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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第8章 聖都ガルトデウス
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第58話 魔導師当主会議

 真夜中。


 とある人を寄せつけぬ深い森に、8人の人物が集まった。

 森の中央にある巨大な()ちた切り株を囲むように座り、お互いの顔が判別できる程度の灯りが(とも)されている。

 皆性別も年齢もバラバラで、最年長は85歳、最年少は27歳だった。


「これより、第198回 魔導師(まどうし)当主(とうしゅ)会議(かいぎ)を始める。皆集まっておるか? 」


 最年長の老人が静かに言った。

 魔導師当主会議とは、現在50はあるといわれる魔導師(まどうし)たちの上位9名が集まる会議で、年に1回行われている。

 魔導師(まどうし)たちは各地に散らばって暮らしているので、お互いの近況報告と問題解決を目的に集まり、今年で198回目を迎える。

 また、最年長がこの場を取り仕切るということも、第1回目から続く決まりだった。


「No.9 へーメル。ここにおりますわ」

 丸いメガネをかけた、若くて元気そうな女性が言った。

 この中の最年少だった。


「No.8 アルドール」

 目つきのするどい老人が言った。側には一羽の黒い鷲が止まっている。

 進行役を務めているのは、この人物だった。


「No.7 フェルディオ。華麗(かれい)に参上さッ」

 白いタンクトップを着た、テンションが人一倍高い男が言った。

 年齢は40代前後。赤い短髪に小麦色の肌をしている。


「No.6 グレイシス。早く始めませんか? ……ブルブル。寒いんで」

 分厚いコートを3枚着込んだ男が、ガタガタ震えながら言った。

 年齢は60代。髪は水色で、透き通るように白い肌をしている。


「No.5 ヴェレーノ。来てますよ」

 紫色の髪とドクロのペンダントが特徴的な女性が、にたりと笑った。

 年齢は推定50代。不敵(ふてき)な笑みは決して悪意があるわけではなく、生まれつきこうなのだ。


「No.4 エクレール……。い、いてます……」

 30代後半の物静かな男が言った。

 髪は金色をしており、前髪で目が隠れている。


「No.3 ディエーラ、ここに」

 図体(ずうたい)がでかく、どっしり構えている中年男性が言った。

 常に不機嫌そうな表情をしているが、本人はそのつもりはない。


「No.2 ヴァーテル。忙しいから早く終わらせよう。スマートにね」

 水夫(すいふ)の格好をした40代の男性が言った。

 金髪で爽やかな笑顔が魅力的だが、プライドの高さがひしひしと(にじ)み出ている。


「……あれ? No.1のラファルドは今年も来ていないのかい? もう10年連続の欠席じゃないか。

まったく……(あき)れるよ。No.1なら、スマートに何をしてもいいってもんじゃないよね」


「口を(つつし)め、ヴァーテル」


 老人が一括(いっかつ)した。

 威厳(いげん)(たた)えた瞳で(にら)まれれば、場の空気もピリッと引き締まるから不思議だ。


「さて、今年も遠路遥々《えんろはるばる》集まっていただき、誠に感謝申し上げる。

夜も更けてきたので、手短に報告をしてもらおう。まずはNo.9 へーメルからじゃ」


「はい」若い女性が手を上げた。


「15年前、不思議な星が発見されたことは記憶に新しいかと思います。

……私の亡き母が、この場で申し上げたことですが。

以降何の変化も見られませんでしたが、ここ最近、急に輝きが明るくなりました。

そう、これはもう断言(だんげん)するしかありません!

“光の使者” が現れたのです! 」


 若い女性は興奮のあまり、切り株をバンっと叩いた。

 その勢いでふちがパラパラ……と欠けた。

 思いが先走りすぎたのか、メンバーの間にしばらく沈黙が(ただよ)った。


「……“光の使者” ? なんだそれは?」


 ディエーラがむすっとした顔で言った。決して不機嫌なわけではない。


「神話に出てくる、宝石に選ばれしものじゃな」


 アルドールの老人が片眉(かたまゆ)を上げながら言った。


「……宝石?もしや、神が地上に残したという、あれかい? 」


 ヴェレーノがニタリと尋ねた。


「そうじゃ」


「もしそれが本当だとしたら、1000年ぶりの登場にならないか? 」


 グレイシスがぶるぶる震えながら言った。


「しかし、“光の使者”が現れるのは、決まって()()()()()()じゃという。

すなわち、エシュアも復活するということかもしれん……。

あの宝石は、神々が残した最後の希望じゃからな」


「……なるほど。その“光の使者”を味方にできれば、我々とエシュアの、長年に渡る因縁(いんねん)もなくなるということだな」


 ディエーラが言った。


「おい、おいおいおい! みんな何を言っているんだッ! 我々にはラファルドがいるだろッ!

なぜそのよく分からん“光の使者”とやらを頼らねばならんのだッ? 」


 フェルディオがバシッと言い切った。


「そのラファルドだけど、何年も音沙汰(おとさた)なしだろう?

現にこの会議に10年連続で欠席しているし、その間、目撃情報すらない。

比較的近所に住んでいるアルドール一族でさえ、何年も出会っていないという状況だ」


 とヴァーテル。

 鷲の老人がうんうん、とうなずいた。


「も、もしかしてさ。すでに、殺されてる、んじゃ…… 」


 エクレールが静かに言った。


「バッ……! バカ言うなッ! 誰に殺されたというんだッ!

あれは我々に残された唯一の希望だぞッ!

