第53話 巫女の苦悩
【前回までのあらすじ】
“闇の使者”ホルンの笛を破壊したのは、なんとジルだった!?
ホルンが動揺している瞬間を狙って、アルスは攻撃を繰り出す。
かくしてホルンを撤退させることに成功するのだった。
「シナト様、お会いできて光栄です。
僕たちはラオンダール帝国の皇帝より命を受けて、この国に参りました」
アルスは杖を背中に収めると、跪いて挨拶した。
リンとジルも、カストルを介抱しながらやってきた。
「まあ、ラオンダール帝国の使者様でございましたか。
遠路遥々来ていただいたのに、このような災難に遭わせてしまい、なんとお詫びすればよいか……。
私に会いに来られたのも、何か理由があってのことでしょう。
すぐにもお話を伺いたいところですが、今回だけはお引き取り願えませんでしょうか。
今はこの国の復興と怪我人の介抱が優先事項です。
申し訳ありませんが、また時を改めてじっくりお聞きさせてください」
シナトは申し訳なさそうに言った。
他国の使者よりもまずは自国の再興を優先すべきであることは、アルスたちも重々理解していた。
だからこそ、アルスは迷いなく言った。
「あの、僕たちでよければ、できることを手伝わせていただけませんか? 」
この言葉を聞いて、シナトはたいそう驚いた。
「な、何をおっしゃるのですか? そんなことはできません。
これは私たちの問題ですし、復興までどれほどの時間がかかるかも検討がつきません。
ましてや、大国の使者様のお手を汚すようなことなど、決して許されないのです……」
全力で断りにかかるシナトに、リンやカストルも、「お願いします」「どうか、ぜひとも」と続けて頭を下げた。
そこからしばらく善意の攻防戦が続き、仕舞いに折れたのはシナトの方だった。
「ああ、本当に、なんとお礼をすればよいか……。みなさん、ありがとうございます……」
シナトはポロポロッと涙をこぼした。
「シシシシ……シナト様!? 」
侍女のシアラもあわてふためいた。
「シアラ、大丈夫です。嬉しくって、つい……。
正直なところ、兵は皆負傷し、民もほとんどが逃げ出してしまい、どうしたものかと困っておりました。
私やシアラ、それに白鷲様の力をお借りしたとしても、それだけで一体何ができましょう?
無理にとは言いません。あなたたちのできる範囲で、お手伝いいただけると幸いです。
その間、この宮殿を好きに使っていただいて構いません。
……シアラ、この方たちに部屋を用意してあげてください」
「ええ、ええ、もちろんです。姫巫女様を助けていただいた方ですもの。
このシアラ、頼りにしてくださいませね」
侍女のシアラは祈りの間を後にした。
「すいません、シナト様。わがまま言ってしまって……」
アルスが申し訳なく言った。
「いえ、とんでもないです。皆さんの方こそ、本当にいいのですか?
この国を救っていただいただけでなく、復興にまで尽力してくださるなんて……」
「はい、国がこんなひどい状態なのに、回れ右して帰ることはできませんよ。
皇帝陛下の雷が落ちます」
「ふふふふふ……」シナトはあどけなく笑った。
ここで、カストルがずっと気になっていたことを口にした。
「あのー、シナト様。こう言ったらなんですが……ずいぶんお若いんですね?
姫巫女様っていうと、もっとこう、プライドの高い、スラーッとした大人の女性かと思ってました」
「カストル君! 」リンがカストルの小脇を突いてたしなめた。
シナトはふふっと笑った。
「はい、私はまだ13歳なんです。
先代である母上を早くに亡くしてしまいましたので、巫女に就いてから日も浅いのです。
白鷲様や侍女であるシアラの助けを受けながら今に至ります。
早く母上のように立派な巫女になって、民を安心させたいのですが……」
シナトは寂しげに微笑んだ。
きっと幼い姫巫女を受け入れてくれる人もいれば、先代を慕うがあまり厳しい助言を言う人もいるのだろう。
いかに信頼を増やし、受け入れてもらえるか。その矢先での今回の襲撃事件。
姫巫女に課せられた試練はまだまだ多い。
「あの、もう1つだけすいません。そちらの、白いお方なんですが……」
カストルが続けて言った。
「ああ、そうですね、ご紹介が遅れました。こちらは、白鷲様です。
風神アイオール様の使いで、私たちに未来を告げてくださる方です。
普段は鷲の姿をされておりますが、このように人の姿にもなれるのです。
……すごいでしょう?
さっきも、祈りの谷に落ちてしまった私を、とっさに助けてくださったのですよ。
この姿になると、お空は飛べないようですが……。
私は目が見えぬので、どのようなお姿をされているのかは存じあげません。
しかし、心に声が響いてくるのです。とても温かく、優しいお声をされております」
「へえ、そうなんですね。さっきもすごい活躍でしたね」
シナトは優しくほほえんだ。
白鷲はというと、先程からシナトの側を1mm足りとも離れようとしない。
「白鷲様は常におっしゃるんです。『焦ることはない、あなたらしくあればいい』と。
本当に、お優しい方ですよね。
……さて、白鷲様もそろそろ解放してあげましょう。
ここまで長くお守りいただいたのは、私も初めてです。
きっとお疲れになっていることでしょう」
ここで、シアラが戻ってきた。
「皆様、お部屋の準備が整いましたので、ご案内いたします」
「ありがとう、シアラ。……みなさん、まずはご自身の傷と疲れを癒してくださいね。
また後日、ここでお会いしましょう」
「はい、ありがとうございます」
アルスたちは祈りの間をあとにした。
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