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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第9章 オアシス国家ダルウィン
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第66話 オアシスへ

【前回までのあらすじ】


ついにダルウィンに辿り着いたアルスたち。

掟に従い、宮殿でダルウィンの王・ジャラーハに挨拶も兼ねて謁見することに。

アルスたちは「聖地巡礼の旅をしている」という名目で、王宮に泊めてもらえることになった。

 案内された部屋はゲスト用の部屋らしく、()った作りの部屋だった。

 ジルは早速天蓋(てんがい)付きの豪華なベッドに寝かされた。

 まもなくして、この王宮に常時いるという医者がやってきた。


「なるほど。軽度の熱中症ですね。

水分と栄養のある物を取ると(じき)によくなりますよ」


「よかったあ〜」


 みんなはほっと胸を撫で下ろした。


「今日はもう休みなさい。ここに水を置いておくから、喉が乾いたら遠慮(えんりょ)せず飲みなさい」


 医者は金属製の水差しとガラスに金の模様が入っているコップを側のテーブルに置いた。


「はい、ありがとうございます」


 ジルは安堵(あんど)したのか、すぐに眠りについた。


「では、私はこれにて」


 医者が帰ると、この王宮の侍女が2人が付きそうことになった。

 ナツメとココという2人の女性は、1人はクールで無表情で長身な人で、もう1人は愛想がありよくしゃべる人だった。

 この部屋の隣にアルス、カストル、兵長の3人の部屋と、残りの兵たちの部屋があてがわれた。


「じゃあ、僕たちはこれで。また明日来るよ」

「何かあったらいつでも呼んでね。僕、飛んでいくから」

 

「うん、また明日ね。おやすみなさい」


 リンが扉の前で見送ってくれた。


◇◇


 自分たちの部屋に入ったアルスたちは、早速明日以降の予定を話し合った。

 こちらの部屋も壁から天井にかけて緻密(ちみつ)な装飾が施されており、床には不思議な模様の絨毯(じゅうたん)が敷かれていた。

 天蓋(てんがい)付きのベッドが2つ並んでおり、贅沢の極みという言葉がしっくりきた。


「……それにしても、ここの王様はものすごい貫禄(かんろく)だったな〜」


 カストルが圧倒されたように言った。


「うん。……大富豪(だいふごう)って感じだった」


「しかもあれだけの美女が取り巻きにいるなんて……。やっぱ金持ちはモテるんだろうな〜」


「……それだけじゃないと思うけどね。……で、これからどうしようか?」


「まず僕たちがこの国にきたのは、“聖地巡礼(せいちじゅんれい)の旅”ってことになってるじゃん?

まずはこの国の神様の像を見に行こうよ。

……予想では、大地の女神イレニア様……だったかな?」


「王宮の人に聞けば、場所を教えてくれるんじゃないかな。

あとは、宝石の手がかりも……。

王様に直接きけたら一番いいんだけど……、でも隊長からの言葉が気になって」


(なんらかの方法で、砂嵐を消してくれたことには礼を言おう。

 だが、このことはくれぐれもダルウィンでは内緒にしろ。

 我々は何もしていないし、何も見ていない。……いいな?)


「もう、アルス忘れたのか?この国には各地と交易してる商人がごまんといるんだぜ。

どうにかして聞き出せるんじゃない?」


「そうだね。街へ行ってみよう。あと、王様が言ってたハヤブサ大会にも」


「ああ。ひととおり済ませて、明日か明後日には旅立とう。おっと待てよ……?」


「……どうしたの?」


「ここまでくるのに、キャラバン隊に案内してもらっただろ。

ここからファイデン王国まで行くのも、もしかして……」


「キャラバン隊のお世話にならないといけないのかな?

確かに、僕らだけで砂漠を渡るのは不可能だ。土地勘もゼロだし。

誰かにお願いしたら、同行してもらえるかなあ?」


「その点は、私から陛下に依頼してみます」


 兵長がすかさず提案した。


「キャラバン隊を各地に出していることでしょうし、すぐに見つかることでしょう」


「なら安心だな」


「それとカストル様、誠に恐縮なのですが、皇帝陛下からの依頼があり、明日は1日付き添いができないかもしれません」


「えっ? 父上から?……そうなの?」


「はい。申し訳ありません。代わりの兵を同行させますので」


「大丈夫だよ。ちょっと街に出る程度だから、僕たち2人で回るよ」


「……し、しかし」


「大丈夫大丈夫! すぐ戻ってくるから」


「……承知いたしました。くれぐれもお気をつけください。

何かあればすぐにお知らせください」


◇◇


 翌日。

 各部屋で朝食を済ませたあと、アルスとカストルは隣のリンとジルの部屋を訪ねた。

 ノックしたあと「はい」と出てきたのは、従者の1人だった。たしか、クールな印象のナツメさん……。


「あ、おはようございます。リンとジルに会いにきたんですが……」


「ジル様は軽く朝食を()られて、今は眠っておられます。

リン様は、ココと一緒に王宮内を散策しておられます」


 侍女のナツメは表情を変えることなく淡々と返した。


「えっ、そうなんですか?

