第68話 北の遺跡
【前回までのあらすじ】
ハヤブサ大会の決勝戦がスタートした。
優勝常連者や念願の決勝進出者などが揃う中、唯一鷲で挑む少年が話題になっていた。
接戦が繰り広げられ、勝利を勝ち取ったのはなんと鷲。
ハヤブサ大会は大盛り上がりの中幕を閉じるのだった。
「はー! すんごかったな〜」
カストルはいいものが見れた、と喜んだ。
観客たちも満足げな面持ちで、ぞろぞろと街へ戻っていく。
アルスは、ワディに遺跡のことを聞いてみることにした。
「あの、ワディさん。この国の北に、遺跡があると聞いたのですが……」
「遺跡……? あ、ああ……。確かにあるが……。
もしかして、おまえたち行こうとしてるのか?
……絶対にやめておけ! 何があるかわからないぞ! 」
「……どういうことですか? 」
ワディは周りをキョロキョロと見渡しながら、小声でいった。
「……悪いことは言わない。行くのはやめなさい。
この街の中にいる限り安全だが、一歩外に出ると砂漠。命を奪う砂漠なんだよ」
ワディはどこか歯切れが悪い。
「は、はい……」
「わかったなら、遺跡にいくのは諦めな! 行ったところで、何かがあるわけでもない。
……じゃあな。わしは忠告したぞ。もう店に戻るからな」
ワディは逃げるように立ち去ってしまった。
「……? どういうことなんだろう」
「あの様子じゃ、遺跡に何かがあるのは間違いないな、アルス。
まあ、何かあればすぐに戻ってくればいいんだよ」
「うーん……。そうだ!一度兵長に頼みに行こう。
兵長が無理なら、他の兵たちについてきてもらえれば安心だよ」
「そうだな。いざというときに頼りになりそうだな」
そんなこんなで早速王宮へ戻ったアルスたちだが、生憎兵長と兵たちの姿はどこにもなかった。
「あれ、兵長たち、いないみたいだね」
「そういや用事があるっていってたもんな。兵たちも一緒に駆り出されてるんだろうか。
……仕方ない。2人だけでいこう。すぐ近くだし、何かあったら戻ってきたらいいんだよ」
アルスとカストルは、2人だけで北の遺跡へ向かうことにした。
遺跡は街を出てすぐのところにあった。
ゴツゴツとした岩の谷の道を進んでいくと、真正面に二階建ての立派な神殿が見えてきた。
「うお……すげえ……」
隣でカストルが感嘆の声をあげた。
岩を削って作られたのだろう、つなぎ合わせたような箇所は一切見当たらなかった。
柱やレリーフが精巧に形作られており、周りの荒い岩肌と神殿の融合は圧巻だった。
何十年、何百年と放置されているのか、あちこちで風化が進み、大規模に崩れてきている部分もあった。
「おそらくここだろう……。中に入ってみよう」
神殿の中は陽の光も届かない真っ暗闇だった。
アルスは近くに転がっていた木の枝に火を灯し、中に進んだ。
内部はいくつかの部屋に分かれており、かつてここに人が住んでいたことを思わされた。
奥に進むと、祭壇のような広い空間に行き着いた。神殿はここで行き止まりのようだ。
「ここが神殿の中枢部分かなあ。アルス、神の像らしきものは見える?」
「うーん……。ないみたい。台座も、それらしい彫刻もない……」
「そっかあ。残念だけど、ここにはないのかもしれないな。……もう戻ろうか」
「うん、来れただけでもよかったよ」
引き返している間、アルスは気になっていたことを話した。
「侍女のナツメさんに、ここに神の像があるって教えてもらったから来たわけだけど、結局なかった。
ナツメさんが何かと勘違いしてしまったんだとしたら、それは仕方ない。
1つ気になるのは、この遺跡を気味悪がって誰も近寄っていないことだ。
ワディさんに聞いても、遺跡に行くなの一点張りだったし、少し様子も変だった。
どうして、こんなに立派な神殿なのに、誰も近寄らないんだ?
それに、キャラバン隊の隊長の言葉もずっとひっかかる。
一体、この国に何があるっていうんだ? そして、本物の神の像は、どこにあるんだ? 」
アルスは無意識のうちにだんだん語尾が強くなった。
「隊長やワディさんから忠告を受けても、それが何故いけないのか、ちゃんとした理由も教えてもらえない。
内緒にしろ、行くなと言われても、なぜダメなのかがわからない。
一体、どういうことなんだ……?
きっと、言えないわけじゃないはずなんだ。
僕が彼らの立場だったら、きちんと理由をつけて忠告するはずだ。
……一体なんで……。いや、まさか……もしかして……。“言えない”からなのか?? 」
「アルス、さっきから大丈夫? 」
独り言が段々エスカレートしていくアルスを見て、カストルが不安そうに顔を覗き込んだ。
「もしかしたら、神の像は街か王宮にあるのかもしれない。
なんでここに誰もこないのかはわからないけど、みんなが信仰してる神様なら、人の多いところに安置されているのかもしれない。
それに、ここで考えをめぐらせるよりか、戻ってからいろんな人に聞いたほうが確実だよ」
「うん……それもそうだね」
アルスはまだ何かがひっかかってむず痒い気持ちがしたが、やむを得ず街に戻ることにした。
――しかし、嫌な予感は的中してしまった。
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