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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第68話 北の遺跡

【前回までのあらすじ】


ハヤブサ大会の決勝戦がスタートした。

優勝常連者や念願の決勝進出者などが揃う中、唯一鷲で挑む少年が話題になっていた。

接戦が繰り広げられ、勝利を勝ち取ったのはなんと鷲。

ハヤブサ大会は大盛り上がりの中幕を閉じるのだった。

 「はー! すんごかったな〜」


 カストルはいいものが見れた、と喜んだ。

 観客たちも満足げな面持(おもも)ちで、ぞろぞろと街へ戻っていく。

 アルスは、ワディに遺跡のことを聞いてみることにした。


「あの、ワディさん。この国の北に、遺跡があると聞いたのですが……」


「遺跡……? あ、ああ……。確かにあるが……。

もしかして、おまえたち行こうとしてるのか?

……絶対にやめておけ! 何があるかわからないぞ! 」


「……どういうことですか? 」


 ワディは周りをキョロキョロと見渡しながら、小声でいった。


「……悪いことは言わない。行くのはやめなさい。

この街の中にいる限り安全だが、一歩外に出ると砂漠。()()()()砂漠なんだよ」


 ワディはどこか歯切れが悪い。


「は、はい……」


「わかったなら、遺跡にいくのは諦めな! 行ったところで、何かがあるわけでもない。

……じゃあな。わしは忠告したぞ。もう店に戻るからな」


 ワディは逃げるように立ち去ってしまった。


「……? どういうことなんだろう」


「あの様子じゃ、遺跡に何かがあるのは間違いないな、アルス。

まあ、何かあればすぐに戻ってくればいいんだよ」


「うーん……。そうだ!一度兵長に頼みに行こう。

兵長が無理なら、他の兵たちについてきてもらえれば安心だよ」


「そうだな。いざというときに頼りになりそうだな」



 そんなこんなで早速王宮へ戻ったアルスたちだが、生憎(あいにく)兵長と兵たちの姿はどこにもなかった。


「あれ、兵長たち、いないみたいだね」


「そういや用事があるっていってたもんな。兵たちも一緒に駆り出されてるんだろうか。

……仕方ない。2人だけでいこう。すぐ近くだし、何かあったら戻ってきたらいいんだよ」


 アルスとカストルは、2人だけで北の遺跡へ向かうことにした。



 遺跡は街を出てすぐのところにあった。

 ゴツゴツとした岩の谷の道を進んでいくと、真正面に二階建ての立派な神殿が見えてきた。


「うお……すげえ……」


 隣でカストルが感嘆(かんたん)の声をあげた。

 岩を(けず)って作られたのだろう、つなぎ合わせたような箇所は一切見当たらなかった。

 柱やレリーフが精巧(せいこう)に形作られており、周りの荒い岩肌と神殿の融合は圧巻(あっかん)だった。

 何十年、何百年と放置されているのか、あちこちで風化が進み、大規模に崩れてきている部分もあった。


「おそらくここだろう……。中に入ってみよう」


 神殿の中は陽の光も届かない真っ暗闇だった。

 アルスは近くに転がっていた木の枝に火を灯し、中に進んだ。


 内部はいくつかの部屋に分かれており、かつてここに人が住んでいたことを思わされた。

 奥に進むと、祭壇(さいだん)のような広い空間に行き着いた。神殿はここで行き止まりのようだ。


「ここが神殿の中枢(ちゅうすう)部分かなあ。アルス、神の像らしきものは見える?」

「うーん……。ないみたい。台座も、それらしい彫刻(ちょうこく)もない……」

「そっかあ。残念だけど、ここにはないのかもしれないな。……もう戻ろうか」

「うん、来れただけでもよかったよ」


 引き返している間、アルスは気になっていたことを話した。


「侍女のナツメさんに、ここに神の像があるって教えてもらったから来たわけだけど、結局なかった。

ナツメさんが何かと勘違いしてしまったんだとしたら、それは仕方ない。


1つ気になるのは、この遺跡を気味悪がって誰も近寄っていないことだ。

ワディさんに聞いても、遺跡に行くなの一点張りだったし、少し様子も変だった。

どうして、こんなに立派な神殿なのに、誰も近寄らないんだ?

それに、キャラバン隊の隊長の言葉もずっとひっかかる。

一体、この国に何があるっていうんだ? そして、本物の神の像は、どこにあるんだ? 」


 アルスは無意識のうちにだんだん語尾が強くなった。

 

「隊長やワディさんから忠告を受けても、それが何故いけないのか、ちゃんとした理由も教えてもらえない。

内緒にしろ、行くなと言われても、なぜダメなのかがわからない。

一体、どういうことなんだ……?

きっと、言えないわけじゃないはずなんだ。

僕が彼らの立場だったら、きちんと理由をつけて忠告するはずだ。

……一体なんで……。いや、まさか……もしかして……。“言えない”からなのか?? 」


「アルス、さっきから大丈夫? 」


 独り言が段々エスカレートしていくアルスを見て、カストルが不安そうに顔を(のぞ)き込んだ。

 

「もしかしたら、神の像は街か王宮にあるのかもしれない。

なんでここに誰もこないのかはわからないけど、みんなが信仰してる神様なら、人の多いところに安置されているのかもしれない。

それに、ここで考えをめぐらせるよりか、戻ってからいろんな人に聞いたほうが確実だよ」


「うん……それもそうだね」


 アルスはまだ何かがひっかかってむず(がゆ)い気持ちがしたが、やむを得ず街に戻ることにした。



 ――しかし、嫌な予感は的中してしまった。


 

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