第6話:実戦Ⅰ(3)
「よく出来ました。コアを失った宇宙神獣は、このように溶けていきます。――あなたたちの勝利です。最初の戦いとしては十分でしょう」
セノ爺の声が、静かに響く。
その言葉を聞き、ジェシカとリーファはようやく肩の力を抜いた。
だがメアリーだけは違った。
手先が小刻みに震えている。剣を握っていた感触だけが、妙に生々しく残っていた。斬ったはずなのに実感が湧いていないようであった。
「では、家へ戻りましょう。三人とも初実戦で疲れているでしょうし」
「メアリー、行くよ」
ジェシカに声をかけられ、三人は来た時と同じように車へ乗り込んだ。
帰りの運転も、当然セノ爺だ。
荒野を走る車内で、エンジン音だけが静かに響いていた。
「どうでしたか? 初めての実戦は」
セノ爺の問いかけに、すぐには誰も答えなかった。
短い沈黙。
やがて、ジェシカが口を開く。
「……思ったより戦えたと思う。もちろん怖さもあったけど」
リーファも、同調するように小さく頷いた。
「わたしは……全然、体が動かなかった……」
一方で、メアリーは苦いものを噛みしめるように言った。
その様子を見て、ジェシカがすぐに言葉を重ねる。
「でもメアリーがちゃんとコアを壊して、トドメを刺したんだよ!」
「動けない敵を斬っただけじゃん……」
俯いたまま、メアリーは続ける。
「わたしより……リーファがメインで剣を振った方がいいよ……」
その言葉には、はっきりとした自己否定が滲んでいた。
「メアリー。気を落としすぎないようにしてください」
セノ爺の声が、割って入る。
「これから慣れていけばいいのです」
「……わかった」
しばらくの沈黙の後、小さくそう呟いた。
話題が途切れたところで、リーファが口を開く。
「ところで、あの蜘蛛みたいなやつが一般的な宇宙神獣?」
「ええ。あの蜘蛛型が最も多いタイプです」
すると、ジェシカは先日読んだ記録を思い出しながら言った。
「他にもいるんだよね」
「もちろんです。宇宙神獣はAからEまでランク分けされています。今回の個体はEランク。最も弱い部類です。他にも、さらに大きい蜘蛛型の個体や、獣型や鳥型も存在します」
「あの個体が、あそこの教会にいるって知ってたの?」
「ええ。昔、あの場所で同じ個体と戦ったことがあります」
「セノ爺、あの教会に行ったことあるの?」
三人の視線が、一斉にセノ爺へ向けられる。
普段は語られないセノ爺の過去。
自然と、食い気味に問いかけていた。
すると、セノ爺は軽く咳払いをして言った。
「この話は長くなります。また今度にしましょう」
あっさりと話を切られ、三人は揃って不満げな顔をした。
その後しばらく、沈黙が続く。
――そして。
「もしかして……人型の宇宙神獣もいる?」
ぽつりと、リーファが言った。
その問いに、セノ爺はわずかに間を置いてから答えた。
「…………いても、不思議ではありませんね」
「……そう」
それ以上、リーファは何も聞かなかった。
はぐらかされると分かっていたからだ。
やがて車は街へと戻り、三人は家へと辿り着いた。
「今日は家事はやらなくていいです。ゆっくり休んでください」
セノ爺の言葉に従い、三人はそれぞれの部屋へと戻っていった。
今日は誰かの部屋に集まることもなく、各々自室へと戻っていった。
――ジェシカ。
(思ったより戦えた……けど)
(あれで最弱レベルなんだよね……)
(ひとりだったら、絶対に勝てない)
(もっと……強くならなきゃ)
――リーファ。
(私も剣で戦いたかった)
(あの程度の敵なら……多分倒せる)
――メアリー。
(全然ダメ……)
(わたしだけ、何もできてない)
(やったのは……ただの死体蹴り)
(こんなんじゃ……全然ダメ……)
――セノ爺。
(ジェシカとリーファは、予想通りの動き)
(メアリーが苦戦するのも想定内……)
一瞬、思考を巡らせる。
(……いや)
(トドメを刺せたことを考えれば、むしろ上出来…)
(やはり――)
(彼女のポテンシャルをもっと引き出す必要がありますね




