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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第8章 聖都ガルトデウス
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第55話 アイオールの加護

【前回までのあらすじ】


部屋に案内されたアルスたちは、ひとまず全員の無事を喜びあった。

その後手始めに負傷した兵たちを運び入れ、傷を癒すことにする。

そして数週間が経過した頃、アルスたちは姫巫女に呼び出されるのだった。

 祈りの間に行くと、シナトが満面の笑みで迎えてくれた。

 シナトの腕には白鷲しろわしが鷲の姿で留まっていた。


「皆さんのご活躍は聞いております。

なんとお礼をすればいいか……。本当に、本当にありがとうございます!

我々ガルトデウスの民は、あなたたちのことを一生忘れないでしょう。

だいぶ日数がかかってしまいましたが、改めてみなさんの用件をお伺いしましょう」


「はい、まずは復興おめでとうございます。僕たちがここに来た理由は……」


 アルスは、一緒にいるジルにも聞かせる覚悟を込めて、一通りのことを話した。


 自分はエルディシアの王子であること。

 エルディシアは竜の紋章のある異国の兵に滅ぼされたこと。

 “光の使者”として選ばれたこと。

 闇の勢力が迫っているかもしれないこと。

 ホルンは敵対する“闇の使者”であること。

 ラオンダール帝国に協力を(あお)ぎ、各地に集まる宝石と仲間を探していること。

 宝石のことで知っていることがあれば教えてほしいこと。

 また、この国に風の神を(まつ)る像があれば教えてほしいこと。



 アルスの長い話が終わった。

 シナトはしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。


「なるほど、にわかには信じられない話ではありますが、事実なのでしょう。

ホルンが突然未来を聞きに現れたのも、そのような理由だったのですね。

そして予想を裏切る結果だったため、私たちを殺し、挙句(あげく)の果てにこの国を滅ぼそうとした……。


本当に、今思い返しても……。背筋が(こお)る思いがします。


彼女が言っていた“聖なる竜”とは、おそらく神話にでてくるエシュア様のことでしょう。

しかしあれは神話上の話であり、エシュア様ははるか昔の時代に冥界(めいかい)に送られています。

エルディシアを滅ぼしたのが竜の紋章の国だということは、人知れず崇拝(すうはい)している国があるのかもしれないですね……。

私も、白鷲しろわし様も、そのような国は存じ上げません。


まず申し上げますと、あなたたちの探している宝石は、この国にはありません。

所有していたという記録も残っておりません。


お力になれず申し訳ないですが、1つだけ言えるのは、あなたたちの助けを必要としている人が、まだこの世界に何人もいることです。

あなたたちと敵対する“闇の使者”が存在する限り、我々のように命を(おびや)かされる者がいないとも限りません。

困っている彼らに手を差し伸べるうちに、(おの)ずと目的も達成されることと思います」


「そうですか……。ありがとうございます」


「そして、風の神を祀る像ですが……」


 シナトは奥を指さした。外からの風が吹き込んでいる舞台の方だった。


「あちらにございます。私にははっきりした形は見えませんが、確かに存在しております」



 アルスたちが舞台の方へいくと、下の谷から冷たい風がブワッと吹き上がってきた。


「うわっ!寒ー! 」カストルが思わず体を縮こまらせながら叫んだ。


 舞台からはガルトデウスをぐるりと取り囲むように、6000m級の山々が(そび)え立っているのが見えた。

 どの山も山頂に白い雪が積もっていた。その(さま)はカラッと晴れた青い空に一際美しく映えていた。


「この国は周りの山々から年中冷たい風が吹き込んできます。

私たちはそれを“風の神の息吹”として(あが)めております。

ここは地理的に外敵を簡単に寄せ付けぬ自然の砦のようになっていますので、今までどの国からも侵略を受けたことはありません。

また、冷たい風がこの国を常に浄化してくれています。

高い山々と風がある限り、この国は守られているのです」


 アルスは舞台の隅に、この国の家々と同じ白い石で出来た像を見つけた。

 背中に羽のある男性の姿をしている。風神アイオールの像だ。