……あの、話は変わるんですが、この国に神様の像ってありますか?」


「……神様の像、とは?」


「はい。他の国にもあったんですが、白い石でできた神様を模した彫刻なんですが……」


「ああ、そのことですか。この国を出て北に行ったところに、古い遺跡があります。

歩いて行ける距離ですが、今じゃ気味悪がって誰も行きませんよ」


「そうですか……」


「はい。もしお時間があるならどうぞ。それではまた」


 ナツメはガチャンと扉を閉めた。


「……冷たい人だな。もっと他の言い方ってのがあるだろうに」


「仕方ないよカストル。ジルの体調が戻るまでつきっきりで忙しいのかもしれないし。

……気晴らしに街に出てみようよ」


「そうだな」


◇◇


 王宮を出て街に出ると、昨夜とはうって変わって(にぎ)やかな雰囲気だった。


 石を敷き詰めた広い道の両側では、商人が開店の準備をしている。

 ヤシの木でつくられたカゴや、王宮の部屋にも敷かれていた色とりどりの絨毯(じゅうたん)

 金属製の食器や、カラフルで目を引く女性用の衣服など。

 さらには、他国から仕入れてきたであろう絵画や彫刻のほか、宝石も売られていた。


 また、ところどころに屋台が出ており、香ばしい香りのコーヒーをもとめて、男性たちが集まっていた。 

 王宮から南に行けばオアシスにたどり着くようで、生活にかかせない水を得るために、頭に大きな水瓶を乗せて歩いている女性たちの姿も見られた。

 

「うわー。すごい街だなー」

「昼間はこんなに賑わうんだねー」


「おーい、そこのお二人さんは、見ない顔だな。旅の方かい? 」


 1人の商人がアルスたちに気付いて声をかけてきた。


「店を見ていって欲しいところだけど、オアシスの方でもうすぐハヤブサ大会が始まるんだ。

あれは一見の価値ありだからなあ。わしも一旦店を閉めて見に行くつもりなんだ。

一昨日の予選では思わぬ番狂わせがあったからな。みんな大注目してるのさ」


「そうなんですか。ありがとうございます」


 アルスとカストルはオアシスの方へ歩いていった。


 オアシスにつくと、特設会場のようなものが設けられており、すでに大勢の観客が詰めかけていた。

 2人も適当に見やすい場所を見つけて、様子を(うかが)うことにした。

 土や石を固めて作られた舞台の向こう側に、青々とたゆたうオアシスと周囲を取り囲むヤシの木々が見える。


「なかなかいい景色だな。砂漠の真ん中にあるとは思えないよ」

「そうだね」

 

「おや、お二人さんじゃないか」


 見ればさっきの商人だった。


「どうも」


「わしはワディだ。ヤシの実の加工品を売っている、しがない商人だ。

若いお前さんたちに、この大会のことをちょこっとだけ教えてやろう。

ハヤブサはもともと砂漠で狩猟(しゅりょう)をする時に使っていたんだが、それぞれの能力を高める目的で始まったのがこの大会でな。


獲物を確実に狩れるかを見たり、どれだけ早く飛べるかを競いあったり。

まあいろいろあるんだが、今ではご覧のとおり、娯楽として開催されるようになっておる。


今日の決勝では、オアシスの端から端まで飛ばして、一番早かったハヤブサが勝利ということになっている。

ちなみに総距離はおよそ500m。

予選を勝ち抜いた5人の選手が同時に飛ばして競い合うんだ」


「へえ、そうなんですね」


「あの、番狂わせがあったというのは? 」


「ああ、気になるだろ?

毎年決勝に残るのはだいたい同じようなメンツばかりだったんだが、今年は一味違うみたいでな。

数日前にやってきた1人の旅人が、立派な黒い(わし)をつれていたんだ。

大会が盛り上がると見込んだ主催者が、試しに出場させたんだよ。

結果は残せないだろうけど、話題にはなるだろうってな。

そしたらびっくり。どの選手のハヤブサよりも確実に獲物を取り、どのハヤブサよりも早かったんだ。

この1年厳しいトレーニングを積んできたハヤブサたちが、どこのラクダの骨かもわからん旅人に負けおったんだ。

おかげで大会は大いに盛り上がり、噂を聞きつけて例年以上に観客が押しかけた……ってとこだな」


「えー!そんなことがあったんですね」

「すごいなアルス。僕たちはいいタイミングで来られたんだな」



やがて、舞台に主催者と見られる人物が現れ、観客たちから嵐のような拍手が沸き起こった。


いよいよ、決勝戦が始まる!


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