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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第95話 時間稼ぎ

【前回までのあらすじ】


神の像に祈りを捧げるアルス。しかし、加護を得られないことが判明する。

そのとき、背後からフレイが現れ、アルスとジルに迫る。

とっさに機転をきかせ、ジルがその場に残ることになった。

アルスがリンを連れてくるまでの間の、時間稼ぎをするために――。

「ジル! ジルーーー!! 」


 アルスは背後に首を回して叫び続けた。


「戻ってよエスペル! ジルが残ったままなんだ!  助けにいかないと! 」


 しかしエスペルは主人(ギルア)以外の命令は聞かないように(しつ)けられているのか、アルスの言葉には一切(いっさい)耳をかそうとしなかった。


「……ううう……。ジル……」


◇◇


 やがてアルスはギルアのもとに戻ってきた。

 ミーミルはずいぶん歩みを進めていて、街まであと少しというところだった。


「おおーい!  大丈夫でしたか? 無事、加護は受けられましたか? 」


 ギルアは期待に胸を膨らませてアルスの方へ駆け寄ってきたが、アルスの表情が暗いことに気づいた。


「……どうか、されましたか? 」


「……女神の加護は、受けられなかった。僕じゃなかったんだ。……リンなんだ 」


「えっ! リンさんなんですか!? 」


「それで、一旦戻ろうとした矢先に、“闇の使者”が現れて……。

ジルが、僕だけをここに戻したんだ。

ジルが1人で残って“闇の使者”と対峙(たいじ)してる! 早く助けにいかないと! 」


「……そんな! “闇の使者”が!

こちらが無防備なのをいいことに、のこのこと姿を表すなんて卑怯(ひきょう)(きわ)まりないやつですね。

……わかりました。アルスさんは、リンさんのもとへ急いでください。

リンさんは、カストルと一緒のはずですから、おそらく宮殿の北側の砂漠にいるでしょう。

アルスさんが戻るまで、僕がジルさんを助けにいきます 」


「ありがとうギルア! 君は本当に頼もしいね! ……僕もすぐに戻るよ!

あの“闇の使者”がどんな手を使ってくるのかよくわからないけども、厄介なやつだというのは事実だよ!

だからギルア、どうか君も無事でいてくれ! 」


 アルスは、リンとカストルたちが避難している、北の砂漠へ向けて街の中に消えていった。


「……なるほど。厄介なやつだそうですね。 エスペル、行きますよ! 」


 ギルアも、ジルのいる場所へ急ぐことにした。

 エスペルはギルアを抱いて、再びジルの待つオアシス中心部へ向かった。

 その間、対策を練ることにした。


(“闇の使者”を倒せば、あの巨人は倒れるだろうか?

……いや、巨人の体内に独立した核が存在する限り、それは不可能だろう。

それに、巨人の本体が酸性化した時点で、こちらから攻撃のしようがない。

手を出せば出すほど、こちらの被害が拡大してしまうだけだ。

やはりアルスさんの言うように、リンさんが新しい加護を受けることで倒せるのでしょう。

ならば……僕ができることといえば……。

ジルさんを確実に助け出し、なおかつ“闇の使者”に致命傷(ちめいしょう)を負わせる、ですね! )



 やがてオアシスの中心部にやってきた。

 弓をかまえるジルと、ナイフをかまえる“闇の使者”の姿が見える。

 ジルの足元にナイフが刺さっていたり、“闇の使者”のローブに矢が刺さっていたりしている。


「ジルさんが危ないですね! 」


 ギルアは銀でできた小さな笛を首もとから取り出した。


「この笛に魔力を込めて吹くと、エスペルにしか聞こえない高周波(こうしゅうは)の音がでます。

エスペルがこれを聞くと、我を忘れて戦いに没頭(ぼっとう)します。

これでジルさんを助けてくれれば……」


 ギルアはエスペルを見上げた。エスペルも覚悟したようにうなずいてみせた。


「エスペル、“闇の使者”を攻撃し、ジルさんを守ってください! 」


 ギルアは銀色の笛を吹いた。すーっと息が抜けていくような音がした。

 直後、エスペルは腕をだらんと地上に向け、ギルアを砂漠に落とした。


「いてっ!  ……ああ、下が柔らかい砂で助かった…… 」


 ギルアは急いで身を起こした。

 エスペルの姿が見えない。いや、すでに“闇の使者”に飛びかかっていた。

「ギヤアアアアア!!!!」と叫び、鋭い鉤爪(かぎづめ)で攻撃を繰り出していた。


 フレイは意表(いひょう)をつかれたようだったが、とっさに攻撃をかわした。


「くっ……。今度は魔導師(まどうし)ですか……!? いつの間に来たのでしょう!? 」


 さすが“闇の使者”というべきか、どこか戦闘(せんとう)慣れしている(ふし)を感じさせ、すぐに体勢を立て直し、次の攻撃に備えた。

 しかし笛の音で “戦闘狂(せんとうきょう)”と化したエスペルは止まらない。間髪いれずフレイに攻撃を繰り出していった。

 フレイもナイフで応戦(おうせん)するが、エスペルの勢いに押されている状態だった。

 フレイとエスペルが戦っている間に、ギルアはジルに歩み寄った。


「ジルさん! 大丈夫ですか? 」


「……ギルアさん! どうしてここに? 」


 ジルは“闇の使者”の攻撃を受けてか、顔や腕にかすり傷をつけていた。

 幸い命に別状(べつじょう)はないようだった。


「アルスさんから話は聞きました。ジルさんが“闇の使者”と対峙(たいじ)していると。

アルスさんは急いでリンさんの元に行かれました。

代わりに僕はジルさんを助けにきました 」


「ありがとう! 1人じゃ不安だったから、来てくれて嬉しいわ!