いなくなればどうなると思うッ? いつエシュアが攻めてくるか、わかったもんじゃないッ! 」


 フェルディオは切り株に身を乗り出し、向かい側に座るエクレールに今にも噛みつきそうな勢いだった。


「これこれ。そう熱くなりなさんな、フェルディオ。

現に……いないがな。ヒヒヒ……」


 ヴェレーノがこれまたニタリと笑った。


「ぐう……」


「確かに、我々にはラファルドがいるが、しょせんエシュアと対峙(たいじ)したところで何もできはしまい。

太古の戦争で、竜を封印できる4つの“古代一族”は、ラファルド以外みんな殺されてしまったのだから。

希望ではあるが、ただの象徴にしかすぎん」


 ディエーラが冷静に言った。


「そうとなれば、“光の使者”を見つける方が得策(とくさく)だろう。

きっと竜の手下たちも黙っていない。血の気の多いやつらのことだ……。

“光の使者”を殺そうとするに違いない。いや、すでに刺客(しかく)を放っているともいえる。

だからこそ、我々も“光の使者”をサポートするべきだ。

きっと微力(びりょく)ながら、力になってあげられるはずだ」


 グレイシスが提案した。


「そうじゃな。もしかすると、あの忌々(いまいま)しい王を倒してくれるかもしれんのう」


 アルドールの老人が言った。


「わかった。俺が悪かったよ。みんなの意見を受け入れよう。

で、どこに行けば見つかるんだ? 」


 フェルディオが言った。


「ある程度なら、居場所がわかるかもしれません」へーメルが手を挙げた。


「星の位置はここから遥か東、地平線の上にあります。つまり……」


「……なるほど、海の向こう、か? 」


 アルドールが言った。


「で、大まかな所在(しょざい)がわかったところで、誰が探しにいくの? 」


 エクレールが静かに言った。


「俺はやだね! 」ヴァーテルが即答(そくとう)した。


「忙しいしそれどころじゃない。みんなもそうだろう? 」


「わたしは腰が悪いしねえ……」


 ヴェレーノが困ったように言った。


各々(おのおの)の言い分はよくわかる。

 しかし、これは時間の問題じゃろう。お互いのためにも、一刻も早く会わねばならん」


「宝石は全部で6つあるから、“光の使者”も6人いるはず。

そのうちの1人にでも会えたらいいんですけど……」


 へーメルも困ったように言った。


「よし、各々一度戻って相談してくること。

3日後、いかなる方法でもよい。わしまで伝達を寄越(よこ)すこと」


 その後も順番に最近のことを報告しあったが、特に何も変わりがなかったため、会議は2時間で終了した。


「以上をもって、第198回魔導師当主会議は終了とする。

次回は1年後じゃ。途中で緊急の案件がでたら、すぐに報告するように」


「やーっと終わった。さあ、帰ろ帰ろ。スマートにね」


 ヴァーテルが堂々と出て行った。


「お疲れ様でしたぁ〜〜」


 へーメルが1人1人にペコペコしながら出て行った。


「じいさんも気をつけてな」


 ディエーラが気にかけて言った。


「ありがとう。外に孫が来ておるから大丈夫じゃよ」


「あんたも大変だねえ。こういう役は不向きだろうに」


 ヴェレーノがニタニタしながら言った。


「ラファルドの当主がいた時は、みんな緊張して背筋が伸びてたもんだよね。ヒヒヒッ」



 各々がバラバラに森を出ていったのを確認すると、老人も最後に灯りを消し、森を出た。

 森の外には、1人の若者が待っていた。年齢は16歳。老人と同じく、一羽の黒い鷲が腕に留まっている。


「おじいさま、お疲れ様でした」

「待たせたな、ギルア。さあ、早く帰ろうか」


 2人は南に向かって歩みを進めた。草原が延々(えんえん)と広がっている。


「みなさん、元気にされていましたか? 」

「ああ、相変わらずにな。今年も、ラファルドは来ておらんかったわい……」

「そうでしたか……」


 2羽の鷲が弧を描くように、2人の上を旋回(せんかい)しながら飛んでいる。

 心なしか夜風が身にしみる。


「ギルアよ。最近、“光の使者”が現れたらしい」

「“光の使者”? それはなんなのですか? 」

「神々が残した宝石に、選ばれた人たちじゃよ。6人集まれば、竜を封印することができるという」

「竜を封印?……すごいですね! 神話だけの話だと思っていました」

「そうじゃのう」

「じゃあ、急に居なくなったあの子にも、会えるでしょうか? 」

「……会えると、いいのう」


「よし、決めた! おじいさま、僕、“光の使者”に会いに行きます! 」


「なぬ!? そ、それはかまわんが……。ちゃんと両親にも言うんだぞ。黙って行くのはよくないからな」

「はい、もちろんです! その“光の使者”ですが、どこにいるんですか?」


「“アンクレスト”。ここから遥か東、海の向こうにある、アンク様がお作りになった大陸じゃよ」

「アンクレスト!? そうですか……。ずいぶん遠いんですね」

「今、各一族にも協力を得ているところじゃ。他にも(つの)る者が出てくれば、一緒に行くと良い。

わしらのような老いぼれは、ここを離れるわけにはいかんからな」

「はい、わかりました! 」


「それと1つだけ注意じゃ。

向こうには、わしらのような魔導師(まどうし)はほぼ残っておらん。

もはや伝承だけの存在になっておるし、存在自体を知らぬ者も多い。魔法は極力、人前で使わぬようにな」


「はい!」



 しばらくいくと、草原の中にポツンと民家の明かりが見えてきた。帰るべき場所に辿り着いたのだ。


「ギルア、体が冷えたろうから先に中に入っていなさい」

「はい。おじいさまも、すぐに来てくださいね」


 ギルアが走って家に向かうのを見届けたあと、老人は今きた道を振り返った。


「……何か嫌な気配がする。気のせいだといいんじゃが……」


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