第6話 混ざり子
つたない文章ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しく思います。
三人目を倒した後も感じるざらりとした違和感。
もやもやと滲んだ頭の中の暗い霧が一箇所に集まって塊に変わってゆく。
吼夜は構えをとって闇の中に視線を向けた。
『あそこだ』
ただの暗闇の中からこちらを値踏みするような気配を感じる。しかし、それが溶けるように消えてゆく。
次の瞬間、
来る!!
闇の中から更に深い闇を纏った塊が吼夜へ向かって飛びかかってきた。
その塊は人の形をしていたが、大きく振りかぶった右の腕は毛で覆われ、開いた掌は人のそれよりも倍近く大きく、指の先には鋭く尖った爪が生えていた。
大型の獣の腕であった。
その獣の腕を持つ異形の塊は、一瞬で間合いを詰めると吼夜の首筋を目がけて鋭い爪の腕を振り下ろした。
どん!!
吼夜は瞬時に一歩踏み込み、振り下ろされる腕の付け根に潜り込んで自分の肩を打ち付けた。ぶつかった次の瞬間、打ち付けた肩とは逆手の拳を相手の顎に目がけて下から真っ直ぐと突き上げる。
しゅっ!!
しかし、その拳は空を切る。
吼夜の拳よりも速く、その塊は吼夜の間合いの外へと飛び退いていたのだった。
ぞくりと吼夜の背に寒気が走った。
続けて全身の薄い体毛が逆立ってゆく。
恐怖からではない。
「おもしれぇ」
吼夜は理解した。
「やっぱりな、大当たりだ!おっさんに着いてきたのは間違いじゃなかった!!こんなやつが出向いてくれるなんてな!」
吼夜の躰の中から高揚した気持ちが溢れてくる。
間合いの外で獣の動きが静かに止まる。
「へぇ、今ので殺れないなんて君、すごいね」
右腕以外は人の程をなした獣が、声を発した。
「こっちの拳を躱したやつがよく言うぜ」
拳を構えたまま、吼夜は、そいつの獣の右腕に視線を落とした。
続けて人の部分に視線を流していく。
少し幼さを残した顔つきではあったが、腕以外は普通の青年の姿である。
人の身体に獣の腕、改めて見ても、やはり異質な存在だった。
黒い衣は身につけていない。
「なぁ、、、お前、もしかして混ざり子か?」
吼夜は静かに問いかける。
混ざり子とは、本来は交わるはずのない人と妖の間で、それぞれの血が混ざって生まれた半人半妖のことである。
山奥の小さな村落では神隠しにあった若い女性が、混ざり子を宿して、ふらっと村に帰ってくる。
そのような事象がごく稀にあった。
通常は、相反する血の混ざりに耐えきれず死産となるか、無事に生まれたとしても、望まれない子、忌み子として疎まれて、すぐに捨てられてしまう。
その為、成人まで育つ混ざり子は極めて稀有な存在であった。
異質な獣は答える。
「混ざり子に会うのは初めてかい?まぁ、普通は生まれてもすぐに処分されるしね。こんな腕がついてたら気味が悪いってね」
「そうか?強そうでかっこいいけどな」
吼夜の言葉に嘘はない。
「は?」
予想外の返答に獣は驚きを見せた。
「そいつがお前さんの得物ってわけか、そっちが爪ならこっちは牙を見せてやるよ」
吼夜は、両の腕を上下に広げ、左の腕を腰の位置に落とし、右の腕を額の位置に掲げて構えた。
「下からの突き上げと上からの打ち下ろし。上下の連撃だ。ただし、速いぜぇ」
吼夜の口元に笑みがこぼれる。
「それ、言っちゃっていいの?」
獣が聞き返す。
「おまえの爪だって見えてるだろ?こっちも見せないと不公平だ」
吼夜は、目の前の獣と真っ直ぐに視線を合わせた。
「おかしなやつだな、君は」
「へっ、ありがとよ。行くぞ!!」
「褒めてないんだけどなぁ、、、」
読んでいただきありがとうございます。
少しづつ更新していく予定です。
厳しくても構いませんので、感想をいただけたら嬉しく思います。




