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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第74話 真実

【前回までのあらすじ】


アルスは地下の医務室に運ばれる。そこで待ち構えていたのは、ジャラーハだった。

アルスは遺跡へ神の像を探しに行ったあと賊に囲まれたことを告げるが、

ジャラーハは至って冷静に聞いているだけだった。

その後兵が部屋に押し寄せ、なぜか床に押さえつけられるアルス。

そして大切な杖を奪われてしまうのだった。

「ハア〜。もう1時間が経つけど、大丈夫かな〜? 」

 

 部屋で待機していたカストルは、アルスがなかなか戻ってこないのでさすがに心配になってきた。


「もしかしたら、医者の手には負えないほど、かなり重症だったんじゃ……?

あああああ……やっぱりあのとき、無理にでもついていくべきだったよなあ……。

兵長もどこかに行ってるし、こんなとき1人じゃ心細すぎるよ……」


 カストルは不安のあまり部屋をウロウロ歩き回ったり、足音が聞こえたと思って扉を開けたりした。

 しかし、通路を行き来する兵や従者がほとんどで、その度に落胆(らくたん)してため息をついた。


「そうだ、リンとジルに会いに行こう! 」

 

 カストルは思い立ったが吉日(きちじつ)とばかりに、早速隣の部屋をノックした。

 ……返事はない。


「入ってもいいかなあ? ……入りますよー?失礼しまーす。リンさーん、ジルさーん? 」


 扉をカチャ、と細く開けると、甘ったるい匂いが鼻をついてきた。


「うっ!?……なんだこの匂い……? リン、ジル!! 大丈夫か!? 」


 扉を思い切り開けて中に入ると、ジルが不自然な体勢でベッドに倒れていた。


「ジル!? ……リンは?……侍女もいない……。

ていうかそれよりも、窓開けないと、……死ぬ!! 」


 カストルは向かいの窓を全開にし、空気を入れ替えた。心地よい風が入り込んでくる。


「ジル、ジル、大丈夫!? 気分がよくないの? 何があったの!? 」


 カストルがジルの肩を何度も揺さぶる。


◇◇


 ――その頃ジルはというと、夢を見ていた。


 ゆらゆらと暖かい空間の中を(ただよ)っていた。

 安心感とやすらぎのようなものに包まれて、体調が悪いのも遠い昔の話のような感覚だった。


 どこからか、女性の声がこだまする……。


〈私の 大切な 娘…… 〉


 ジルはあたりを見回すが、どこにも姿が見られない。

 まるで頭の中に直接響いてくるかのような、不思議な感覚だった。


〈目を 覚まして…… 〉


 目の前に神々(こうごう)しい光に包まれた女性が現れた。

 (なめ)らかな絹のドレスを(まと)い、慈愛(じあい)に満ちた微笑(ほほえ)みをたたえている。


「……あなたは?」


 ジルはこの女性に懐かしさを感じた。まるでどこかで会ったことがあるような気がした。


〈私の 娘よ……。危険が 迫って います……。

すぐに 目を 覚ますの です…… 〉


「……娘? あなたはどなた? 危険……って……?

教えてください、一体何が起きるというのですか? 」


〈さあ、早く。でないと、取り返しのつかないことになってしまう…….。

あなたに、光の加護がありますように……〉


◇◇


 ジルはハッと目を覚ました。


「ジル!! 良かった、目が覚めた! 」


 目の前に、心配そうに(のぞ)き込むカストルがいた。


「カ……カストル? どうしてここに? 私ったら、一体……? 」


「ベッドの上で倒れてたんだよ。……リンは? 侍女の人は、いないの? 」


 ジルはゆっくりと深呼吸し、意識を失う前にナツメから聞いた話を思い返した。


「そうだわ!……カストル。アルスと2人で、北の遺跡に行っていたのよね?

ナツメさんが、あそこは危険な場所だと言っていたわ。

……どうして2人だけで行ったりしたの? 」


 ジルは心配するあまり、ついきつい口調になってしまった。

 しかし、カストルは気にすることなく、不安げに思い返しながら話し出した。


「……それが、兵長たちについてきてもらおうと思ったんだけど、どこにもいなくて。

遺跡はすぐ近くだし、何かあったらすぐ戻ってくればいいやって思って……」


 カストルは遺跡に神の像がなかったこと、賊に囲まれたこと、アルスの杖の力で逃げてこれたことを話した。


「でも、アルスの負担がひどかったから、急いで王宮に戻ってきたんだ。

そしたら、従者の人に医者にみてもらおう、って言われて。衛兵たちに担がれて地下の医務室に連れてかれたんだ。

僕は部屋で待ってろって。……でも、1時間経っても戻ってこないんだ。

さすがに心配になってきたんだけど、どうすることもできなくて……。

それでこの部屋に来たんだよ」


「……そういうことだったの。ひとまず、あなたたちが無事でよかったわ。

カストル、私からも1つ……。

リンがね、侍女のココさんと王宮を散策していた途中で、陛下の部屋に入ってしまって、戻ってこないそうなの。

さっきココさんが、1人で泣きながら戻ってきたのよ」


「えっ、リンが?

