第4話 気配
つたない文章ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しく思います。
「ふふ、あなたの事情は理解しました。しかし困りましたね。私たちも事情があって旅をしているのですよ。厄介ごとも多いですし、初めて会った者を連れて行けるような旅でもないのです」
吼夜の話を聞き終え、カノンは諭すように答えた。
「厄介ごとならおれが露払いしてやるよ!あんた達の事情は聞かないし、自分の食い扶持は自分でなんとかする!だから頼むよ!」
それでもと必死に懇願する吼夜。
「お前は馬鹿か?いきなり現れた素性もわからないやつに、悪いやつではありません連れて行ってくださいと言われて、信じて貰えると思っているのか?それに俺には何の得もない話しだ」
ダイマは視線も合わせず、しごく当たり前に返した。
吼夜は少しの沈黙の後、夜の空を見上げると大きく息を吸い込んでゆっくりと深呼吸をした。
星の輪郭が滲む事なく映し出されたよい夜だ。
顔を下ろし何かを決意したようにダイマの正面に立つと、その目を真っ直ぐに見つめて静かに答えた。
「忘れられないんだ。あのとき見た斬撃、あんな太刀筋を見たのは初めてだ。あれを超えることができれば、おれはもっと強くなる」
静かだが、その瞳の内側には、何度も反芻したあの美しい太刀筋、思い返すたびに溢れ出す高揚、自分よりも強い者に出会った喜び、それら全てが抑えきれないほどに秘められていた。
そういう思いのこもった目であった。
「ほぅ、、、ダイマの太刀筋を"見た"のですか、、、」
会話が途切れ寸刻の静寂が流れる。
三人は何かを確認するようにお互いに目を合わせた。
「近づいてるな」
ダイマは目を閉じて当たりの気配を伺った。
「言っておくが、おれの仲間じゃないぜ」
吼夜も気配を探る。
「三人ですかね。まぁ大方ダイマが斬ったという男の仲間でしょう。それでは、それぞれ一人ずつ相手をするとしましょうか。話しの続きはその後という事で、、、」
カノンの提案を受け、ダイマが初めて吼夜に視線を合わせた。
「、、、小僧、俺の分もおまえが相手しろ。露払いなんだろう?使えるところを見せてみろ」
試すような口振りでダイマは吼夜にそう言った。
「ほぅ、、、」
ダイマの意外な発言に、カノンの口から僅かな驚きが漏れて出る。
「本当か!?おもしれぇ!それじゃあ行ってくるぜ!!」
吼夜は嬉々として、茂みの中へと消えていった。
「やれやれ、私の分までお願いするつもりはなかったのですけど、行ってしまいましたね。それに、あの青年には後で謝らないといけませんね」
言葉とは裏腹にカノンの顔に悪びれた様子はまったくない。
「もう一人いるんだろ?三人ではなく四人だ」
「ふふ、あなたも意地が悪いですね」
「おまえといるおかげでな。あいつが気付かなかったもう一人の相手もさせて試すつもりだったんだろ?」
「さあ、どうでしょうか?それよりもいいのですか?あの青年できますよ」
カノンは少し楽しそうだ。
「だろうな」
「ふふ、あなたが他人に興味を示すとは珍しいこともあるものですね」
「、、、あの小僧、"見た"と言いやがった」
「ええ、言いましたね」
「今まで俺の太刀筋が見えたやつなんて、おまえくらいなものさ」
「私は見えなかったから"切られた"のですよ」
カノンの口角が僅かに上がる。
「ふん、よく言う、、、それにあいつが追ってくる気配には気づいていた。俺は撒いてやるつもりでここまで来たんだ。それなりに本気でな」
「ほぅ、、、何にしてもあなたが他人に興味を持つのは良いことです。私の"事情"にも関わってきますしね。まぁあなたの事です。大方途中からワザと後をつけさせることにしたのでしょう?」
「さあな」
ダイマはそれ以上、何も言わなかった。
読んでいただきありがとうございます。
少しづつ更新していく予定です。
厳しくても構いませんので、感想をいただけたら嬉しく思います。




