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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第71話 思わぬ陰謀

【前回までのあらすじ】


リンは侍女のココと2人で王宮を散策していた。

お互いのことを話しあい、短時間で親しい間柄になった2人。

いよいよ最後の場所だということで入った部屋は、なんとジャラーハの部屋だった。

部屋を出ていく隙もないまま話がどんどん進み、なんと結婚するという展開に。

そしてリンは意識を失ってしまうのだった。

 時を同じくして――。


 部屋で安静にしていたジルは、何やら胸騒ぎを覚えて目を覚ました。

 汗をかいていたようで、すぐ横に控えていた侍女のナツメが布で拭き取ってくれた。


「大丈夫ですか? ずいぶんうなされていたようですが」


 時刻は昼すぎだろうか。窓から明るい日差しが降り注いでいる。

 朝食の後から随分(ずいぶん)長い間眠っていたようだ。

 上半身を起こして部屋を見渡した。体調が良くなったのか、体が軽い。

 リンに声をかけようとしたが、リンとココの姿が見当たらなかった。

 

「……あれ、リンは? 」


「リン様は、ココと王宮を散策しに行かれました」


「そう…… 」


 ジルはナツメに手渡されたコップの水を飲んだ。少し気分が落ち着いたが、なぜかすっきりしない。


「あの、隣の部屋に、兵長と男の子が2人いると思うんです。

すいませんが、呼んできてもらえないでしょうか。

体調が良くなったことを伝えたいんです」


 アルスたちには一番心配と迷惑をかけてしまったので、少しでも安心させたい思いでいっぱいだった。

 それと、彼らの明るい声が聞きたかった。声を聞くと何故か安心するのだ。

 そういう思いでいたが、ナツメの口からは予想外の返事が返ってきた。


「残念ながら、皆さん出かけておられます。

兵長さんはわかりませんが、アルス様とカストル様は、つい先ほど北の遺跡へ向かわれたようです」


「え、そうなんですか? ……北の遺跡って? 」


「ええ。神様の像の場所を尋ねられたので、北の遺跡にあるとお伝えしました。

神様の像が何のことかよくわかりませんでしたが、おそらく遺跡のことだと思いまして。

あそこは昔、立派な神殿がありましたから。

……しかし、今は危険な場所です。“気味悪がって誰も行かない”、と釘を刺しましたが。

あそこは賊たちが拠点にしているので、無事戻ってこれるかどうか、命の保証(ほしょう)がありません…… 」


「えっ! そんな危険な場所に、2人だけで行ったの? 」


(2人だけで行くなんて、いくらなんでも危険すぎるわ!

アルスの杖がある限り大丈夫かもしれないけど、万が一何かがあったらどうするのかしら?

……そもそも、あの2人が護衛(ごえい)も付けずに危険な場所にいくかしら?

何かが……。何かがおかしいわ……)



〈ここは危ないよ〉



 どこからか急に声がした。


〈みんな危ない。早く逃げて……〉


 ――誰?誰なの?


 ジルは部屋中をキョロキョロ見渡した。しかし、ジルとナツメの2人以外には誰もいない。

 急に部屋を見回したジルを、ナツメは不思議そうに見つめている。

 空耳(そらみみ)か何かだとも思えない。確かにはっきりと聞こえたのだ。危険を知らせる、誰かの声が。


 そのとき、部屋の扉が開いて、侍女のココが戻ってきた。

 手にお香のようなものを持っている。隣にリンの姿はなかった。


「あ、ココさん。リンは……? リンと一緒じゃ、なかったんですか? 」


「そ、それが……」


 ココは目をうるうるさせ、声を震わせながら言った。


「3階にある、陛下の部屋の前を通ったときに、いきなり部屋の中に入ってしまわれて……」


「ええ……!? 」


「何度も止めたんですが、ココの手を振り払って、陛下のお部屋に……。

しばらく待っていたんですが、いっこうに出てくる様子もなくて……。

あたしたち侍女は、身分が低いので……。

陛下のお部屋に入ることも、許されておりませんし……」


 ココは泣きそうな顔で、部屋中をウロウロし出した。手にしているお香の甘い香りが、部屋中に広がった。


「陛下は、綺麗な女性が、お好きですから……。い、今頃……もしかしたら……」

 

 ココは顔を伏せて泣き出した。

 

「大切なお客様ですのに……。ココのせいで……。ココのせいで、リン様が……! 」


(なんてことなの……。リンが、陛下の部屋に……。

でも、あの子が勝手にそんなことをするかしら? やっぱり何かがおかしいわ……)


 ジルは強い胸騒ぎと同時に、突然の目眩(めまい)に襲われた。


(変だわ……。どうしたのかしら……。目の前が、暗く……)


 ジルはベッドの上にドサッと倒れ込んでしまった。

 ココとナツメは互いに目を合わせると、にやりと笑った。


「うふふ、うまくいったー★ 」


 ココは嘘で流した涙をぬぐった。

 ナツメもいつの間にか鼻元に布をあてており、お香の強烈な香りを吸い込まないようにしていた。


「ココ、お香強すぎだから 」

「ごっめ〜ん★ 分量わっかんなくてー 」


「ま、計画通りだし許してあげるわ。時間がないから準備に取り掛かるわよ。

……ジル。悪いけど、しばらくそこで眠っていてもらうわよ。

まずはリンの式が先だからね。あなたはその後よ」


 ココも続ける。


「残念だけど、あなたたち一行は、ここでおしまいだからね★

お連れの殿方(とのがた)は、遺跡で身包(みぐる)みを剥がされて殺されるわ★

あなたたち2人は、陛下のお嫁さんになって、ずっとずーっと幸せに暮らすのよ★

だけど、陛下は極度の欲しがりで飽き性だから、砂漠にポイされないように気をつけてね★


そうそう、兵たちにも奴隷になってもらうわ。貴重な使い捨ての駒ですもの★

今度、陛下のためのおっきなお墓を建てなきゃいけないから、そのために頑張ってもらうわ★

そうだ、ハヤブサ大会で勝っちゃったあの鷲。あれも陛下が欲しいって言ってたわ。

どうにかして奪わなきゃ★


……って、これだけ言っても、あなたには聞こえてないわよね。キャハ★ 」


「ココ、あんたはいつもしゃべりすぎ。……でも、これがこの国の(おきて)

他国からここを訪れた者は、みんなこの国のために、使い捨ての駒になる運命なの。

四方を砂漠に囲まれた、過酷な環境で生きていくためには、こうするしか方法がないのよ 」


 2人の侍女はジルを部屋に残したまま、結婚式の準備に向かった。



 そして、さらなる悲劇がアルスたちを待ち受けているのだった――。

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