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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第93話 リンの目覚め

【前回までのあらすじ】


ギルアとエスペルの相性は、一族史上と言っても過言ではないほど最悪だった。 

鷲と共に生きる一族として生まれたギルアは、6歳の誕生日と共にパートナーの鷲が現れるのを心待ちにしていた。

しかし一向に現れる気配がなく、まもなく日付が変わろうとしていた。

突然窓を突き破って現れたのは、気の強いメスの鷲。

ギルアは早速名前をつけ、翌日から修行に励む。

しかし鷲は言うことを聞かず、修行にも身が入らない。

そんな折、祖父は鷲を人の姿に変えさせて、ギルアを驚かせる。


昔のことを思い返していたギルアは、ミーミルに攻撃を加えるのだった。


『ぐおおおおおお!』



「また、聞こえた。咆哮(ほうこう)だ」


 カストルは街の外の砂漠からミーミルの咆哮(ほうこう)を聞いていた。

 隣には兵長と兵たちがいて、目を覚さないリンを介抱(かいほう)している。

 砂漠には国中の人たちが全員避難しており、オアシスの方を心配そうに凝視していた。

 カストルたちは、街の人たちから離れた場所に集まっていた。 


(アルスとジルは大丈夫だろうか……。

ギルアも自信満々に加勢(かせい)に行ってしまったけど、心配だなあ……。

僕も行きたいけども、リンを残して行くことはできないし……)


「兵長、僕、様子を見てくるよ」


「カストル様、お気持ちはよくわかりますが、お一人での行動は危険です。

カストル様が行かれるのでしたら、私も同行します」


「いやいや、兵長はここでリンの様子をみていてよ」


「そうは行きません。これは陛下からの命令なのです。

アルス様もリン様ももちろん大切ですが、カストル様の身に何かが起これば、陛下が黙っておられませんから」


「そうかもしれないけど……」



「う、う……ん……」


 そのとき、リンがゆっくり目を覚ました。


「……リン!? 」


 カストルと兵長はリンの顔を(のぞ)き込んだ。

 リンは何度かまばたきをしたあと、パッチリとカストルと目があった。


「カストル、君……? 」


「リン……! 良かった! 無事だったんだね! 」


 カストルは思わず涙があふれてきた。


「カストル君、どうして泣いてるの……?

それに、お顔が真っ黒だけど、何かあったの? 」


 リンは体を起こすと、周りを見渡した。

 夜空が広がる砂漠に、大勢の人が密集しており、街の方を心配そうに見つめている。

 そして、自身が綺麗な衣装を(まと)っていることにも気づいた。


「これは……一体どういう状況なの?

私……たしか、王様の部屋に入ってしまって……。

カストル君、兵長さん! 一体何があったの? 」


「リン……。今までに起こったことを、手短に話すよ。

信じられないかもしれないけど、全部本当のことなんだ」


 カストルは、今までに起きたことを順に話した。

 リンとジルが王と結婚するように仕向けられたこと。

 アルスが王に杖を奪われ、地下牢に閉じ込められたこと。

 兵長たちもこの国の真実を突き止めようとした矢先、地下牢に入れられたこと。

 隊長に助けを求めにいくと、隊長も捕まってしまったこと。

 ジルがみんなを助けるために1人で頑張ってくれていたこと。

 ようやくみんなが集まった頃、リンと王の結婚式が開かれたこと。

 突然“闇の使者”が巨人と一緒に現れたこと。

 みんなを砂漠に避難させ、アルスとジルが足止めに向かっていること。


「え……。うそ……。うそ……。“闇の使者”が? アルス君とジルが……? 」


 リンは混乱している様子だった。

 無理もない。眠っている間に予想だにしなかった出来事が立て続けに起こっていたのだから。

 リンは勢いよく立ち上がった。


「私、行かなきゃ! アルス君を助けにいかなきゃ! 」


「僕もいくよ! 」


「お待ちください! カストル様、リン様!! 」


 リンとカストルは兵長の静止を振り切り、オアシスの方へ駆けて行った。


「アルス君……。お願い……。どうか、どうか無事でいて……! 」



ーーーーーーーーーー


 一方オアシスにて。


 人の姿になったエスペルは、鋭い歯を見せて嬉しそうに笑うと、ミーミルに飛びかかっていった。

 エスペルは両手のするどい鉤爪(かぎづめ)で何度も何度も動けないミーミルの体を(えぐ)った。

 鉤爪(かぎづめ)が刺さるたびにドバッと体液のように水が吹き出し、ミーミルの悲鳴がこだまするのだった。


 一切の迷いのない攻撃に、アルスは驚くと同時に、少し恐怖を感じていた。

 

(あの鷲……。白鷲(しろわし)様と似たような姿をしてるけど、ちょっと違うみたいだ。

白鷲(しろわし)様もずいぶん強かったけども、どちらかというとシナト様を守るような戦い方をしていた。

でも、ギルアの鷲は容赦(ようしゃ)がないというか、残酷(ざんこく)な部分もあるというか……)


「アルスさん、もうじき核を取り出せそうです!  ……準備はいいですか? 」


「え、……う、うん! 」


 アルスは声をかけられて一瞬ドキッとした。


(ギルアは協力的だし、僕よりも強いのは間違いない。

だけど、彼の言う通りに従っても大丈夫なんだろうか? )

 

 アルスはとまどいながらも、杖を構えた。


(でも、ここまで来れたんだ。核を壊せば、巨人を倒せるんだ)


◇◇


「……まずいですねえ」


 遠くから一連(いちれん)の様子を見ていたフレイは、(あご)に手をあてながら思わずつぶやいた。


「あの少年……誰かと思って見ていたら、魔導師(まどうし)ではありませんか!

