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第8話:リーファと愛犬

店を出た三人は、ポチのいる広場へと向かった。


ポチが普段どこで何をしているのか、三人は知らないのだが、この時間になると決まって、待っていたかのように広場に現れる。

いつの間にか、ポチはすっかり三人に懐いていた。


広場に着いた。


案の定、ポチが尻尾を大きく振りながら駆け寄ってくる。


「昨日は行けなくてごめん」

リーファはそう言いながら、ポチの頭を撫で、そのまま抱き上げた。


「今日はポチにプレゼントがある」


肩にかけていたポーチから、ゴム製のボールを取り出す。


「とってこい」


軽く放り投げた。


すると、ポチは腕の中から飛び出し、一目散にボールを追いかけていく。


そしてすぐに咥え、リーファの元へと戻ってきた。


『すごい』


思わず、ジェシカとメアリーの声が揃う。


「さすがポチ」


リーファは当然のように言い、再びその頭を撫でた。


その手つきからは優しさが感じられた。


「しばらく、あのまま遊ばせてあげよっか」

ジェシカが言う。


「そうだね〜」

メアリーも頷く。


あまりにも楽しそうなリーファの様子に、水を差す気にはなれなかった。


「じゃあ、私たちはいつも通り模擬決闘しよっか」


ジェシカは剣を抜く。


「やる気満々だね〜」


メアリーもそれに応じるように剣を抜いた。


「じゃあ行くよ」


「じゃあ行くね」


ほぼ同時に、剣が振るわれた。



「いやー、負けた〜」


広場の草むらに寝転びながら、ジェシカが声を上げる。


「今日は私の勝ち〜」


メアリーはどこか誇らしげに言った。


「悔しーい!!」


ジェシカは大げさに手足をばたつかせる。


「ふふ、まだまだ訓練が足りないね〜」


メアリーもふざけて返し、二人は自然と笑い合った。


「それにしても……あれ、どう思う〜?」


メアリーが指さす先。

そこには、まだポチと遊び続けているリーファの姿があった。


「ふふ。よっぽど好きなんだね」


ジェシカがくすりと笑う。


「あのリーファに、こんな一面があるなんてね〜」


メアリーも苦笑する。


三人の中で最も強く、最も落ち着いている。


それが、二人にとってのリーファのイメージだった。


――その彼女が。


今は、犬相手に夢中になっている。


しばらくして、ポチから離れたがらないリーファをなんとか説得し、模擬決闘へと引き戻す。


ジェシカに勝った勢いのまま、メアリーはリーファにも挑むが――


結果は、惜敗だった。


その後、三人はいつも通り帰路につく。


「今日のメアリー、すごく良かった」


帰り道。


ぽつりと、リーファが言った。


「でしょ〜? どうやら私の時代が来たみたいね〜」


軽口で返しながらも、メアリーは内心で驚いていた。


リーファが人を褒めることはほとんどないからだ。


「リーファ、リーファ。わたしは?」

ジェシカが期待に満ちた目で尋ねる。


「普通」


あっさりと返された。


「がーん」


大げさに肩を落とすジェシカ。


そのやり取りに、メアリーは思わず笑みをこぼした。


――そんな穏やかな時間が、静かに流れていった。

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