表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/88

第十九話:「誘引石」はエッチな道具? …いや違うみたい

シルフィさんの「極上(?)耳掃除」を終えた後、俺は半ば強制的に二階の寝室へと運ばれた。


「さあご主人様、今日はもうお休みください。明日からは、さらに徹底した奉仕が待っておりますわよ……うふふ」


そう言って優しく(力強く)布団をかけられる。


「いや、まだ早くない? 俺、まだまだ全然眠くないよ?」


そう言って体を起こそうとすると。


「はァい、もう寝む寝むのお時間ですよぉー。お胸、ポンポンしてあげますからねェー」


シルフィさんにベッドに押さえつけられながら、優しい手つきでお胸をポンポンと、リズミカルに叩かれる、俺。


さっきまで、あれほど挑発的に、俺をいじっていた人が(いや”ソコ”じゃなくって!)今はこんなにも“ママ顔”で寝かしつけてくるのには、それ相応の理由がないと、どう考えても不自然だ。


しかし、美人爆乳お姉さんに、上から覆いかぶられながら、手の平でポンポンされるリズムに合わせて、聖なる特大ひよ子饅頭二匹が、俺の目の先でピョピョ近づいたり──ぴょぴょ離れたり──近づいたり──離れたり──ピョピョ──ぴょぴょ──ぴ……ょ……(うぅん……もう食べれないょ)


”ママん……”


「……ハッ!!」


今、眠ってた!?


(心の芯が、なぜか、ぽかぽかと……温かいや)


なんだったんだろう……。あの、大いなる安らぎは!? まるで魔法にでもかかっていたみたいだ。


さては──!!


(……まさかあいつら、俺を寝かせてから高級な肉でも焼いて食う気か?)


そう思うと、悔しくって! こんな所でぴょぴょ寝てる場合じゃない! と、俺は飛び起きた。


音を立てないように寝室を抜け出し、階段を下りる。一階、リビングの入口で足を止め、息を殺した。


鍵穴は流石は古めかしい屋敷だ。装飾用かと思うほど無駄に大きく、覗く気がなくても中が見えそうな代物だった。


中を覗き込む。そこには酒宴どころか、重苦しい空気を纏った魔族マゾっ子三人衆の姿があった。


「……さて、シルフィ。その重大な話とやらは何だ。わざわざ小僧を寝かしつけてまで話すこととは」


おっさんが低い声で切り出した。


(やっぱりか!)


「ゼノン様……いえ、ゼノンがいよいよ動き出しています。旧勢力の粛清が本格化しています。先日もクロム様ゆかりの者が数名、行方不明になりました」


シルフィさんの言葉に、おっさんの眉がピクリと持ちあがる。


(ゼノン……誰だそれ?)


「フン! 相変わらず小心者のやることは姑息だな。だが、今の私は人間側の領域にいる。そう簡単に手は出せまい」


「そうであれば良いのですが……現魔王軍の間では、クロム様が人間側の勢力と結託し、復権のために何か『未知の強力な魔導兵器』を隠し持っているのでは? との噂が広まっています」


魔導兵器? なんだそれ?


「く……っ、馬鹿が」


そう言って苦笑する、おっさん。

シルフィさんは続ける。


「ゼノンは、最近特に神経質になっています。昨日、厄災ディメンション・リザードが出たというのも、恐らくはその馬鹿げた”噂”の真実を確かめるための、威力偵察でしょう」


正直、何の話をしているのかは、ちんぷんかんぷんだ。


「これを、ご主人様をお風呂に入れる前に、庭の生け垣で見つけました。……誘引石です」


シルフィさんが、懐からどす黒く光る石の破片を取り出し、テーブルに置いた。

誘引石? なんだそれ。聞いたこともない単語だが、鍵穴越しに見えるバッシュの反応は尋常じゃなかった。


「……誘引石か! 魔物を呼び寄せる寄せ餌を、屋敷の中に投げ込んだというのか。それにいつ気づいた」


「屋敷に到着した直後ですわ。……昨日のトカゲも、偶然ではなくこれに誘い出されたものでしょう。ゼノンは、クロム様がどのような隠し球を持っているのか、喉元に刃を突きつけてでも暴くつもりです」


おっさんが鼻で笑い、腕を組んだ。


「隠し球か。馬鹿みたいなことを考えておるわ! だが、半分は正解かもしれんな。連中の想像を絶するような『現実・・』が、この屋敷には転がっているからな。あいつらの常識など、ここでは何の役にも立たん」


おっさんはそう言ってから「チート勇者でもなければな」と小さく呟いた。


「……チート勇者! もしかして、あの伝説の男の再来か!? だとしたら厄介です! 魔法を使わず、ただ歩く。それだけで要塞を崩壊させる、あの異常な男が……」


バッシュが捲し立てるように叫んだ、その言葉に、空気が一瞬で凍りついたのが分かった。


(チート勇者? 誰だよそれ!)


