第80話 ギルアの目的
【前回までのあらすじ】
カストルはギルアに接触を試みるが、警戒されてなかなか思うように話ができない。
しかしギルアが遺跡で奪われたはずの“通行料”を手にしていたことから、
とんとんと話が進み、ギルアが“光の使者”を探していることを知るのだった。
「そう、味方です! だから安心してください!
ついでに、その剣も下ろしてもらえると、ありがたいんだけど……」
「あ、ああ、ごめん!……そ、それで? 」
カストルは剣を慌てて戻し、ギルアに続きを促した。
「僕は、訳あって “光の使者” を探してるんです。僕の他にも、仲間が5人いるんですけどね。
“光の使者” は宝石の数と同じ6人いるはずだから、6人それぞれが各地に分かれて、 “光の使者” を探すことにしたんです。
僕はここダルウィンで探すことになったので、せめて手がかりだけでも得られたら、って思ってたんです」
「そ、そうなんだ……。仲間と分担して “光の使者” を探してるんだね。
でも、そこまでして探す理由はなんなの? 」
「申し訳ないけど、今は詳しくは言えません……。
簡単にいうと、“光の使者” の手助けがしたいんです」
「……て、手助け?」
「はい。僕たちにできることがあれば、協力したいと思ってるんです」
「へえ……。よくわからないけど、友好的なのはわかったよ」
「わかってもらえるだけでも嬉しいです。
それでカストル、君は一体何者なんですか? さっき“聖地巡礼”がどうとか…… 」
「僕自身は、さっきも言った通りただの一般人だよ。
“光の使者” と一緒に、宝石を探す旅をしてる途中なんだ」
「ああ、やっぱり! “光の使者” かその側近の人なんじゃないかと思ってました。
やったぁー!ついに巡り会えたんだ!」
ギルアはカストルの両手を取ると、ガッチリ握手し、何度も何度も腕を振った。
鷲のエスペルは床に避難すると、迷惑そうにその様子を見つめていた。
「そ、そんなに嬉しいかい……? 」
「当たり前じゃないですか!
この広い世界にたった6人しかいなくて、見つかるかどうかもわからない人なんですから!
それで、一緒にいる“光の使者” はどんな人ですか?」
ギルアは目をキラキラさせながらカストルに迫った。
カストルはやや気圧されながらも、アルスたちのことを話した。
「今一緒にいるのは、2人なんだ。
1人目はアルス。僕より1つ年下で、ダイヤモンドの杖を持ってる。
2人目はリン。トパーズのペンダントを持っていて、歌がすごくうまいんだ……」
「すごい! 2人もいるんですね。
……で、そのアルスさんとリンさんはどこにいるんですか?
ぜひお会いしたいんですけど!! 」
「…………」
ここでカストルは現実を思い出し、俯いて暗い顔をした。
「? ……どうかしましたか? 」
「アルスとリンは、今大変なことになってるんだ」
「えっ!? ……それはどういうことですか? 」
カストルはここに来るまでの経緯をこと細かに説明した。
「…………そんなわけで、僕たちはハメられたのさ。王宮の陰謀にね。
今無事なのは、僕と仲間のジルだけ。ジルは王宮で、アルスたちを助けようとしてくれてる。
僕も命を狙われているみたいだから、お世話になったキャラバン隊の隊長に助けを求めにきたんだ」
「……なるほど、ここはその隊長さんの家だったんですね。ようやく全てがつながりました。
それにしてもなんてひどい話なんでしょう!
アルスさんが捕まって、リンさんは無理やり結婚させられるなんて。
僕にできることがあれば、ぜひ力になりたいんですが! 」
ギルアは胸に手を当て、ズズイッとカストルに迫った。
「さあ、僕にできることは何ですか? 」
「それが……。君の鷲も王に狙われてるみたいなんだよ」
「え……僕の鷲も? 」
エスペルがピクッと反応した。
「王は欲深い人間だから、何でも手に入れないと気が済まないみたいなんだ。
ハヤブサ大会で優勝した、ものすごく立派な鷲……。欲しくて欲しくて仕方ないんだろう。
そして、君の命も危ないかもしれないんだ。鷲を手に入れられたら、君は不要になるだろうから……」
「そんな……」
ギルアはカストルの話をにわかには信じられなかったが、カストルの沈み込んだ様子を見るに、真実なのだろうと悟った。
まさか “光の使者” ご一行ともあろう人たちだけでなく、自分自身にも危機が迫っていたなんて――。
何も言えずにいると、カストルが絞り出すように言った。
「だから君も、どこかに隠れた方がいい。……そうだ、ここに匿ってもらうといいよ。
隊長が戻ってきたら、僕からお願いしてみるから」
「……カストルは、このあとどうするんですか? 」
「隊長が、これからダルウィンを出て行商に向かうみたいなんだ。
隊長の提案で、僕たちも同行する形で、この国から脱出する予定なんだ。
今、隊長が同行の許可を得るために、王宮に行ってる。僕は隊長の帰りを待っているんだ。
あとはみんなでうまいこと合流できればいいんだけど……」
「そうなんですね。
……わかりました。僕もここで一緒に待ちますよ」
「それにしても……。隊長、遅いなあ」
カストルは窓から外の様子を窺った。陽が沈み、空が暗くなりかけている。
路地は灯りも乏しく、文字通り真っ暗闇だった。
カストルは一抹の不安を覚えた。
「もしかしたら、隊長に何かあったのかもしれない……。
ちょっと様子を見てくるよ」
剣を手に取り、出ていこうとするカストルを、ギルアは引き留めた。
「それなら、僕が見てきます!
カストルは見つかると危ないので、ここにいてください 」
「でも……。ギルアも危ないんだよ?
いつ鷲を奪われるかもしれないし、君自身の命だって……」
「それなら大丈夫です。僕とエスペルはちょっとやそっとじゃ負けませんから。
……すぐ、戻りますね」
「え、ちょ、ちょっとギルア……!? 」
ギルアはカストルの話を最後まで聞かずに、家を飛び出していった。
「だ、大丈夫かなほんとに……」
そのすぐあと、ギルアと入れ違いになる形でビーゴが家を訪ねてきた。
「隊長! いますか!? 」
「え。ビーゴ!? 」
「う、うわっ! ……なんだカストルか。なんで君が隊長の家にいるんだよ? 」
ビーゴは不機嫌そうな顔をしていた。
「ちょっと訳がありまして……。ビーゴこそどうしたの? 」
「カストル、隊長知らない? 出発の準備ができたのに、もう長いこと戻ってきてなくてさ」
「隊長なら、王宮に行ったけど? 」
「え、王宮に? なんで? 」
「僕らも旅に同行させてもらうことになったんだ。その許可を得るためだよ」
「……そうなのか? そんなことより、カストルも探すの手伝ってくれよ。
もうすぐ祭りが始まるから、通りに人が増えてきてるんだよ。
そうなりゃ出発するのも難しくなるからさ。早く来てよ! 」
ビーゴは慌ただしく戻っていった。
カストルは顎に手を当て、うーん……と思案した。
「祭り……。通りに人が増えてる、ねえ……。
今なら人混みに紛れて、王宮の方にいけるかもしれないな」
カストルもビーゴに続いて、路地の家を後にした。
表の通りからは、祭りの始まりを告げる賑やかな音楽が流れてきていた。
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