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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第91話 攻撃形態《アタッケ・フォルマ》

【前回までのあらすじ】


王宮の陰謀により離れ離れになっていたアルスたちは、ようやく合流することができた。

1人でミーミルを倒しにいくと意気込むアルスに対し、カストルは自分を頼ってほしいと伝える。

そこでアルスとジルがオアシスへ向かい、カストルは街の人たちを避難させることに。

オアシスでミーミルに攻撃を加えるアルスとジルだったが、攻撃は全く当たらない。

打つ手なしで途方に暮れていたときに、ギルアが現れるのだった。

「遅くなってすみません、アルスさん、ジルさん。……大丈夫でしたか?

街の人たちは全員砂漠に避難させました!

ここからは、僕も加勢(かせい)させてもらいますよ! 」


 ギルアはにこやかに言った。

 腕に留まるエスペルは羽を大きく広げたりたたんだりしている。

 改めて見ると大きな鷲だ。羽だけでギルアの顔がすっぽり隠れてしまう。

 アルスはこの状況をうまく把握できなかった。


「え……。ギルア?  …… え、なんでここに? 」


「なんでって……アルスさんに協力するためですよ 」


 ギルアはさも当然とでも言うように自信満々に答えた。


「……協力? ……いやいやいや、何言ってるんだ!

危ないから早く逃げるんだ! あの巨人は、攻撃が全く当たらないんだ! 」


「……なるほど。攻撃が当たらないんですね。

ならば尚更(なおさら)、あなたを助けてあげたくなるってもんです! 」


 ギルアは2人の前に立った。


「え、ちょっと……何する気? 」


「……エスペル。行きましょう! 修行の成果を見せる時が来ましたよ! 」


「ピィ! 」


 エスペルはバッと飛び立つと、ミーミルに向かって、ものすごい速さで突っ込んでいった。


「危ない! すぐに戻るんだ! 」


「大丈夫です。僕とエスペルは小さいときからずっと一緒なんですから。

ちょっとやそっとじゃ負けませんよ」


「いや、そうかもしれないけど……! 」


(何なんだこの人は……。危ないっていってるのに…… )

 

「まずは動きを止めましょう。

水同士が接合(せつごう)する前に完全に断ち切ってやればいいだけのこと。

左から右へ……【切り裂け】! 」


 エスペルはミーミルの足首あたりを左から右に飛び抜けた。

 瞬間、鋭いナイフで切り込みをいれたように足元がズバッと切り裂かれ、水がバシャーっとその場に散らばった。

 ミーミルは足元からズシィン、と崩れ落ちた。

 

「ぐおおおおおお! 」


 ミーミルの咆哮(ほうこう)が響き渡る。

 アルスは目の前で起きていることが信じられなかった。

 さっきまで攻撃が全く通用しなかった巨人が、地面に倒れたのだ。

 ミーミルは腕を支えにして体勢を戻そうとしている。すぐに足の部分がボコボコと再生しかけている。


「立ち上がらせるものか! 両腕を、両足を、体中を……【切断せよ】! 」


 エスペルはミーミルの両腕、両足、首、胴体を切るように飛んだ。

 両翼(りょうよく)(くちばし)(はがね)のように硬くなっているようだ。

 水でできたミーミルをいとも簡単に分断してしまった。


「ぐおおおおおお! 」


 ミーミルは体中の水が流れ出て、末端(まったん)から形を保てなくなり、水に戻りつつあった。

 明らかに再生速度が遅くなっている。それでも核は体内にとどまっているようだった。


「今だ!  動きが(にぶ)っている。 核を……【突き刺せ】! 」


 エスペルは核があるであろう、左胸に突撃していった。

 ミーミルは余っている力で核のある胴体部分を瞬時にそらし、直撃を避けた。

 エスペルはそのままの勢いで左肩を(えぐ)り取った。

 

