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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第80話 ギルアの目的

【前回までのあらすじ】


カストルはギルアに接触を試みるが、警戒されてなかなか思うように話ができない。

しかしギルアが遺跡で奪われたはずの“通行料”を手にしていたことから、

とんとんと話が進み、ギルアが“光の使者”を探していることを知るのだった。



「そう、味方です! だから安心してください!

ついでに、その剣も下ろしてもらえると、ありがたいんだけど……」


「あ、ああ、ごめん!……そ、それで? 」


 カストルは剣を(あわ)てて戻し、ギルアに続きを(うなが)した。


「僕は、訳あって “光の使者” を探してるんです。僕の他にも、仲間が5人いるんですけどね。

“光の使者” は宝石の数と同じ6人いるはずだから、6人それぞれが各地に分かれて、 “光の使者” を探すことにしたんです。

僕はここダルウィンで探すことになったので、せめて手がかりだけでも得られたら、って思ってたんです」


「そ、そうなんだ……。仲間と分担して “光の使者” を探してるんだね。

でも、そこまでして探す理由はなんなの? 」


「申し訳ないけど、今は詳しくは言えません……。

簡単にいうと、“光の使者” の手助けがしたいんです」


「……て、手助け?」


「はい。僕たちにできることがあれば、協力したいと思ってるんです」


「へえ……。よくわからないけど、友好的なのはわかったよ」


「わかってもらえるだけでも嬉しいです。

それでカストル、君は一体何者なんですか? さっき“聖地巡礼(せいちじゅんれい)”がどうとか…… 」


「僕自身は、さっきも言った通りただの一般人だよ。

“光の使者” と一緒に、宝石を探す旅をしてる途中なんだ」


「ああ、やっぱり! “光の使者” かその側近の人なんじゃないかと思ってました。

やったぁー!ついに巡り会えたんだ!」


 ギルアはカストルの両手を取ると、ガッチリ握手し、何度も何度も腕を振った。

 鷲のエスペルは床に避難すると、迷惑そうにその様子を見つめていた。


「そ、そんなに嬉しいかい……? 」


「当たり前じゃないですか!

この広い世界にたった6人しかいなくて、見つかるかどうかもわからない人なんですから!

それで、一緒にいる“光の使者” はどんな人ですか?」


 ギルアは目をキラキラさせながらカストルに迫った。

 カストルはやや気圧(けお)されながらも、アルスたちのことを話した。


「今一緒にいるのは、2人なんだ。

1人目はアルス。僕より1つ年下で、ダイヤモンドの杖を持ってる。

2人目はリン。トパーズのペンダントを持っていて、歌がすごくうまいんだ……」


「すごい! 2人もいるんですね。

……で、そのアルスさんとリンさんはどこにいるんですか?

ぜひお会いしたいんですけど!! 」


「…………」


 ここでカストルは現実を思い出し、(うつむ)いて暗い顔をした。


「? ……どうかしましたか? 」


「アルスとリンは、今大変なことになってるんだ」


「えっ!? ……それはどういうことですか? 」


 カストルはここに来るまでの経緯をこと細かに説明した。


「…………そんなわけで、僕たちはハメられたのさ。王宮の陰謀(いんぼう)にね。

今無事なのは、僕と仲間のジルだけ。ジルは王宮で、アルスたちを助けようとしてくれてる。

僕も命を狙われているみたいだから、お世話になったキャラバン隊の隊長に助けを求めにきたんだ」


「……なるほど、ここはその隊長さんの家だったんですね。ようやく全てがつながりました。

それにしてもなんてひどい話なんでしょう!

アルスさんが捕まって、リンさんは無理やり結婚させられるなんて。

僕にできることがあれば、ぜひ力になりたいんですが! 」


 ギルアは胸に手を当て、ズズイッとカストルに迫った。


「さあ、僕にできることは何ですか? 」


「それが……。君の鷲も王に狙われてるみたいなんだよ」


「え……僕の鷲も? 」


 エスペルがピクッと反応した。


「王は欲深い人間だから、何でも手に入れないと気が済まないみたいなんだ。

ハヤブサ大会で優勝した、ものすごく立派な鷲……。欲しくて欲しくて仕方ないんだろう。

そして、君の命も危ないかもしれないんだ。鷲を手に入れられたら、君は不要になるだろうから……」


「そんな……」


 ギルアはカストルの話をにわかには信じられなかったが、カストルの沈み込んだ様子を見るに、真実なのだろうと悟った。

 まさか “光の使者” ご一行ともあろう人たちだけでなく、自分自身にも危機が迫っていたなんて――。

 何も言えずにいると、カストルが絞り出すように言った。


「だから君も、どこかに隠れた方がいい。……そうだ、ここに(かくま)ってもらうといいよ。

隊長が戻ってきたら、僕からお願いしてみるから」


「……カストルは、このあとどうするんですか? 」


「隊長が、これからダルウィンを出て行商に向かうみたいなんだ。

隊長の提案で、僕たちも同行する形で、この国から脱出する予定なんだ。

今、隊長が同行の許可を得るために、王宮に行ってる。僕は隊長の帰りを待っているんだ。

あとはみんなでうまいこと合流できればいいんだけど……」


「そうなんですね。

……わかりました。僕もここで一緒に待ちますよ」


「それにしても……。隊長、遅いなあ」


 カストルは窓から外の様子を(うかが)った。陽が沈み、空が暗くなりかけている。

 路地は灯りも乏しく、文字通り真っ暗闇だった。

 カストルは一抹(いちまつ)の不安を覚えた。


「もしかしたら、隊長に何かあったのかもしれない……。

ちょっと様子を見てくるよ」


 剣を手に取り、出ていこうとするカストルを、ギルアは引き留めた。


「それなら、僕が見てきます!

カストルは見つかると危ないので、ここにいてください 」


「でも……。ギルアも危ないんだよ?

いつ鷲を奪われるかもしれないし、君自身の命だって……」


「それなら大丈夫です。僕とエスペルはちょっとやそっとじゃ負けませんから。

……すぐ、戻りますね」


「え、ちょ、ちょっとギルア……!? 」


 ギルアはカストルの話を最後まで聞かずに、家を飛び出していった。


「だ、大丈夫かなほんとに……」



 そのすぐあと、ギルアと入れ違いになる形でビーゴが家を訪ねてきた。


「隊長! いますか!? 」


「え。ビーゴ!? 」


「う、うわっ! ……なんだカストルか。なんで君が隊長の家にいるんだよ? 」


 ビーゴは不機嫌そうな顔をしていた。


「ちょっと訳がありまして……。ビーゴこそどうしたの? 」


「カストル、隊長知らない? 出発の準備ができたのに、もう長いこと戻ってきてなくてさ」


「隊長なら、王宮に行ったけど? 」


「え、王宮に? なんで? 」


「僕らも旅に同行させてもらうことになったんだ。その許可を得るためだよ」


「……そうなのか? そんなことより、カストルも探すの手伝ってくれよ。

もうすぐ祭りが始まるから、通りに人が増えてきてるんだよ。

そうなりゃ出発するのも難しくなるからさ。早く来てよ! 」


 ビーゴは慌ただしく戻っていった。

 カストルは(あご)に手を当て、うーん……と思案(しあん)した。


「祭り……。通りに人が増えてる、ねえ……。

今なら人混みに(まぎ)れて、王宮の方にいけるかもしれないな」


 カストルもビーゴに続いて、路地の家を後にした。

 表の通りからは、祭りの始まりを告げる(にぎ)やかな音楽が流れてきていた。


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