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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第8章 聖都ガルトデウス
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第53話 巫女の苦悩

【前回までのあらすじ】


“闇の使者”ホルンの笛を破壊したのは、なんとジルだった!?

ホルンが動揺している瞬間を狙って、アルスは攻撃を繰り出す。

かくしてホルンを撤退させることに成功するのだった。

「シナト様、お会いできて光栄です。

僕たちはラオンダール帝国の皇帝より命を受けて、この国に参りました」


 アルスは杖を背中に収めると、(ひざまず)いて挨拶(あいさつ)した。

 リンとジルも、カストルを介抱しながらやってきた。


「まあ、ラオンダール帝国の使者様でございましたか。

遠路遥々(えんろはるばる)来ていただいたのに、このような災難に遭わせてしまい、なんとお()びすればよいか……。

私に会いに来られたのも、何か理由があってのことでしょう。


すぐにもお話を伺いたいところですが、今回だけはお引き取り願えませんでしょうか。

今はこの国の復興と怪我人の介抱が優先事項です。

申し訳ありませんが、また時を改めてじっくりお聞きさせてください」


 シナトは申し訳なさそうに言った。

 他国の使者よりもまずは自国の再興を優先すべきであることは、アルスたちも重々理解していた。

 だからこそ、アルスは迷いなく言った。


「あの、僕たちでよければ、できることを手伝わせていただけませんか? 」


 この言葉を聞いて、シナトはたいそう驚いた。


「な、何をおっしゃるのですか? そんなことはできません。

これは私たちの問題ですし、復興までどれほどの時間がかかるかも検討(けんとう)がつきません。

ましてや、大国の使者様のお手を汚すようなことなど、決して許されないのです……」


 全力で断りにかかるシナトに、リンやカストルも、「お願いします」「どうか、ぜひとも」と続けて頭を下げた。

 そこからしばらく善意の攻防戦が続き、仕舞いに折れたのはシナトの方だった。


「ああ、本当に、なんとお礼をすればよいか……。みなさん、ありがとうございます……」


 シナトはポロポロッと涙をこぼした。


「シシシシ……シナト様!? 」


 侍女のシアラもあわてふためいた。


「シアラ、大丈夫です。嬉しくって、つい……。

正直なところ、兵は皆負傷し、民もほとんどが逃げ出してしまい、どうしたものかと困っておりました。

私やシアラ、それに白鷲しろわし様の力をお借りしたとしても、それだけで一体何ができましょう?


無理にとは言いません。あなたたちのできる範囲で、お手伝いいただけると幸いです。

その間、この宮殿を好きに使っていただいて構いません。

……シアラ、この方たちに部屋を用意してあげてください」


「ええ、ええ、もちろんです。姫巫女様を助けていただいた方ですもの。

このシアラ、頼りにしてくださいませね」


 侍女のシアラは祈りの間を後にした。


「すいません、シナト様。わがまま言ってしまって……」


 アルスが申し訳なく言った。


「いえ、とんでもないです。皆さんの方こそ、本当にいいのですか?

この国を救っていただいただけでなく、復興にまで尽力(じんりょく)してくださるなんて……」


「はい、国がこんなひどい状態なのに、回れ右して帰ることはできませんよ。

皇帝陛下の雷が落ちます」


「ふふふふふ……」シナトはあどけなく笑った。


 ここで、カストルがずっと気になっていたことを口にした。


「あのー、シナト様。こう言ったらなんですが……ずいぶんお若いんですね?

姫巫女様っていうと、もっとこう、プライドの高い、スラーッとした大人の女性かと思ってました」


「カストル君! 」リンがカストルの小脇(こわき)を突いてたしなめた。


 シナトはふふっと笑った。


「はい、私はまだ13歳なんです。

先代である母上を早くに亡くしてしまいましたので、巫女に()いてから日も浅いのです。

白鷲しろわし様や侍女であるシアラの助けを受けながら今に至ります。

早く母上のように立派な巫女になって、民を安心させたいのですが……」


 シナトは(さび)しげに微笑んだ。

 きっと幼い姫巫女を受け入れてくれる人もいれば、先代を(した)うがあまり厳しい助言を言う人もいるのだろう。

 いかに信頼を増やし、受け入れてもらえるか。その矢先での今回の襲撃(しゅうげき)事件。

 姫巫女に課せられた試練はまだまだ多い。


「あの、もう1つだけすいません。そちらの、白いお方なんですが……」


 カストルが続けて言った。


「ああ、そうですね、ご紹介が遅れました。こちらは、白鷲しろわし様です。

風神アイオール様の使いで、私たちに未来を告げてくださる方です。

普段は鷲の姿をされておりますが、このように人の姿にもなれるのです。

……すごいでしょう?


さっきも、祈りの谷に落ちてしまった私を、とっさに助けてくださったのですよ。

この姿になると、お空は飛べないようですが……。


私は目が見えぬので、どのようなお姿をされているのかは存じあげません。

しかし、心に声が響いてくるのです。とても温かく、優しいお声をされております」


「へえ、そうなんですね。さっきもすごい活躍でしたね」


 シナトは優しくほほえんだ。

 白鷲しろわしはというと、先程からシナトの側を1mm足りとも離れようとしない。


白鷲しろわし様は常におっしゃるんです。『焦ることはない、あなたらしくあればいい』と。

本当に、お優しい方ですよね。


……さて、白鷲しろわし様もそろそろ解放してあげましょう。

ここまで長くお守りいただいたのは、私も初めてです。

きっとお疲れになっていることでしょう」


 ここで、シアラが戻ってきた。


「皆様、お部屋の準備が整いましたので、ご案内いたします」


「ありがとう、シアラ。……みなさん、まずはご自身の傷と疲れを癒してくださいね。

また後日、ここでお会いしましょう」


「はい、ありがとうございます」


 アルスたちは祈りの間をあとにした。


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