第91話 攻撃形態《アタッケ・フォルマ》
【前回までのあらすじ】
王宮の陰謀により離れ離れになっていたアルスたちは、ようやく合流することができた。
1人でミーミルを倒しにいくと意気込むアルスに対し、カストルは自分を頼ってほしいと伝える。
そこでアルスとジルがオアシスへ向かい、カストルは街の人たちを避難させることに。
オアシスでミーミルに攻撃を加えるアルスとジルだったが、攻撃は全く当たらない。
打つ手なしで途方に暮れていたときに、ギルアが現れるのだった。
「遅くなってすみません、アルスさん、ジルさん。……大丈夫でしたか?
街の人たちは全員砂漠に避難させました!
ここからは、僕も加勢させてもらいますよ! 」
ギルアはにこやかに言った。
腕に留まるエスペルは羽を大きく広げたりたたんだりしている。
改めて見ると大きな鷲だ。羽だけでギルアの顔がすっぽり隠れてしまう。
アルスはこの状況をうまく把握できなかった。
「え……。ギルア? …… え、なんでここに? 」
「なんでって……アルスさんに協力するためですよ 」
ギルアはさも当然とでも言うように自信満々に答えた。
「……協力? ……いやいやいや、何言ってるんだ!
危ないから早く逃げるんだ! あの巨人は、攻撃が全く当たらないんだ! 」
「……なるほど。攻撃が当たらないんですね。
ならば尚更、あなたを助けてあげたくなるってもんです! 」
ギルアは2人の前に立った。
「え、ちょっと……何する気? 」
「……エスペル。行きましょう! 修行の成果を見せる時が来ましたよ! 」
「ピィ! 」
エスペルはバッと飛び立つと、ミーミルに向かって、ものすごい速さで突っ込んでいった。
「危ない! すぐに戻るんだ! 」
「大丈夫です。僕とエスペルは小さいときからずっと一緒なんですから。
ちょっとやそっとじゃ負けませんよ」
「いや、そうかもしれないけど……! 」
(何なんだこの人は……。危ないっていってるのに…… )
「まずは動きを止めましょう。
水同士が接合する前に完全に断ち切ってやればいいだけのこと。
左から右へ……【切り裂け】! 」
エスペルはミーミルの足首あたりを左から右に飛び抜けた。
瞬間、鋭いナイフで切り込みをいれたように足元がズバッと切り裂かれ、水がバシャーっとその場に散らばった。
ミーミルは足元からズシィン、と崩れ落ちた。
「ぐおおおおおお! 」
ミーミルの咆哮が響き渡る。
アルスは目の前で起きていることが信じられなかった。
さっきまで攻撃が全く通用しなかった巨人が、地面に倒れたのだ。
ミーミルは腕を支えにして体勢を戻そうとしている。すぐに足の部分がボコボコと再生しかけている。
「立ち上がらせるものか! 両腕を、両足を、体中を……【切断せよ】! 」
エスペルはミーミルの両腕、両足、首、胴体を切るように飛んだ。
両翼と嘴が鋼のように硬くなっているようだ。
水でできたミーミルをいとも簡単に分断してしまった。
「ぐおおおおおお! 」
ミーミルは体中の水が流れ出て、末端から形を保てなくなり、水に戻りつつあった。
明らかに再生速度が遅くなっている。それでも核は体内にとどまっているようだった。
「今だ! 動きが鈍っている。 核を……【突き刺せ】! 」
エスペルは核があるであろう、左胸に突撃していった。
ミーミルは余っている力で核のある胴体部分を瞬時にそらし、直撃を避けた。
エスペルはそのままの勢いで左肩を抉り取った。
「外しましたか……。でも次でしとめますよ! 」
「ピィ! 」
エスペルは空高く舞った。ミーミルの様子を俯瞰しているようだ。
次に攻撃すべき場所を的確に捉えようとしている。
アルスはここで、思っていたことを口に出した。
「……ギルア……。君は一体、何者なんだ……? 」
ギルアはアルスに振り向き、申し訳なさそうに言った。
「アルスさん……。すみませんが、今はその質問にお答えすることはできません。
でも、一つ言えるとしたら、僕はあなたに協力するために、ここに来たんです。それは事実です」
「協力……? どうして、僕に協力してくれるの? 」
「あとで、必ずお教えしましょう。まずはこの巨人を倒してからです」
ギルアは再び前を向いた。
一方のアルスは、ますます謎が深まるばかりだった。
(わからない……。ハヤブサ大会で1位を取ったこの少年が、どうして協力してくれるのか……。
それに、全く攻撃がきかなかった巨人を、いとも簡単に倒そうとしている……。
本当に彼は何者なんだろう……? )
「エスペルが空から見るかぎりですが、ずいぶん細かく分断したので、再生に時間がかかっているようですね。
よほど放っておかないかぎり、立ち上がることも不可能でしょう。
今のうちに核を抉り出し、破壊すれば、巨人を倒せるはずです。
……アルスさん、体力を温存していてくださいね。
この巨人の核は“闇の使者”が作り出したもの。
おそらくあなたにしか破壊できない代物ですから。
僕があの核を引っ張り出しますので、アルスさんはそこを狙って攻撃してくださいね」
「え!? ……う、うん……」
(……驚いた。瞬時に状況を把握し、最善と思われる手段を読み取っている。
僕とそこまで変わらない年齢だというのに……。
やっぱりこの少年、何者なんだ……!? )
「エスペル! 一気に畳みかけますよ! 【攻撃形態】! 」
空を飛ぶエスペルの体が光に包まれた。
身長がグングンのび、2mほどの“人”の姿に変身した。
細くも鍛えられた肉体で、腕や腹部には黒い羽が薄く生えている。
両手にはするどい鉤爪のついたグローブをはめている。
顔は長い前髪(くちばしのように前方に反っており、顔をスッポリ覆っている)で全く見えない。
その姿はまるで、ガルトデウスの姫巫女を守る白鷲と非常に酷似していた。
「え……? 白鷲、様……? 」
エスペルはギルアの隣に降り立った。
さっきまで腕に留まっていた鷲が、ギルアよりも大きな姿で堂々と立っている。
メスの鷲だからだろうか、白鷲様よりも髪が長いようだ。
「ギルア、その鷲、一体……!? 」
ギルアは振り返り、にこやかに話した。
「やはり驚かせてしまいましたね。
見た目は怖いですけど、とっても頼もしいんですよ。
アルスさんたちには決して襲いかかりませんので、安心してください 」
ギルアは、ふと昔のことを思い出した。
――それは、修行をしていた時の頃。初めて祖父の鷲が“人”に変身したのを見た時だった。
ーーーーーーーーーー
「う、うわああああ! 」
幼いギルアは驚いて地面に尻餅をついた。
祖父は嬉しそうに微笑んでいた。
「驚いたか? 鷲が人間になって? 」
祖父の横に、長身の黒い女性が立っている。
ギルアを見下ろすようにして、にやりと笑っているのが、尚更怖かった。
取って食われるのではないかと本気で思ったものだ。
「大丈夫だ。おまえを襲ったりはせん。見た目はこうだが、案外優しいんじゃよ」
「お、おじいさまは……、こ、怖くないの?」
「何も怖くないわい。この威厳に満ちた姿こそが、“神鷲族”の誇りじゃからな」
「じゃあ、僕のエスペルも、修行を積めばこの姿になるの? 」
ギルアは頭上を旋回する鷲を指差して言った。
「もちろんじゃ。同じ一族じゃからのう」
「ひいいいい〜」
ギルアとエスペルの相性は、おそらく一族史上と言っても過言ではないほど
――最悪だった。
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