「外しましたか……。でも次でしとめますよ! 」


「ピィ! 」


 エスペルは空高く舞った。ミーミルの様子を俯瞰(ふかん)しているようだ。

 次に攻撃すべき場所を的確に(とら)えようとしている。

 アルスはここで、思っていたことを口に出した。


「……ギルア……。君は一体、何者なんだ……? 」


 ギルアはアルスに振り向き、申し訳なさそうに言った。


「アルスさん……。すみませんが、今はその質問にお答えすることはできません。

でも、一つ言えるとしたら、僕はあなたに協力するために、ここに来たんです。それは事実です」


「協力……? どうして、僕に協力してくれるの? 」


「あとで、必ずお教えしましょう。まずはこの巨人を倒してからです」


 ギルアは再び前を向いた。

 一方のアルスは、ますます謎が深まるばかりだった。


(わからない……。ハヤブサ大会で1位を取ったこの少年が、どうして協力してくれるのか……。

それに、全く攻撃がきかなかった巨人を、いとも簡単に倒そうとしている……。

本当に彼は何者なんだろう……? )


「エスペルが空から見るかぎりですが、ずいぶん細かく分断したので、再生に時間がかかっているようですね。

よほど放っておかないかぎり、立ち上がることも不可能でしょう。

今のうちに核を(えぐ)り出し、破壊すれば、巨人を倒せるはずです。


……アルスさん、体力を温存していてくださいね。

この巨人の核は“闇の使者”が作り出したもの。

おそらくあなたにしか破壊できない代物(しろもの)ですから。

僕があの核を引っ張り出しますので、アルスさんはそこを狙って攻撃してくださいね」


「え!? ……う、うん……」


(……驚いた。瞬時に状況を把握し、最善と思われる手段を読み取っている。

僕とそこまで変わらない年齢だというのに……。

やっぱりこの少年、何者なんだ……!? )


「エスペル! 一気に畳みかけますよ! 【攻撃形態(アタッケ・フォルマ)】! 」


 空を飛ぶエスペルの体が光に包まれた。

 身長がグングンのび、2mほどの“人”の姿に変身した。

 細くも鍛えられた肉体で、腕や腹部には黒い羽が薄く生えている。

 両手にはするどい鉤爪(かぎづめ)のついたグローブをはめている。

 顔は長い前髪(くちばしのように前方に反っており、顔をスッポリ覆っている)で全く見えない。


 その姿はまるで、ガルトデウスの姫巫女を守る白鷲(しろわし)と非常に酷似(こくじ)していた。


「え……? 白鷲(しろわし)、様……? 」


 エスペルはギルアの隣に降り立った。

 さっきまで腕に留まっていた鷲が、ギルアよりも大きな姿で堂々と立っている。

 メスの鷲だからだろうか、白鷲(しろわし)様よりも髪が長いようだ。


「ギルア、その鷲、一体……!? 」


 ギルアは振り返り、にこやかに話した。


「やはり驚かせてしまいましたね。

見た目は怖いですけど、とっても頼もしいんですよ。

アルスさんたちには決して襲いかかりませんので、安心してください 」



 ギルアは、ふと昔のことを思い出した。

 ――それは、修行をしていた時の頃。初めて祖父の鷲が“人”に変身したのを見た時だった。



ーーーーーーーーーー



「う、うわああああ! 」


 幼いギルアは驚いて地面に尻餅(しりもち)をついた。

 祖父は嬉しそうに微笑んでいた。


「驚いたか? 鷲が人間になって? 」

 

 祖父の横に、長身の黒い女性が立っている。

 ギルアを見下ろすようにして、にやりと笑っているのが、尚更(なおさら)怖かった。

 取って食われるのではないかと本気で思ったものだ。


「大丈夫だ。おまえを襲ったりはせん。見た目はこうだが、案外優しいんじゃよ」


「お、おじいさまは……、こ、怖くないの?」


「何も怖くないわい。この威厳(いげん)に満ちた姿こそが、“神鷲(ヴェルグ)族”の誇りじゃからな」


「じゃあ、僕のエスペルも、修行を積めばこの姿になるの? 」


 ギルアは頭上を旋回(せんかい)する鷲を指差して言った。

 

「もちろんじゃ。同じ一族じゃからのう」


「ひいいいい〜」


 

 ギルアとエスペルの相性は、おそらく一族史上と言っても過言ではないほど


 ――()()だった。



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