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第3話:記録

彼らは突如として我々の星に現れ、そのすべてを奪っていった。

最初に確認されたのは、蜘蛛のような形状をした個体だった。

無論、我々人類も抗った。あらゆる武器と兵器を動員し、徹底的に迎撃した。

その甲斐あってか、当初は互角に渡り合えていた。

しかし、侵攻してきた宇宙神獣はそれだけではなかった。

鳥。鹿。熊。蜂。多種多様な形状を持つ個体が次々と現れたのだ。

その数はあまりにも多すぎた。

やがて我々はなす術もなく押し潰されていった。

そして――

気づけば、この星はすべて奪われていた。

その後、わずかに生き残った人類は彼らについての研究を進めた。

ある者がこう言った。

これは他の動物を蔑ろにし、この惑星を独占してきた我々人類に対する神の憤怒ではないか。

そうして我々は、この存在を「宇宙神獣」と呼ぶようになった。

だが、彼らはそこで止まらなかった。次第に進化を遂げ、やがて動物の枠をも超え、様々な形態へと変化していった。彼らに、人の感情など理解できない。いや、理解する必要すらないのだろう。

ただひたすらに愉悦のままに殺戮を繰り返す。

もはや我々人類の手に負えるものではない。見つからぬよう、隠れて生きるしかないのだ。


「……記録は、ここで途切れてる」

読み終えたジェシカがぽつりと呟いた。

三人は、しばらく何も言えなかった。

言葉を失ったまま、ただ沈黙だけが流れる。

やがて自然とそれぞれの部屋へと戻っていった。

そのまま、静かに床に就く。

――だが。

メアリーだけは、なかなか眠ることができなかった。

先日のセノ爺の言葉が、頭から離れない。

「……」

目を閉じても、思考は止まらないまま――

夜は、ゆっくりと更けていった。


翌日。

ジェシカ、メアリー、リーファの三人はいつも通り街へと向かっていた。

夕飯の買い出しだ。他愛もない会話を交わしながら、手早く買い物を済ませる。

そして模擬決闘をしようと、いつも通り広場へと足を運んだ。

だがそこに広がっていたのは、いつもとどこか違う光景だった。

いや、正確には広場そのものは変わっていない。

見慣れた、いつもの場所。

けれど――

その「いつも通り」の中に、“何か”がいたのだ。


「あれ、なんだろう?」

ジェシカが指をさす。

リーファも目を細める。

「ここからじゃよく見えない」

「そんなに大きくはなさそうだけど〜」

「だね。小型の野良犬とかかな?」

ジェシカがそう言うと、三人は慎重に歩み寄った。

一歩ずつ。

距離を詰めていく。

――そして。

「あっ!やっぱり野良犬だ!!」

そこにいたのは、小さな犬だった。

この街で育った三人にとって、それは“初めて見る存在”だった。

写真や絵本の中でしか知らなかったものだ。

「かわいい〜」

正体が分かった瞬間、三人は一斉に駆け出していた。

年頃の女の子である三人とも、可愛いものには目がないのである。

三人は模擬決闘のことなどすっかり忘れ、夢中で犬とじゃれ合った。

普段戦闘訓練と家事しかやっていない彼女たちにとって、この時間はあまりにも新鮮だった。


「せっかくだから、この子に名前を付けよう!」

「賛成」

「いいと思う〜」

ジェシカの提案に、二人はすぐに頷く。

「じゃあ……ベルとかはどうかな?」

「う〜ん……」

反応はいまひとつだ。

「じゃあ次は私ね〜」

メアリーが一歩前に出る。

「エリザベートなんてどう〜?」

「オシャレ!!」

「……華やかすぎる」

ジェシカは目を輝かせたが、リーファは渋い顔をした。

「じゃあリーファはどんな名前がいいの〜?」

「ポチ……とか……」

『………………』

一瞬の沈黙。

――そして。

「ポチって……そのまますぎるでしょ!」

「リーファ、そういうところだけ抜けてるよね〜」

二人の笑い声が弾ける。

リーファはむっとした表情を浮かべた。

その時。

「ワン」

犬が小さく鳴いた。

そして、すり寄るようにリーファの足元へと近づいていく。

「……」

リーファは一瞬驚いたが、すぐに顔を上げる。

そして、どこか誇らしげに言った。

「この子も……ポチって名前が気に入ったみたい」

『……』

それから三人は、しばらくポチと遊び続けた。


「日が暗くなってきたよ。そろそろ帰らないと」

「だね〜。そろそろ帰るよ〜リーファ〜」

メアリーが声をかける。

リーファは名残惜しそうに、ポチの頭を撫でていた。

「リーファがあんなに目をキラキラさせてるの、初めて見たかも」

ジェシカが、小さく囁く。

「だね〜」

二人は顔を見合わせ、微笑んだ。

その視線の先では、まだ少しだけ名残を惜しむようにリーファがポチを撫でていた。

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