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人斬りダイマ  作者: いえねこ
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第5話 露払い

つたない文章ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しく思います。


吼夜(こうや)は、茂みの中に身を屈め、心を鎮めて気配を探った。


十二時の方向にひとつ

二時の方向にふたつ

ざらついた気配を感じる。


吼夜は正確に相手の気配を探れるわけではない。

対峙した相手の強さを推し量る能力と気配を探る能力は別物だ。

殺気を放っている相手の気配を感じ取ることは得意であったが、そうではない、殺気を隠していたり敵意のない相手に対しては、凡その漠然とした方角を感じ取れる程度であった。


『まずはこっちからだ』

吼夜はふたつのざらついた気配がする方向へ向かった。


吼夜の考え方は単純だ。

相手がどのような連携を取っているかは分からないが、分からないからこそ、初手で数が多い二人の方を先につぶす。

一対ニで分かれている場合、大抵はその中で一番実力のある者が単独行動をとるはずだ。

多人数を相手にすることにも慣れてはいたが、あのダイマとやり合っていた黒い男程の実力者が三人集まってしまうと、それなりに厄介だ。

まずは数で劣る害を取り除く。


『ここで苦戦していたら露払いなんて名乗れないもんな』

そんなことを考えながら吼夜はざらついた気配との距離を詰めていった。

茂みの中を邪魔となる障害物を軽やかにかわしながら、猫科の動物のようなしなやかさで駆け抜けていく。


ほどなくして目視できるほどの視界の奥に二つの黒い人影を見つけた。二つの影は見たことのある黒い衣を纏っていた。


『見つけた!』


駆け抜ける勢いは殺さずにそのままの速度で相手の間合いの外まで距離を詰めると、踏み込んだ右足の虎趾(こし)から先に力を込めて思い切り地面を蹴った。


驚くほどの跳躍でそこから跳び上がり、二つの影の間に割って入る。

着地するよりも先に、素早く頭、胸、腰と順に後ろを振り返るように捻ると、それに追従するように高く上げた右足の踵を振り抜いて片方の影の鼻っ柱に打ち込んだ。


後ろ回し蹴りの型だ。


ぐしゃりと鼻の軟骨が砕けて潰れる音が聞こえた。

鼻を砕かれた影は受け身を取ることもなく仰向けに倒れ込む。


残ったもう片方の影は、目の前で一瞬にして撃沈した片割れの姿に動じるそぶりも見せず、咄嗟に後ろへと飛び退いていた。


ピィィィーーー、、、

影が指笛を鳴らす。


吼夜は飛び退いた影を確認しながら右足をそのまま振り抜いて、影の方向へと踏み込むように着地させる。勢いを殺さぬように右足を軸に躰を回転させると、今度は左足で前回し蹴りを繰り出していた。


みしりっ!


影の右のこめかみに、吼夜の足がみしりとめり込む。吼夜が左足を引くのと同時に、もう片方の影は力無く崩れていった。


「命まではとらねぇ、しばらくそこで寝ててくれ」


僅か二手で二つの影を撃沈すると、吼夜は残ったざらついた気配へと向かった。


『指笛のお陰で探す手間が減りそうだな』


茂みの中を再び進んでいくと、真っ直ぐこちらへ近づいてくる気配を感じた。


『あちらさんも、こっちの気配に気がついたみたいだな』


お互いに目で確認できるほどの間合いまで近づくと、ざらついた気配は固まった異物へと変貌した。

そいつも、やはり黒い衣を纏っている。


吼夜は相手の姿を目で捉え、その場で立ち止まって両の拳を自分の顔の高さで構えた。

今度は奇襲ではない。

受けて立つ構えだ。


ふぅぅ、、、

吼夜が軽く息を吐いて呼吸を整える。


黒衣の得物は刀だった。

走りながら腰に携えた刀の柄に手を当てて、前傾姿勢気味に近づいてくる。


『来るか』

吼夜の思いに反して、黒衣は間合いの一寸先まで近づいたところで急に脚を止めた。探るように吼夜の腰の辺りへと視線を落としながら黒衣が口を開く。


「ダイマじゃないのか?」


吼夜が答える。

「おれはただの露払いさ。おっさんに用があるみたいだけど残念だったな。お前たちとは会いたくないとよ」


「ダイマはどこにいる?」


「教えるわけないだろ!」


「・・・・・」

黒衣が刀を抜いてゆっくりと吼夜の間合いに入ってくる。

吼夜はまだ動かない。


「すぅっ!!」

黒衣は刀を振り上げながら小さく息を吸い込んで、急速に間合いを詰めてきた。


しゅっ!!

吼夜を刀の間合いに捉えると、斜め上から首筋を狙うように刃を振り下ろす。

たとえ腕で首筋を守っても、腕ごと切り捨てる程の力が込められた一撃であった。


吼夜は、その刀の軌道を流れるように静かにかわしていく。

宙を舞う蒲公英の綿毛が、捕まえようと伸ばした手のひらをすり抜けていくように、吼夜の躰は刃をするりとかわしながら、黒衣の背後へまわり込む。そのわずかな瞬間、右腕の拳を横殴り気味に黒衣の脇腹へ打ち込んだ。


どんっ!!

という鈍い音と共に黒衣の体が力なく前のめりに崩れ落ちてゆく。


右と左の蹴りを一つずつ、右の拳を一つ。

それが、吼夜が露払いに使った攻撃の数だった。




ざらり、、、


!?


「まだ終わりじゃねぇ」

吼夜は、無意識に呟くように声を発していた。


読んでいただきありがとうございます。

少しづつ更新していく予定です。

厳しくても構いませんので、感想をいただけたら嬉しく思います。

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