度、故郷の厳しさを知って来なさい!』って、ゲートに突き落としてやったのよ!」


”はぃ?”


その場にいた全員の思考が、全く追いつかない。

突き落とす? ゲート? どういうことだろう──と。


その時、クロムだけは、その意味を理解したようで口を挟んだ。


「つまりだ……こういうことか? こやつは母親アンに、その『ゲート』なるものに突き落とされて、こっちの世界に来た──と、そう言いたいのか? 召喚でも転生でもなく……な」


アンは平然とした顔で、こう答えた。


「ええ、その通りよ兄さん。これはね、教育なの! 教育っ!!」


そう言いながら、いまだ床に突っ伏したままでいるチート勇者を見下ろした。


(こやつが……あの『チート勇者』か……全く、情けない)


クロムも同様に、まだ死んだ振りなんてしている、このマザコンFQ勇者の成れの果てを見下ろしていた。


「あのさぁ、おばあちゃん。そんなサラッと恐ろしいこと言ってるけどさ。そもそも、その『ゲート』って一体何なんだよ!?」


ユーマが率直な疑問を口にした。

それは、この場にいる誰もが知りたかったことだった。


アンは、皆が十分に聞き耳を立てるのを待ってから、淡々と話し始めた。


「本来、召喚魔法っていうのは、別の世界から人を呼び寄せるもの。でも私は、異世界こちらから現世あちらへ行く方法として────」


そこでアンは、言葉を切る。

そして周囲を見渡す。


「も……もしや……アン様……、そ、そんな!」


カガミが、いち早く反応を見せる。

同じくゼノンも「……なるほど」と、何かを察した様子だ。


「何が『なるほど』だよ! カガミ、なんの話をしてるんだよ?」


わざわざ誰かが口を挟むのを待つあたり、アンも中々あざとい女である。


「……だから私がね『穴』を開けたのよ! ──それを『ゲート』って呼んでるのかしら? あなたたちは」


そう言って、アンは軽くウインクをした。


「む……無理やり!? 二つの世界を繋げたのか!?」


クロムが、思わず言葉を失う。


まさかとは思っていたが……そのまさかだった。常識外れのやり方を、この妹は平然とやってのけたのだ。


「そ、そんな穴が! うちの納屋にあったってことか!?」


ユーマの叫びに、ティアラや元四天王たちも、言葉にならない衝撃に身を震わせる。自分たちが今まで「召喚者は誰だ」と頭を悩ませていた元凶が、まさかユーマの家の古びた納屋に空いた「穴」だったとは、思いもしなかったのだ。


バッシュは「流石です!」と大絶賛し、


ティアラは「怖い家系……」と青ざめ、


シルフィは「あらあら……」と眉を落とす。


ミラに至っては「私のあの苦労は、何だったんでしょう……」と意気消沈していた。


女神は何も語らず(ハハハ……そりゃあ、天界でも把握出来ないわけだわ……)と、かなり引いていた。


「なぁ、ばあちゃん。一つ疑問があるんだけど……ばあちゃんが、元は魔族で異世界人だったのに、なんで現世あっちの世界に行くために穴を開けたんだ?」


ユーマのその言葉に、アンはどこか遠くを見る目をした。


「……昔ね。わけあって、当時勇者だった人と、自分たちの事を誰も知らない『どこか別の世界へ行こう』って駆け落ちしたのよ」


「か! 駆け落ちーーっ!!?」


思わず絶叫するユーマに、クロムが「シィ……」と唇に指をあてて黙らせた。


「まさに召喚で。向こうの世界(現世)へ抜けるためにゲートを開けたの。それが、あの家の納屋に繋がったってわけ」


「じゃ、じゃあ勇者って、じ、じいちゃんのことーっ!?」


アンが静かに頷く。

どこか微笑んでいるようにも見える。


「じいちゃんって……勇者だったんかよ」


信じられないって顔のユーマ。


「あら。あの人はこっちじゃ有名な『勇者』だったのよ。異世界名は、ケン・モーリー。……ま、中身はお人好しの塊だったけどね」


「マジかよぉ~。じいちゃん……」


ユーマは頭を抱えた。


祖父が伝説の勇者で、祖母が魔王の妹。

そして、二十年前に祖母の愛のムチでこの世界に落とされた、元チート勇者が父親。


「なんなんだよ! このご都合主義のテンプレ設定てんこ盛りは! じいちゃん、親父、俺。親子三代揃って勇者って、作者都合のご都合作品そのものじゃねーか! ウチは代々勇者を輩出する名家かなにかなの? カオスすぎんだろッ!」


あまりの衝撃に、ユーマご自慢の例え話も微妙、且つ寒滑りしていた……。

だが、アンはそんな孫の困惑だだすべりを他所に、不意に鋭い視線をクロムへと向けた。


「ところで、兄さん。二十年前に、そこの女神と協力して、この子(チート勇者)を現世へ送り返したらしいわね?」


その問いに、クロムは微かに眉をひそめた。


「……ああ。あれには多大な魔力を要した。あやつを現世へ送り出すだけで精一杯だったのだ」


「……やっぱりね。どんな方法を使ったのか知らないけど。あなたたちは、私が使った魔法陣からゲートをこじ開けたのよ! それを閉じないまま放置したから、現世あっち側のゲートが開いたままになってたのよ」


アンの言葉に、クロムが「どういうことだ?」と声を詰まらせる。


「いい? 本来、異世界こちらに人を召喚するための魔法陣なの。それを無理やり現世むこうへ『送り出す』なんて逆の使い方をすれば、そこに穴が発生するの。私はゲートを開けたあとは、必ず現世側からゲートを閉じる作業をしていたわ」


そう説明してから、アンはムッとした顔をした。


「でも、あなたたちが勝手にこの子を現世へ送り返したことなんて、私は知らなかったわ。だからゲートを閉じる必要があるのに、開いたままになっていたの。……つまり、二十年前からゲートはずっと、開いたままだったのよ」


「……っ、ということは……!」


「そうよ。あんたたちが閉じ方も知らずに穴を放置したせいで、ゲートは、ずっと開いたまま。そのせいで今回ユーマが巻き込まれたのよ」


「ふざけろよー! ぜ……全部、おっさんのせいじゃねえか!!」


ユーマの怒号が響き渡った。

が、しかし。

ある事実を思い出したユーマは、急にフォロー側に回った。


「いや……まっ、でも。穴って現世側に開くんだよな? だったら、ばあちゃんは気づかないし悪くないよ!」


クロムが責められている場面で、強引に「ばあちゃんは悪くない!」とミスリードしたのは、自分がゲートに落ちた理由が、女の子を納屋に連れ込んでエチエチなことを迫り、それを拒絶された上に突き飛ばされた。


そんな理由でゲートに落っこちたんて、とても言えるわけもなく。ただただ焦るユーマだった。


「ユーマ?」


ユーマの妙な態度に気づいたのは、ティアラ一人だけだった。


「な、なんだい? ティ、ティアラさん?」


ユーマの口調が急によそよそしくなる……。


「あ、怪しい~……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