「ありました! これです」


 アルスは皆が見守る中、背中から杖を取り出し、祈りを(ささ)げた。

 すると杖が呼応(こおう)するように光り、声が響いてきた。


「私は風神アイオールの精。あなたは新しい杖の持ち主ですか?」


「はい、アルスといいます」


「エルディシアの最後の王子、アルスですね。よくこの宮殿までやってきました。

あなたに“アイオールの守り”を授けましょう」


 杖が宙に浮き、天からまばゆい光が降り注いだ。杖はゆっくりとアルスの手に戻った。


「これで問題ないでしょう。あなたが闇に囲まれたとき、強力な防壁で守ってくれるでしょう。

あなたたちの旅に、光の加護があらんことを」


 風神アイオールの精の声が消えていった。


「アルス、どんな力なのか、早速試してみてよ!」


 カストルが待ってましたとばかりにはしゃいだ。


「う、うん……。みんな、僕の周りに集まって。

……いくよ、“アイオールの守り”!」


 杖がカッと光ると、円を描くように風が生まれ、半径2mほどの大きさに広がった。

 みんなを取り囲むように風で包まれた防御壁が出来上がった。


「す、すげー!これなら敵も蹴散(けち)らせるし、味方も守れるし一石二鳥だな!」


「アルス君、これでまた一段と強くなったね! 」


「なんて温かな風……。これが“光の使者”様の力なのですね……」


 シナトも感激している様子だった。

 防御壁が消えると、再び谷底からの冷たい風が直撃してきた。


「ひー! アルス、一旦(いったん)中に戻ろう! ここにいたら風邪ひくよ〜」


 カストルが歯をガチガチさせながら言った。


「う、うん……」


 みんなが屋内に戻り始めた時、アルスはふと思い出して像の周囲を見回した。

 土台部分は読めない文字がびっしりと刻まれていたが、裏側に回り込むと、はっきり読める文字で「降りたち」と書かれていた。


「これだ! ……エルディシアでは「天空より」と書かれてたっけ。

一体これはなんだろう?」


「アルス、早く来なよー。風邪ひいても知らないからなー」


「うん、今いく! 」



 祈りの間に戻ったアルスたちは、シナトに何度もお礼を言って、部屋を出ようとした。


「あの、そこのお方。ジル様、でしょうか。すみません」急にシナトが呼び止めた。


「……はい? 」ジルは不思議そうに振り返った。


「あなたは、以前もここに来られたことがあるようですね。

白鷲しろわし様がそう申しております」


「ほ、本当ですか!? ……私、記憶を無くしてしまってて……」


「まあ、それはお気の毒に……。

白鷲しろわし様が言うには、あなたはどなたかを探しておられたようです」


「……え?」


「“アルモニス様を探している”、と、あなたはおっしゃっていたようです。

残念ながら、この国にはいらっしゃらなかったみたいですが……」


「アル、モニ、ス……?」


 ジルは必死にその断片から何かを思い出そうとしていた。


「……ジル、何か思い出した?」


「いいえ、何もわからないわ……。

せっかく、手がかりが(つか)めたと思ったのに、何も思い出せないなんて……。」


「アルモニスさんかー。うーん……。

なんか、アルスと名前が似てるよね! 知り合いにいたりする? 」


「それはないと思うけど……」


白鷲しろわし様は、この国の周囲のみを飛んでおられるので、他の国のことはわかりかねます。

お力になれず申し訳ありません」


「いいえ、ありがとうございます。これから各地を回るので、きいてみます」


「そうだ、アリオトさんにも聞いてみない?何か知ってるかもしれないよ」


 カストルが提案した。


「そうだね。有力な情報が得られるかもしれないね。

……シナト様、僕たちは、明日ここを発とうと思います。

本当に長い間、お世話になりました」


「いえ、こちらこそありがとうございました。

何かあれば、シアラを頼ってやってくださいね」


「はい、ありがとうございます! 」



 アルスたちが立ち去ったあと、シナトは白鷲しろわしに語りかけた。


白鷲しろわし様、あなたもご冗談をおっしゃることがあるのですね。

……ジルさんがここに来られたのは、200年も前ですって?

それはさすがに人違いでしょう。

私たちはあなたと違って、長くは生きられないのですから」


お読みいただきありがとうございます。

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