第9話:ターナー
その日以降、三人は頻繁にメディーレの営む雑貨店を訪れるようになった。
特別な用があるわけではない。
買い物をするでもなく、ただメディーレと他愛のない会話を交わすだけ。
それでもメディーレは、いつも変わらぬ笑顔で三人を迎えてくれた。
店に並ぶ品々はどれも見慣れないものばかりで、三人にとっては全てが新鮮だった。
――そして。
初めての実戦から三週間が経った、その日。
三人はいつものように店を訪れていた。
「メディーレさん、今日は何を見せてくれるの?」
期待に胸を膨らませたジェシカが尋ねる。
「今日はね、とっておきよ」
そう言って、メディーレは店の奥へと姿を消した。
しばらくして、奥から現れたのは見知らぬ男だった。
男は三人の前に立つと、親しげな笑みを浮かべて言う。
「やあ。君たちがジェシカちゃん、メアリーちゃん、リーファちゃんだね」
「はい……そうですけど……あなたは……?」
「何者?」
戸惑いを隠せない二人の問いに、男は軽く肩をすくめた。
「初めまして。メディーレの夫、ターナーです。よろしくね」
『えぇ〜!!』
三人の声が、きれいに重なった。
「驚かせてごめんなさいね」
奥から戻ってきたメディーレが、くすりと笑う。
「ちゃんと紹介してなかったでしょう? この人が私の夫よ」
「すみません、勝手に独り身だと思ってました……」
ジェシカは慌てて頭を下げ、それからターナーに向き直る。
「いつもお世話になってます。ジェシカです、よろしくお願いします」
「メアリーよ、よろしく〜」
「リーファ。よろしく」
三人が順に挨拶する。
「うん、よろしく。三人とも」
ターナーは柔らかく笑った。
「この人、普段は仕事で店にいないのよ」
メディーレが補足する。
「なかなか紹介できなくてね」
「ターナーさんは何の仕事をしてるの〜?」
メアリーが興味津々に身を乗り出す。
「廃品回収さ。バイクで各地を回って、使えそうな物を探してるんだ」
「各地って……?」
ジェシカが首を傾げる。
「この辺に点在してる廃墟だよ。そこから拾ってきて、この店で売ってるんだ」
ターナーは軽く肩をすくめる。
「放っておいても、朽ちるだけだからね」
「でも、廃墟って……宇宙神獣がいたりしますよね?」
ジェシカが食い気味に尋ねる。
ターナーは一瞬だけ視線を逸らし――
すぐに笑みを浮かべた。
「もちろん危険だよ。僕も多少は戦えるけどね」
「それでも……どうして?」
ジェシカの問いに、今度は真っ直ぐに答えた。
「生きるためさ」
その言葉は軽くなかった。
「仕事が必要なんだ。この世界に、安全な仕事なんてない。そもそも――」
ほんの一瞬、間が落ちる。
「安全な場所自体、存在しないからね」
三人は、黙ってその言葉を受け止める。
「明日、この街が消えてても不思議じゃない」
空気が少しだけ重くなる。
だが次の瞬間、ターナーはいつもの調子に戻った。
「まあ、それでも働かないとね。家族を養うのも、夫の役目だし」
その軽さに、場の空気が少しだけ緩む。
そのとき。
「メディーレさん、いい夫を持った」
ぽつりと、リーファが言った。
「リーファ、誰目線⁉︎」
ジェシカが即座にツッコミを入れる。
そのやり取りに、ターナーは声を上げて笑った。
「三人とも、元気でいいね。今度、バイクに乗せてあげようか」
「ちょっと、危ないわよ」
メディーレが軽く小突く。
「近場なら大丈夫だよ」
「是非お願いします!!」
ジェシカが目を輝かせて即答する。
メアリーとリーファも、それに頷いた。
「じゃあ今度、約束ね」
ターナーが笑う。
「約束ですよ!」
三人は元気よく応え、店を後にした。