ついには三人共が、黙りこくってしまった。


(……おいおい。肉どころか、めちゃくちゃ物騒な話してるじゃないか! 借金取りの取り立てよりヤバい雰囲気だぞこれ)


俺は冷や汗を拭い、気づかれないように慎重な足取りで、空っぽのベッドへと戻ることにした。



「……ふぁあ。昨日は、何か色々あったなァ……」


俺は寝癖だらけの頭のまま、リビングへと降りていった。


昨日の話で気になったのは、『誘引石』とかいう名前だ。まるでエロいお姉さんがつけてる香水みたいな名前だ。


『誘引』


……つまり、誘われる? 引き寄せる?

なんかエロくないか?

異世界の秘密道具ってのは、そういう遠回しな名前ついてそうだし……。


俺の勘ではあれはきっと──何かを誘引する、大人向けの何かだ。

うん、間違いない。

エチエチな匂いがぷんぷんする!


「おはようございます、ご主人様。昨夜はよく眠れまして?」


リビングに入るとシルフィさんが、いつも通り爆乳が収まりきらない、完璧なムチムチメイド服姿で朝食を並べていた。


俺は声を潜めて言う。


「ねぇシルフィさん……昨夜の“誘引石”ってやつ。俺にも試させてくれよ」


「はい?」


シルフィさんの手が止まった。

瞬時に空気が変わる。


「お待ちください、ご主人様」


「ん?」


「なぜ、その名前をご存じなのですか?」


(あ、ヤベッ!)


しまったぁ……。


「え、いやその……たまたま。たまたま耳に入ったというか。ほら、鍵穴もデカいし……へへへ」


クロムのおっさんの目が細くなる。


「……小僧。聞いていたのか」


「いや、聞いてたっていうか、聞こえたっていうか……。正直、何の話をしてるのか分かんなかったんだけど、なんか誘われる石……って、ちょっとエチエチな道具かなって」


「……なるほど」


バッシュが妙な反応をした。


「どうしたんだよ」


クロムのおっさんは、お茶をすすりながら、鼻で笑う。


「心配して損したわ」


シルフィさんも、ほっと胸を撫で下ろす。


「ええ、いつものご主人様でしたわ」


「なんだよそれ!」


馬鹿にされてる気分だ。


隣でティアラが呆れたように溜息をつく。


「朝から何くだらないこと言ってんのよ……アンタ、魔物呼ぶ石を“エッチな道具”だと思ってたわけ?」


「だって名前が怪しいだろ。『誘引』だぞ? どう考えてもそういう響きじゃん」


「どんな理屈よそれ!」


ティアラが、みんなの見えないところで、俺の頭をぺしっと尻尾で叩く。


「いてっ!」


「朝起きて最初に考えることがエロって、どういう脳みそしてんのよアンタは」


「いや、健全な探究心だよ」


「何を探求するつもりよ!」


もう一発、ぺしっ。


「いててっ、暴力反対!」


「だったら朝っぱらからメイドさん口説くな!」


「口説いてないよ。研究だよ」


「エロの探求。エロの研究だもんね! このエロユーマ!」


テーブル越しに見える尻尾は、ぴんと逆立って、ふるふると揺れていた。

……ちょっと怒ってる猫みたいで、かわいい。


「……なによ」


「いや、尻尾が揺れてる」


「見るなっ!」


赤面するティアラ。


(こいつ……俺のこと好きなんじゃね?)


「ん? あ。私、エッチな男は嫌いです」


「はぁぁぁぁ? 俺も貧乳なんか好きじゃねーし!」


「たまに私のお尻見てるけどね」


そう言ってニヤニヤするティアラ。


……まったく。

この屋敷、朝から騒がしすぎる。


つーか

見てねーし!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