アルスが戻るまで、なんとか時間稼ぎをしないと……! 」


「今はエスペルの攻撃が“闇の使者”を押しているようです。

応戦すればこちらが有利になるはずです」


「そうね! 私も戦うわ。いつまでも守ってもらってばかりじゃいられない。

私もやれるだけのことはするつもりよ! 」


 ジルも矢を構えて、エスペルをサポートするために移動した。

 ギルアも笛を片手に、様子を伺うことにした。少し息が乱れてきている。


(このまま“闇の使者”を圧倒できればいいのですが、しょせん我々は“光の使者”ではありません。

僕の魔力が(つい)えれば、エスペルも無力化してしまいます。

あとどれだけ持つかわかりません。ここまで長時間戦ったのも初めてです。

アルスさんが来るまでの時間稼ぎにしかなりませんが、それでも、命をかけて繋がなければ、すべてが無駄になってしまう……!)


◇◇


 一方アルスは街の中を走っていた。


「早く、リンのところへ……!  リンを連れてオアシスに行けば、みんなが救われるんだ……! 」


 街の人たちはみんな避難できているらしく、街全体が閑散としていた。

 その時、背後でミーミルの咆哮(ほうこう)と共に、核が赤く光った。


「え……? 」


 思わず振り返ると、ミーミルの体からオアシス中を包み込むように、1本、2本、3本……何十本ものおびただしい手が伸びていくのが見えた。

 まるで体がアメーバのように軟体化(なんたいか)し、街全体をドーム状に覆おうとしているかのようだ。

 徐々(じょじょ)に巨人としての体の面影(おもかげ)がなくなりつつある。


「……今度は何をするつもりだ!? 」


 早くも街の周囲が取り囲まれ始めている。

 ミーミルと接触した部分が酸で溶かされて、シュー、と湯気(ゆげ)をあげながらドロドロ溶かされていく。


「まずいぞ。この国全体を取り囲んで、()()()()()()つもりだ!

このままじゃ避難してる人たちも危ない! 」


 さらに上からボタボタボタッと酸性の液が(したた)り落ちて、周囲の家や道がジュウウウウ……と溶かされていく。


「時間がない……! 急がないと! 」


 やがてアルスの周りにも液が上からボタボタと落ちてきて、道に黒い穴が開けられ始めた。

 王宮のすぐそばまで来ており、砂漠まであと少しというところだった。

 街の出口付近は特に酸の侵食(しんしょく)が激しく、砂漠への道も溶かされて通れなくなっているようだった。


「……こうなったら仕方ない。強引に道を開けさせてもらうよ! 」


 アルスは杖を握りしめた。


 「”アイオールの守り“! 」


 風を杖の先端にとどめ、杖を振ると同時に一気に前方へ放出(ほうしゅつ)させた。

 酸が風で(けず)りとられ、まっすぐに道が開けた。


「よし、今のうち、……に……っ!? 」


 アルスは膝から崩れ落ちた。残っていた力を皆使い切ってしまったようだ。

 全身から力が抜け、目の前が(かす)み、周りの音さえも聞こえなくなってしまった。

 目の前の光景がスローモーションで動いているのを、遠くから傍観(ぼうかん)しているような気分だった。


(え……、 そんな……っ! あと少しだっていうのに……!!

ギルアとジルが頑張って繋いでくれたのに……。

リンにもまだ会えてないのに……。

新しい加護も得られないまま……。この国も救えないまま……。

ここで終わってしまうのか……!? )


 激しい悔恨(かいこん)が何度も何度もこだまする。

 しかし体も動かず、意識も朦朧(もうろう)とし、目の前が真っ暗になり、あらゆる外部の情報がシャットアウトされた。

 襲いかかるのは、底知れぬ後悔と恐怖と絶望――。


(これじゃあ、あの時と一緒じゃないか……。カストルと2人で北の遺跡に行って……。

王に杖を奪われて……。仲間もみんな離れ離れになって……。

僕は、全然強くない……。“光の使者”に選ばれたくせに、全然強くない。

むしろ“光の使者”失格なんじゃないか……。どうすれば、強くなれるんだろう……? )

 

 風で切り開いた道も、再び酸で埋もれてしまった。

 道はもちろんのこと、王宮自体も溶かされ始めている。

 上空から酸の塊がアルスの上に落下する――。

 


【お願い 守って!】



 突然アルスの周囲にバリアが張られ、酸がバシィンとはじかれた。


(え……? )


 意識が朦朧(もうろう)とする中、アルスはどこかに安心感を覚えた。

 誰かがすぐそばに駆け寄ってきてくれたようだ。

 アルスの手を取り、何かを言っている感覚がする。

 

 しばらくして、だんだん手に温もりが戻り、声も聞こえ、視界も見えるようになった。


「う……ん……? 」


「アルス君……! 気がついた? 」


「……え……? ……その声は、リン……? 」


 目の前には、花嫁姿のリンがいた。両膝をつき、両手でアルスの手を取り、必死に治癒(ちゆ)をしてくれていたらしい。

 周囲はバリアが張られており、酸に(おか)される心配もない。

 

「リン……。目が、覚めたんだね…… 」


 アルスは安堵(あんど)から、自然と涙が込み上げてきた。

 リンは申し訳なさそうな表情をしつつも、アルスの無事に心からホッとしたようだった。


「アルス君、長い間1人で戦わせてごめんなさい! 私も一緒に戦うわ! 」



 ついにリンと再会できたアルス。果たして戦いの行方はどうなるのか―― !?


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