鷲を連れているのは……おそらくNo.8のアルドールでしょう。

なぜ高位の魔導師(まどうし)がこんなところに……?

もしかして、わたくしたちの計画が、バレてしまったのでしょうか……?


しかし、魔導師(まどうし)が“光の使者”に協力しているのだとしたら、陛下が黙っていませんよ。

……どのみちここで“光の使者”ともども殺しておいた方が良さそうですね。

330号には、最後の一仕事をしてもらいましょう」


 フレイは、ミーミルに向けて注射針を放った。

 赤い液の入った注射針が、ミーミルの首元にささり、体内に注入されていく。

 ミーミルの体がドクン、と脈打つ……。そして。

 

『ぐぬおおおおおおおお!!!! 』


 一際(ひときわ)大きな咆哮(ほうこう)を放つと、体外に流れた水を全て吸収し、むくむくと起き上がった。

 全身から湯気のようなものが立ち(のぼ)っている。


「まだそんな力があったのか!? エスペル、核を【(えぐ)り出せ】! 」


 エスペルは鉤爪(かぎづめ)でミーミルの体内を突き刺した。


 ジュワアアッッ……


 ミーミルに触れた部分が湯気(ゆげ)を上げながら溶け出した。

 

「何……!?  鋼鉄(こうてつ)鉤爪(かぎづめ)が……!?

エスペル、下がれ……! 」


 エスペルはギルアのそばに戻ってきた。ギルアはすかさずエスペルの手を確認した。

 鉤爪(かぎづめ)は溶かされて先端が(ただ)れている。

 

「まさか……。酸で溶かされたのか !?

あの巨人、おそらくさっきの注射針で性質が変わったんですね……。

つまり今は、全身が酸の塊ということですね……! 」


 ミーミルは何事もなかったかのように一歩、また一歩と歩き出した。

 歩いたあとの地面は酸で焼かれ、真っ黒に焦げていた。


「これでは迂闊(うかつ)に手出しはできませんね。触れた途端(とたん)に溶かされてしまいます。

しかし、あのまま街に行かせてはいけない。何か手立てはないものか……」


「手立て……。そうだ! 」


 アルスはハッと思い出したことがあった。


「何か策があるの? 」


 ジルが目を輝かせながら聞いた。


「……王が言ってたんだ。10年前、北にある神殿の神の像をオアシスに投げ入れたって。

大地の女神、イレニア様の像を! 」


「それ、本当!?  ……よくもそんな罰当たりなことができるわね、あの王様……。

だけど、そのイレニア様の像に祈れば、新しい力を得られるかもしれないわね……! 」


「……なるほど、そういうことですか!

ならば、アルスさん、エスペルにつかまってください。

今の姿なら空を飛ぶことはできませんが、跳躍力(ちょうやくりょく)が発達しているので、すぐにその場所にお連れできるはずです! 」


 アルスとジルはエスペルの両腕に抱き抱えられるような体勢になった。

 見た目よりも筋肉が発達しており、ガッシリ挟まれていて安定感がある。


「それじゃあエスペル、よろしく頼むよ」


「シシシシシシシ!! 」


 エスペルは嬉しそうに笑うと、大きく跳躍(ちょうやく)した。

 一度のジャンプで10mほどまであがり、数十メートル先まで着地することができるそうだ。

 

「うわあああああ! 」

「きゃあああああ! 」


 「……あ。そうそう。エスペルは飛び跳ねるのが心地よいみたいで、つい調子に乗ってしまうんです……。

ですのでしっかり捕まっていてくださいね……。って、もう聞こえませんよね……? 」


 アルスたちの姿は、早くも小さくなっていた。


◇◇


 何度かジャンプを繰り返したあと、オアシスの中央付近にたどり着いた。

 このあたりはすり鉢状になっており、オアシスで一番深い場所のようだった。

 その中心に、白い像のようなものが転がっているのが見えた。

 長い間オアシスの底に沈んでいたからか、水の浸食(しんしょく)で割れていたり、角が丸く削られたりして、ほとんど原型を留めていなかった。


「間違いない……。これが大地の女神イレニア様の像だ…… 」


 アルスとジルはエスペルから解放されると、ふらふらした足取りで像に近づいた。

 エスペルジャンプの旅はなかなかの乗り心地で、空に近くなったと思ったとたん、地面に急降下するのだ。

 思い出しただけでも心臓がヒヤッとするので、なるべく考えないようにした。


「アルス、早速祈ってみて」

 

「うん!! 」


 アルスは深呼吸をしてから杖を(かか)げ、祈りをささげた。

 杖が呼応するように光ると、続いて声が響いてきた。


〈私は大地の女神イレニアの精。あなたは新しい杖の持ち主ですか? 〉


「はい、アルスといいます」


〈エルディシアの最後の王子、アルスですね。よくここまでやってきました。

あなたにイレニアの加護を与えたいところですが……。

残念ながら、この加護を受けるのはあなたではありません〉


「……ええっ!? ……ど、どういうことですか? 」



――――加護を、受けられない……!? 果たしてアルスたちの運命やいかに……!?

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