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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第83話 思わぬ再会

【前回までのあらすじ】


牢から脱出したアルスとジルは、隣の牢から話しかけられる。

その人は、ジャラーハの弟・サラーハの妻、パームだった。

パームはこの国の歴史と夫が行方不明になったことを語る。

話をきいたジルはパームの地下牢の鍵を預け、

アルスと共に地上へ上がるのだった。

 地下牢の入り口に向かう間に、パームからきいた話を思い返していたアルスとジルは、ようやくまともに話せるようになった。


「これで謎がすべて解けたわ。

パームさんが教えてくれたこの国の歴史……。

これが全ての答えだったんだわ」


「まだ信じられないけど、僕の杖が奪われたのも、王と賊が繋がっていたからなんだ。

早くリンを助けにいかないと。……それと、杖も取り戻さないと」


「そうね。もうすぐ結婚式が始まってしまうわ」


◇◇


 入り口の近くに差し掛かったとき、ふと階段を降りてくる足音が聞こえた。

 誰かが地下牢に入ってきたようだ。


「! ……誰か来たみたいだ」


 アルスが短剣を構え、小声で言った。


「私がいくわ。アルスはここにいて」


「でも……」


「大丈夫。私には弓があるもの。……すぐに戻ってくるわ」


 ジルは弓を構え、小走りに入口のそばに身を隠した。

 姿を現したのは、地上に配属されている衛兵だ。新しい囚人を連れて降りてきたようだ。

 ジルは間髪いれず矢を放った。


「……ぐあっ!? 」


 矢は兵の腕に刺さった。意表を突かれた兵は階段を転げ落ち、うつ伏せに動かなくなった。

 毒が回り、思うように動けないようだった。


「ジル! 」


 アルスが心配して駆け寄ってきた。

 同じタイミングで、衛兵の後ろにいた囚人が階段を降りきった。

 2人の目の前にいたのは……。


「これはこれは……驚いたわい」


 ガベリー隊長だった。


「隊長さん……!? どうして地下牢に!? 」


「いやあ……おまえさんたちこそ、どうしてここに?

さっきラオンダールの坊主が助けを求めにきてな」


「……カストルだわ! よかった……。 隊長さんに会えたのね」


「ちょうど陛下から出立(しゅったつ)の命令がきたんでな。

坊主の話をきいて、おまえたちも連れて出発すれば、簡単にここを出られると思ってな。

陛下に許可をもらうためにここまで来てみたんだが……。

このとおり、捕まってしまったわけだ」


「まあ、そうでしたか……。

私たちを助けようとして、捕まってしまわれたんですね。

隊長さんを頼るように指示したのは、私なんです。全部、私の責任だわ……」


 ジルは自責(じせき)の念にかられ、申し訳なさそうに言った。

 対して隊長は、ジルの心配を吹き飛ばすように、ガハハハと豪快(ごうかい)に笑った。


「でも、まさかここでおまえさんたちに会えるとはなあ!

2人とも無事で何よりだ!助けてくれてありがとうよ。

おまえさん、もう具合は大丈夫なのかい?」


 隊長はジルに向かって言った。


「はい、おかげさまで! 」


「そうか、それはよかった」


 ジルに笑顔が戻り、アルスもホッと胸を撫で下ろした。

 

「……それにしても、陛下の様子がどうも変じゃったなあ……」


 ガベリーが神妙(しんみょう)(おも)持ちで言った。


「変って……? 」


「どこで手に入れたのか、金色の杖をずーっと握りしめておった。

あんな代物(しろもの)は初めて見たわい。一体どこで手に入れたのやら……。

取り巻きの女たちも、不気味がって距離をおいてるようだった。


例の話を切り出したら、『あいつらはもうここにはいない』『おまえもこの国のやつだからわかるだろ』と取り合ってもらえなくてな。


しばらく(ねば)ってたら、『俺様に逆らうのか! 見損なったぞガベリー! お前は牢で大人しく反省してろ!』ってな。そのあと兵たちに取り押さえられて、このざまだ。


あれはまるで……何かに取り()かれてるようじゃった。

顔色も(すぐ)れず、昨日よりもだいぶ()せこけてるな……」


「……そう、でしたか……」


 なるべく平静を装って聞いているジルの隣で、アルスは相当ショックを受けた。

 隊長が捕まってしまったことももちろんだが、杖が王の手に握られていること、そして王の様子がおかしくなっていることに、自分の責任があるような気がしてならなかった。


 ジルは、今度はアルスが自分を責めているのではないかと心配になり、気が気でなかった。

 と、そこへ背後から声がかかった。


「隊長さん……。ガベリー隊長さん、ですよね? 」


 声の主は、牢を出たばかりのパームだった。


「私です……。サラーハの妻の、パームです」


「おおお! パーム夫人……。どうしてあなたがここに? 」


「……え、お知り合いですか? 」


 ジルは思わず聞いた。


「ああ。サラーハ様が、貧しいわしたちに、よく手を差し伸べてくれてな。

わしが今もこうして旅を続けていられるのも、サラーハ様のおかげなんじゃよ。

ラクダが病気だとわかるとすぐ医者を呼んでくださったり、出立(しゅったつ)前にこっそり王宮を抜け出して、足りないものはないかと食料や水を持ってきてくださったり……」


「まあ、そうだったのですね!」


「そのご縁もあって、路地に住むことになった私たちを、ガベリーさんはこっそり支えてくださっていたんです。

売れ残りだ、といいながら食料や衣類などをたくさん持ってきてくださるんです。

今回、旅をされているうちに私たちは捕まってしまいましたので……。

もう、会えないかと思っていました」


「パーム夫人こそ、ご無事でなによりです。

昨日戻ったところなんですが、親族が捕まったと仲間から聞きまして……。

家を訪ねると誰もいませんでしたので、心配していたところです」


 パームとガベリーは手を取り合い、お互いの無事を励まし合った。


「ガベリーさんのことなら、私たちにお任せください」


 パームは勇気に(あふ)れた目でアルスたちを見つめた。

 その目に迷いはなく、安心して任せられると確信した。


「わかりました。よろしくお願いします」


 アルスとジルは地下牢の扉を開けて、上に向かった。


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