……でも、リンが勝手に部屋の中に入ったりするかな? それも陛下の部屋に…… 」


「私もそう思ったんだけど、よくわからなくて。

それと、途中で声が聞こえたの。〈ここは危ない〉って。……今も聞こえるわ」


「え?……声? 」


 カストルは左右に首をふりながら音を拾おうと試みたが、残念ながら何も聞こえてこなかった。


「……何も聞こえないけど? 」


「え、聞こえない? ……待って。何か言っているわ……」


 ジルは耳をそば立たせた。カストルは静かに(半信半疑ながら)その様子を見守っていた。


「…………そんな!? ……うそ。……なんてこと!! 」


 突如ジルが叫んだ。


「え、ど、どうしたの?ジル……?」


 ジルは不思議な声が話していることを、カストルに伝えた。


 今晩リンの結婚式が執り行われること。

 ジルもいずれは王と結ばれる予定だということ。

 カストルたちは殺されるかもしれないこと。

 兵たちは奴隷にされること。

 ハヤブサ大会で優勝した鷲が奪われること。


 どれもジルが意識を失ってしまったあとに、ナツメたちが話していたことだという。


「そそそそ……それ、本当に言ってる? 」


 カストルは真っ青になって言葉が出てこなかった。


「リンとジルが結婚? 僕たちは殺される? ……一体どういうこと?

どうしてそんなことになってるんだ?

僕たちは旅の途中でここに立ち寄ってるだけだろう? 」


「私もわからないわ。どうしてこんなことになっているのか……。

でも、確かに言えることは……。

私たちは陛下に……。いえ、王宮の人たち全員に、ハメられてしまったのよ。

兵長さんたちも、きっとどこかで捕まってしまったのかもしれないわ。

アルスは……? 医務室に連れてかれたアルスは、大丈夫かしら? 」


 カストルの顔から血の気がサアーとひいていく。


「嫌だー! わけがわからない!こんなとこで死にたくない!

なんでこんな目に合わないといけないんだー! 」


 カストルは頭を抱えながらパニックに(おちい)っていた。

 ジルはうろたえるカストルを脇目(わきめ)に、そそくさとベッドから出ると、荷物をまとめ始めた。

 薬などを入れたバッグを背負い、ガルトデウスでお礼に貰った弓矢を(たずさ)えた。

 つまり、いつでも出ていける体制だった。


「今動けるのはあなたと私だけ。できることをやりましょう!

リンとアルス、そして兵長を探し出すのよ! ……この王宮の人間は、誰も信用できないわ。

カストル、無理を言って悪いけども、あなたは今ここにいると危険すぎる。いつ命を狙われるかもわからないわ。

街に行って……。そうだ、隊長さんなら何かご存知じゃないかしら? 」


「隊長……って、キャラバン隊の? 」


「そうよ。王宮の隣にラクダ小屋があるでしょう。そこで隊長さんやビーゴさんたちに、会えないかしら?

もしくはそこにいる誰かから、居場所を聞けるといいんだけど。

ひとまず、王宮から離れるほうがあなたの身のためだわ」


「えー! そんなの嫌だよ……。僕、あの隊長苦手なんだもん……」


 ブツブツと文句を垂れるカストルに、ジルはピシャリと(かつ)を入れた。


「そんなこと言ってる状況じゃないでしょう!

今ここでできることといえば、味方を頼ることだと思うの。

長年陛下とも関わりのある隊長さんなら、きっと何か事情をご存知だと思うわ。


それと、ハヤブサ大会で優勝した人にも会えるなら、危険を伝えてあげて。

被害は最小限に食い止めないと、その人にも何が待ち受けてるかわからないわ! 」


 ジルの気迫に圧倒されて、カストルは思わず背筋が伸びた。


「……わ、わかった!僕、行ってくるよ! ジルは? ……ジルは、どうするの? 」


「私は、陛下と結婚させられるみたいだから、まず命は狙われないはず。

だから、私は王宮内でリンやアルスたちを探し出すわ」


「でも、ナツメさんたちもいるんでしょ? ……危険すぎない? 」


「……不思議な声が、こう言っているの。

〈王宮のあちこちに私の仲間がいるから、その声に従えば見つからない。安全な道を案内する〉、って」


「ええ……!? 大丈夫なの、それ? 」


 カストルはまだその“声”とやらの存在を信じられなかった。

 ジルがその“声”に従った先で、予期せぬ出来事に巻き込まれるのではないか、と思う節もあったのだ。


「私は大丈夫! ここに来るまでみんなに心配かけたから、ここから挽回(ばんかい)しないとね! 」


「その気持ちはわかるけども……。

……わかった。わかったよ。くれぐれも無理はしないでね。

それに、まだ病み上がりなんだし……」


「ありがとう。カストルも、気をつけてね。

……待って! 正面から出ると捕まってしまうかもしれないわ。

声が言ってるの……。誰も使っていない通路があるみたい。

そこからなら、誰にも見つからずにラクダ小屋へ行けるみたいよ」


 ジルは通路のある場所を続けて伝えた。

 カストルは、まさか自分もその“声”に導かれるとは思いもしなかったので、一瞬たじろいだ。

 しかし、状況が状況だ。一刻も早く行動するに越したことはない。

 ジルの言うことを信じて進むしかないのだ。


「…… ありがとう!じゃ、またあとで」


 2人はそれぞれの目的を遂行(すいこう)するため、互いの無事を祈りながら部屋を出た。

 カストルは隊長を探しに。ジルはアルスたちを探しに。



 ――果たして、王宮の陰謀(いんぼう)から仲間を守り切ることはできるのか……?


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